第15話 エピローグ:箒の聖女
お兄様の婚約成立を待っている間というわけではないけれど、
私とアレクシス様は、とある使命で動いていた。
吐く息が白くなる冬のある早朝、地方都市の教会に甲高い声が響き渡った。
「司祭様ー!司祭サマー!大変でございますー!」
「なんだ朝から騒がしい」
「浄めの箒です!うちの教会にもついに浄めの箒が!」
「おおお……!なんという……。女神アスとリアーナ様、感謝いたします……」
「『浄めよ』って書いてありますぅ」
他の修道女達も集まってきたのかざわざわと騒がしくなっていった。
その様子を見ているのは、木陰から……ではなく、3Dウィンドウからだ。
「最近、説明書つけなくてもすぐ『浄めの箒』って認識されるね」
「吟遊詩人が歌い始めたからなぁ。謎の箒の聖女っ歌われてたけど」
「箒の聖女……ふふ……」
女神様の用意していた物語を壊す代わりに、聖魔法で浄化せよと言われた。
でも私達は瘴気が酷くなると予測される時期には国を出ていることになる。
瘴気はじわじわ増えていくし、継続的に浄化できるでないと困るようだった。
ダメもとでみんなが継続的に浄化できるようなものが良いと願ったら
アイテムボックスの中にぎっしりと銀色の箒が詰まっていた。
機能を確認したら、その箒で掃くだけで周囲が浄化されてしまうというものだった。
これを瘴気が出そうな地域の教会に配れと言われても、全国を回るのは厳しい。
地方発送はダメでしょうかとお祈りしたら、ステータスウィンドウから直接地図の場所を選んで「配送」をしてもらうものだった。
瘴気の影響が強くなると予想されている場所が示された地図も頂いた。
浄めの箒を使い始めた地域では、定期的に瘴気が浄化されているようだ。
ただ、瘴気が格段に強い場所には、直接赴いて浄化する必要があった。
それも内密に。
「ねえ、アレク。散々、箒を配ってから思ったんだけど……」
「なあに」
「浄化してたら、聖女様の意味無くならない?」
「そうだね。まあ次から次へと瘴気が出てきたら、聖女様の役割が消えることはないと思うよ」
「そうね。ちょっとお手伝いしているようなものね」
年が明けるまでにアイテムボックスに入っていた箒は全て全国各地の教会に送り終えた。
年が明けて、しばらくして第三王子殿下の婚約者が決定した。
驚いたことに、光魔法を持っていない女性のようっだった。
婚約者の女性の加護の詳細は発表されないものなのだけど
光魔法を持っているなら、それをアピールするはずなのにしないからそう思っていただけだった。
その頃にはすでに一家でマグノリアノ王国に移住を完了させていた。
月日が経って、私とアレクシス様は、マグノリアノ王国内の学園を無事卒業し、
卒業してすぐに結婚した。
ヒエラクス王国を出てから一度も、ヒエラクス王国には戻っていない。
瘴気の影響については全くゼロということはなかったけれど、
箒隊が出動すれば問題がないレベルだった。
卒業式後の舞踏会の場での断罪劇もなかったようだ。
「平和で幸せだけど……。
女神様は楽しんでいらっしゃるかしら」
「案外何も起きないのを楽しんでいらっしゃるかもしれないよ」
「そうね」
アストリアーナ様はマグノリアノ王国の女神様ではないので
屋敷内に作った祈りの間にアストリアーナ様をイメージした像と
マグノリアノ王国の女神様の像を設置している。
屋敷とはもちろん、私とアレクシス様の新居のことだ。
アレクシス様と私は、女神様達がお喜びになることを願いながら祈りを捧げた。
:「恋の祈り☆花降る丘で待ってて」のヒロインSide
「おかしい、おかしい!おかしすぎる!私って確かに『花降る丘』のヒロイン、よね?
なのに、どうして、光魔法の素養が1しかないの?
どうして悪役令嬢のアリアがいなかったの?
瘴気が全く発生しなかったなんて。
殿下と親密になれないうちに卒業しちゃったじゃない!
お父様は学園で結婚相手を捕まえてこいって言っていたけど
私のお相手は殿下に決まっているって思ってい他から
まだ誰とも婚約できていなーい!どうすれば良いのよー!」
:女神アストリアーナ様Side
「異世界の魂に来てもらうと、面白い結果になるわぁ!
また地球ってところの神にお願いしようっと。
あ、あの子達の子供には生まれた時から加護をあげてみようかしら。
うふふ!」
断罪を避けて国を出ようとした結果 @tea_kaijyu
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