第52話 分岐点2 とある男の最期
受験勉強と個人的に書きづらい話だった為、更新がめっちゃ遅れました。
ごめんなさい。m(_ _)m
※この世界ではモンスターから取れる魔石がエネルギーとして定着しているので、
日本やイギリスなどもエネルギー大国となってます。その為、日本の財政は現実よりずっと良いです。(石油は石油で別の使い道がある為、中東は相変わらず金持ち)
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「それでは、式内様。失礼いたします」
十数人居た部下も一人、また一人と部屋の外へ向かい、先程最後の一人である私の秘書がこの部屋を去った事で、この部屋の中にいるのは正真正銘私一人だけになった。
我ながら彼女を止めないのかと思うが、これから死ぬと分かって、それでも向かったのだ。その行動に感謝こそすれ、止める筋合いなど、死んでくれと言った私には無い。私が今、彼女達の為に出来る事が有るとすれば、それは彼女達の意思を無駄にしない為にも、この作戦を完璧な形で終わらせると言う事だけだ。
この部屋の隠し通路から今まで秘かに貯蔵していたワインを取り出し、グラスに並々と注ぎ、それを全て飲み干す。これからの事を考えると、多少アルコールが入っている状態が最適だと判断したからだ。
「この様な勿体ない飲み方をするつもりでは無かったのだがな…」
そうしてワインを飲んでいる最中、ふと昔の事を思い出した。私が行動を始めてから今年で五年。ここまでの事を思い返すと、長かった様な、短かった様なそんな不思議な感覚に襲われる。
六年前、私が42歳であった頃。当時の何も無かった私を秘書と言う立場から支えてくれた彼女と再開する場所は、きっと地獄と呼ばれる場所だろう。
今までの人生を思い出し、感傷に浸っていると、ドアがノックされた。
コンコン
その音は決して大きな音では無かった。しかし、一人だけの静かな一室にはそんな小さな音も良く響く。
「どうぞ」
「…」
ギィと言う音と共にドアが開かれ、招かれざる客が姿を現す。
彼がここに来たと言う事は、彼の手によって彼女はもう殺されたと言う事だろう。男の手にはその証拠とでも言う様にべっとりと血が付着している短剣があった。
「…来た、か」
「貴方が式内一で間違いないでしょうか?」
「ああそうだ」
ここが正念場。
私の行動次第でこの国の未来が変わる。
「ここに来るまでの道中、問答無用で攻撃をする人間が居ました。今更必死になった所で私達に保管場所がバレているのでは意味は無いでしょうに…。貴方達が守ろうとしていた神の欠片は破壊しました。もう再生は出来ません。諦めて投降するならば、名前と顔を変えて生きる事が出来ますが…如何しますか?」
「あれを破壊したと言う事は、まだまだ時間はあるだろう?少し私の話に付き合って貰おうか。なに、長い話では無い。最後の……遺言の様な物だ」
「投降する気は無い、と」
男が時計を見て時間を確認する。
「…良いでしょう。まだ時間も十分程ですがありますし、時間稼ぎに夢中であった貴方の最期は、きっと”興味深い結果”になると思いますので」
バレているのか…
時間稼ぎが目的だとバレている状態でどれだけこいつをここに拘束できるか?それが重要だ。…私一人で足止めを?いや、一人か二人かなど関係ない。しなければならない。今この瞬間、全力でここから逃げたとしても、私が死ぬと言う結果は万が一にも変わらない。そう決まっている。私が死ぬと言うのは抗い様の無い確定事項だ。
ならば、この国の為にも、そして未来ある若者の為にも、朽ちると決まったこの身を使い、出来る限りの事をする。それが現内閣総理大臣であり、責任を持つ大人である私の使命だ。
既に私が死んだ場合の仕掛けも施した。調整も終わっている。後は一秒でも長く、一瞬でも長くこの場で時間を稼ぐ。今の私に出来る事はそれだけだ。
私の命を使い、稼いだ時間が可能性に繋がる。私が諦めて仕舞えば…生きようとすれば、この後の選択肢そのものが無くなる。
「この世界は醜い。既得権益に縋りつき、それを守るために行動するので、もはや害にしかならない老人。私達が助けてあげるんだと基本的に傲慢で、助けないとダメな存在として相手を下に見ている左派、自分達さえ良ければそれで良いと強欲で自分達が恵まれている事を自覚していない右派。…様々な思想があり、数多の問題を抱えた世界で『正義』なんて曖昧な物を掲げること自体が間違っているのかも知れない。だが、そんな世界にも正義と言う物があるならば、それは未来へ託すと言う行為だと私は思う。
そんな中で全てを壊そうとしている私も、お前達も、断じて正義などでは無い」
「私は正義と言う物に興味はありませんが…あの子は気にしそうですね。そう言う意味では、大変興味深い内容でした。貴方が現状を変えようと努力していた事は知っていますし、それを邪魔された事も知っています。そんな状況の貴方が、世界に絶望して、一度全てを壊そうとするのは至極真っ当だと私は思います。…如何やら貴方に付き合っている時間はもう無い様です」
ブラフを挟んで会話を続け、相手に偽の情報を掴ませつつ時間を稼ぐ予定だったが、如何やらこれ以上の時間稼ぎは出来ないようだ。
「結局、貴方の目的が何か分かりませんでしたが、私は自身の責務を全うしないといけませんので」
「それは良かった。お前にバレていないなら、そこの奴にもバレていないだろうからな」
「……気づいていましたか」
相手の男は驚いたような顔をしている。俺の事をそんな事すら気づかない阿呆とでも思っていたのか?
「…そこに隠れている者、魔力操作は上手いが…それだけだ。なぜアレを連れて来た?ハッキリ言って足手まといだろう?」
「えぇそうですね。私もそう思うのですが、今回の命令権を持つ者に連れていけと言われまして。失礼ですよね。私が逃がすとでも思っているのでしょうか?」
こいつのその発言で背筋が冷やりとした。
覚悟はしていたつもりだったが…いざ死ぬとなると少し恐ろしいな。
だが、ここで私が少しでも恐怖を見せた場合、計画は破綻する。
ポーカーフェイスを崩すな。相手に弱みを見せるな。自身の仕事を全うしろ。
「そうか。そんな事を言うならば、そろそろ時間か?」
「そうですね。少しオーバーしてしまいましたが、許容範囲でしょう。それにしても残念です。お互いの立場さえ違えば、価値観が似通っている貴方とはいいお酒が飲めたと思いますから」
「光栄だな。今飲むか?酒はあるぞ」
「ご遠慮させていただきます。今は任務中ですので。他に…何か言い残す事はありますか?」
「無い」
「お酒に関しては私が死んだ時にでも御一緒させて頂きましょう。少しの間でしたが中々楽しめました。貴方をこの手で葬り去ると思うと、少し惜しいと感じますが、これも任務ですので…では、さようなら」
ここまでか…時計を見て時間を確認する。本来の予定から5分か…充分だろう。必要最低限の時間は稼いだ。私一人しかいない状況だ、上出来だろう。
死の間際、引き延ばされた時間の中。私は、人生最後の固有を発動させた。この先、どうなるか私には分からない。未来は常に変わる。
私の望む
しかし、他と比べると”希望”と言う選択肢がある分、幾分かマシな…今の私が選択出来る最善の道。これからの未来ついて、この場で死ぬ私は関与できない。
『
大層な力を授かったが、結局私の器では可能性を残すだけで精一杯だった。大人として無責任と言われるだろうが、未来の事はこれからを生きる若者達に託そう。
ヒュッ
風を切る音が聞こえる。
その瞬間、
スパッ!!
ゴト……
「ようやく終わりましたか。案外、時間を使ってしまいましたね。久しぶりに興が乗ったのですから、仕方ないと割り切りましょうか。
それにしても、死の間際の顔にしては随分と機嫌の良さそうな顔、何かあったのでしょうか?これから死ぬと理解しているのに良い笑顔ですね。私も死ぬ時はこの様な顔で死にたいものです。目的は分かりませんでしたが、まあ許容範囲でしょう。
…このままでは時間に少し遅れてしまいますね。まあ、彼らなら大丈夫でしょう」
カツ カツ カツ カツ
静かな空間に靴の音が鳴り響く。
次の瞬間、周囲から完全に音が消え、音の原因であった男も同時に姿を消す。
後に残されたのは、首と胴が分かれた一つの死体だけだった。
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君と世界がマワル時。 A1n_06 @A1n_06
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