おわりに―ひとりごと


飛行機が分厚い雲を抜け、窓辺から陽の光が差し込んできた。


ミッシェルはシートにもたれて、果てしなく広がる青空をじっと見つめていた。

心の中で、そっとつぶやく。


——わたしの名前はミッシェル・シュウ。

台湾人の血と、フランス人の血を、半分ずつ受け継いでいる。


去年のわたしは、それが「どこにも属していない」という意味だと思っていた。

でも今は、ちゃんとわかっている。


わたしには、ふたつの故郷がある。

ふたつの言葉がある。

ふたつの、大切な友だちの輪がある。


どちらかを選ぶ必要なんて、ない。

わたしがすべきことは、ただ「覚えていること」。


陽の光の中で、いっしょに笑った日々を。

廊下を走り、教室で言い合い、そして仲直りした時間を。


空いたままの椅子。

交わせなかった言葉の続きを、心に留めておくこと。


そして——

「さよなら」を言っても、心の中に残っている名前たちを。


ミッシェルは隣に座るママを見やった。

ママは静かに、やさしく微笑んでいた。


ミッシェルもまた、そっと微笑み返す。


——台湾、さよなら。


でも「さうなら」は、終わりじゃない。


それは、また会える日を信じる「約束」だ。


ミッシェルは、窓の外を見ながら、そっとつぶやいた。


「À bientôt.」

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