物語る糸電話

落書き

序章・机

ミーンミンミンミー。

日傘やアイスが流行るこの頃、1人工作に勤しむ少年がいた。

彼の机には紙コップと爪楊枝と糸が置かれている。

彼は爪楊枝で紙コップに穴を開けて、爪楊枝を紙コップの底面に貼った。

そして糸を通し、彼は満足そうに机から去っていった。

それから間もなくのことだった。

「もっと綺麗にしておいて欲しいけどなぁ......」

そのかすかな声は少年の耳に届き、少年は怪訝に思いつつも机の辺りを見回した。

「はぁ......」

少年はその声の主が糸電話であることに気づき、恐る恐る机の前に近づいた。

だが、糸電話の言動はそれ以降なかった。

彼は試しに机の上の糸電話に話しかけた。

「こんにちは」

すると返答が返って来た。

「こ、こんにちは。私の声が聞こえるの?」

「はい、あなたは誰ですか?」

「私は机だよ、この糸電話が置かれてる机」

少年は豆鉄砲を食ったような顔をして机を見つめた。

どこにも口は無い、顔もない。

「たぶん、この糸電話で君と繋がっているんだと思う」

少年は意を得たような仕草をした後、机に伝えた。

「なるほど、後で机は綺麗にしておくよ」

「ありがとう」

少年は糸電話を机から持ち上げて、自室を見回した。

目に留まったのは......

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物語る糸電話 落書き @rakugakitori

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