鎌系少女
オーケー、冷静になってまずは状況整理と行こう。
俺は今、黒の特性を利用して、自分の力で創造した大鎌にエンチャントをしようとした…いや、確実にしたはず。ついでに強くなりたい!とか強く思いつつ。
で、しばらくしたら黒い光が部屋を包んだけど、それでも目を瞑りながら限界までエンチャントを続けた。
その後、体感割とすぐに限界値に到達したのでエンチャントをやめると、黒い光が段々と小さくなっていって…。
「光が収まって目を開けたら、目の前に女の子がいた、と…。」
「…?」
「あぁごめん、独り言だから気にしないで」
「……?分かった」
一体どういうことだ…?いや、なんとなく予想は立てれるんだけど、黒がどう作用してこうなったのかが皆目見当もつかない。
元々大鎌が置いてあった所にこの子がいて、しかも服装も黒がメインなわけだ。だから多分、この子があの鎌なんだけど…。
と、とりあえず話をして情報を集めるか…。目の前に本人?本武器?がいる訳だし。
「あー、えっと、君。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、質問してもいいかな…?」
「…大丈夫。ご主人の質問にはなんでも答える」
「うん、ありがとう。それじゃあ早速質問なんだけど…。君は、俺が創造したあの大鎌…で、いいのかな?」
「…ん、そうだよ」
コクリ、と頷きながら答えてくれる。…普通に可愛いな…。
んんっ、いかんいかん。今は質問!
「じゃあ、元の武器の姿に戻る事は出来そうかな?」
「ん、多分戻れる……こう、かな?」
女の子が少し考えた後に、ぴょんっと飛び上がると、少し黒く光って武器へと姿を変えた。
いいね、ロマンを感じるね。
「おぉ、ちゃんと武器に戻った!ちなみに、その状態でも喋れたり出来る?」
「(…こんな感じで直接話せる。)」
こいつ…脳内に直接…?!
はい、言いたかっただけです。すみません。
「うん、大体分かったよ。ありがとう」
「…感謝はいらない。ご主人の要望に応えるのは当たり前」
「それでも、言わせてくれないかな」
「…じゃあ、仕方ないから受け取っておく」
少し顔を赤くしながら少女が答える。
守ってあげたくなるような可愛さだな…。実際には、この子に守られるようなものなんだけど。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺の名前は暗夜黒斗、これからよろしくね」
「…私、名前無い。元々武器だったから…。ご主人が名付けしてくれると、嬉しい…」
おおう、中々にハードルが高いことを…。名付けとか前世でしたことないしなぁ、どうしたものか。
「う、うーん…。名前って大事な物だと思うしな…。少し考えてもいいかな?」
「問題ない、好きに考えて欲しい。」
うごごごご…。頑張れ俺、前世の知識を引っ張り出せ!あの病を患った時に、意味もなく調べたカッコイイ単語からこの子に合う意味と優雅さを持った単語を!
…待て、優雅さか…。それならあれがあるかな…。うん、これで決まりだ。これしか無い!
「よし、決まった。君の名前は今日から『グレイス』。グレイスだ!…どうだろう?気に入らなかったら別のを考えるけど…」
「…グレイス……。ん、気に入った。私の名前はグレイス。ご主人の武器として、今日から傍にいさせてほしい。」
「もちろん!よろしく頼むよ!…あと、武器とかの物扱いじゃなくて、ちゃんと『グレイス個人』として傍にいて欲しいかな。」
「………ん、分かった。」
まさかエンチャントの副作用?みたいなので意思を持つとは思わなかったけど…。でも仲良くしてくれるっぽいし、可愛いのでヨシ!
ロマンにも溢れてるしね。グレイス本人も、別に悪い感じはしない。黒って言っても、やっぱり本質は"悪"って色じゃないんだなって。
「あ、そうだ。エンチャントは成功してるのかな?炎と風の性質を付けたと思うんだけど…」
「…それも大丈夫。どっちもちゃんと付与されてる。しかも、人型状態でも出せるから、武器状態じゃなくても戦える。」
ほうほう、武器状態と人型状態、どちらでも戦えるのは相当優秀だな…。流石うちの子。……ん?なんか俺、親ばか思考になってないか?
褒めて褒めて、と胸を張るグレイスの頭を撫でながら考える。…ハッ?!いつの間にか無意識に頭を撫でていた!恐ろしい子や…。
「よし、じゃあ大体状況把握が出来て、グレイスの事も分かってきたことだし。そろそろレイゼさんにもグレイスを紹介しようか」
「…レイゼ?さん?」
「俺に仕えてくれているメイドさんの事だよ。多分ここで呼んだらすぐ来てくれると思うから、レイゼさんにも自己紹介してほしいな。大丈夫?」
「…挨拶、自信ない」
「アハハ、まぁ初対面だと緊張もするよね…。」
「ご主人、私の事守って」
「良いけど…別に今日じゃなくても、心の準備ができるまで待つよ?」
「…今が、いい」
既に緊張しているのか、少し顔を伏せ気味にしながら
グレイスなりに、何か考えがあるのかな?今は尊重してあげよう。
「…分かった、じゃあ呼ぶね?レイゼさーん?いるー?」
「お呼びでしょうか?ご主人様」
「…?!」
グレイスが後ろから突然後ろから声をかけられたことで、驚いて体を跳ねさせる。
あ、俺は慣れてきてたからいいけど、グレイスは初めてじゃん…。失敗した…。
「…いつから後ろに…?分からなかった…」
「メイドですので」
「…メイドなら仕方ない…の…?」
「はい。メイドですので」
「…???」
あぁ、グレイスが混乱している…。事前に言っておけば…。
「それで、なんのご用でしょうか?」
「あぁ、ごめん。レイゼさんにこの子の紹介をしたくて呼んだんだ」
「そこの、ご主人様の後ろに隠れている女の子の事ですか?」
「うん、そう。ちょっと緊張してるみたいで…」
グレイスが勇気を出せるのを、頭を撫でながら待つ。俺を盾にしてる姿も可愛いと、そうは思わないか?
そうこうしている内にグレイスが覚悟を決めたのか、少し顔を強張らせながら、顔だけちょこんと出す。
「…私、グレイスって言う…。ご主人の鎌、よろしく…」
「私は、ご主人様のメイドをやらせて頂いております。レイゼ、と申します。これからよろしくお願いしますね、グレイスさん」
グレイスが少し不安そうに、レイゼさんが笑顔で受け答えをする。
「グレイスさんはご主人様の鎌、なんですか?」
「…ん、元々武器の鎌だった…。ご主人が私に力込めたら、何故か意識が芽生えた…?」
「なるほど…ある程度は理解致しました。 ……一つだけ、初対面で不躾とは存じていますが、どうしても聞きたいことがあります。 この質問には、素直にグレイスさんの思っていることを言葉にして欲しいと思っております。──グレイスさんは、心からご主人様と一緒に居たいと思っていますか?」
「…居たい。私は、ご主人と一緒に、同じ景色を…見て、いたい。心からそう思えてるって、断言する。」
ええ子や…。思わずジーンと来てしまった。俺も、こんないい子を悲しませないように、より一層頑張らないとだな。
「…うん、グレイスさんのお気持ち、確かにこのレイゼに伝わりました。これからどうぞよろしくお願いいたします、グレイスさん」
「…レイゼ、良い人。私も、これからよろしく。」
レイゼさんが気を許したのか、顔が解れて安心感のある笑みを浮かべる。
グレイスもいつの間にか緊張がほぐれてたみたいで一安心だ。これなら、これから先も大丈夫だろう。
「さて、自己紹介も終わった所で、お昼ご飯にしないか?お腹すいちゃって…」
「ふふ、かしこまりました。すぐにご用意いたします。 グレイスさんは、なにかダメな食材はございましたか?」
「…なにもない、かも?ご飯まだ食べたことないから、分からない…」
あぁ、そうか。グレイスはまだ意識が芽生えたばかりだし、元が武器だからご飯を食べたことが無いのか。そりゃそうだよな、うっかりしていた。
…知識としては知っているのはなんでだろう?本能みたいな?……まぁ、後で考えればいいか。
まだまだ調べないといけない事はいっぱいありそうだな。俺も、力の扱いだけじゃなく、近接戦の練習もしないとだし。その辺も一緒に調べていこうか。
でも、とりあえず今はそんな考え事はせずに、レイゼさんが持ってきてくれるご飯を純粋な心で楽しもうと思う。
レイゼさん、いつもありがとうございます。日ごろから感謝してます。本人に言うと『メイドたるものこれくらい当たり前ですので、感謝は大丈夫です。 …それと、敬語をおやめください。』って言われるので、心の中で失礼します。
「……?」
「レイゼ、どうしたの?」
「いえ、今ご主人様が私に敬語をお使いになった気がして…」
「そんな訳ナイジャン!ハハハ!」
メイドの勘こわっっ!!!
黒夜、後に白日 ~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ せみふぁいなる @Kuikku
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