番外編 ふたつの世界からの光《完》


フランスの朝。

窓の外から、やわらかな陽の光が斜めに差し込んでいる。

ミッシェルはパジャマ姿でベッドの縁に腰かけ、寝ぐせのついた髪をそのままにしていた。


パソコンの画面の前では、台湾からのビデオ通話がにぎやかに続いている。


「もしもーし、ミッシェル~、聞こえる?」

「こっちは学校のパソコン室だよ!」

「お昼休みにこっそり集合してるの~!」


リン・チーハン、リー・シンアン、チャン・ズーエン、チョウ・ユーシュエンの顔が次々に画面に現れては、笑い声を響かせていた。


ミッシェルは目をこすりながら、笑顔で応じた。

「そっちはもうお昼でしょ? こっちはまだ起きたばっかりだよ!」


「わたしたちも、ちょうどお昼食べたとこ!」

「今日の給食、おいしかったよ~」と、リー・シンアンが得意げに付け加える。


「ジーカイは? 今日は来てないの?」と、ミッシェルが尋ねた。


チョウ・ユーシュエンが肩をすくめて答える。

「あいつさ、またサッカーしに行っちゃったよ。呼びに行ったけど、聞こえないふりしてた。」


リン・チーハンが笑いながら言う。

「絶対、照れてるんだよ!」


ミッシェルは目を細めて笑った。

「ふん!じゃあ、こっちから台湾が真夜中のときにビデオ通話かけて、たたき起こしてやろっと!」


画面の向こうから、笑い声がまたひときわ大きく弾けた。


ふと画面の奥、教室の掲示板に貼られている一枚の絵が見えた。

そこには、ミッシェルの笑顔が描かれていて、その隣にカラフルなペンでこう書かれていた。


——「また会えるの、ずーっと待ってるからね!」


時差のあるふたつの国。

ちがう言葉、ちがう空の下。


でも、思い出の光は、いまもふたつの世界で静かに、そしてやさしく、きらめいていた。



《全話終了》

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『ミッシェルの台湾日記』 @hiroba

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