13時47分
@hat_yumm
13時47分
今、何をすればいいのかがわからない。
いや、やらなきゃいけないことは山ほどある。学校の課題、文化祭の準備、そして申込用紙。そうだ、駿台の、あの出さなきゃいけないやつ。
机の端に置かれたその一枚が、じっとこっちを見てる気がする。魅力があるわけでも、話しかけてくるわけでもない。ただそこにあるだけで、意識の一部をずっと引っ張られる。何かを考えようとするたび、思考の端でこいつが引っかかる。
しかも、書くだけじゃ終わらない。お母さんに内容を確認してもらわないといけないし、そのための時間も自分で調整しなきゃいけない。
東京に別居してる父親からも、「今週末、泊まりに来る?」ってLINEが来てる。まだ返事してない。
あ、Mちゃんにも返信してなかったんだっけ。そう思った瞬間、もう一段階、落ちた。
「やば」って声に出そうになったけど、誰もいないこの空間では、それすら無駄に感じる。
朝8時、自習室に来た時はちゃんと気合い入れてた。やること詰まってるのも分かってたし、今日はちゃんと取り組もうって思ってた。目を閉じたのもほんの少しのつもりだった。何度か目は覚めた。30分しか経ってない、とか、まだ10時、まだ大丈夫って思ってた。
でも、次に目を開けたとき、13時47分。
「……は?」
脳が時間の意味を処理しきれなかった。自分で自分にウケてきて、「ここの空気が悪いんだな」とかいうどうでもいい仮説を立ててみる。酸素が薄いとか、湿気が多いとか、なんでもいいから、自分じゃない何かのせいにしたくなる。
限界な気がするけど、死ぬほどやってる訳じゃないし、全然限界じゃないんだろうね、笑って感じ。
「心と相談して、自分にできる範囲でやってる」なんて、よく考えたらただの甘えだ。自分の感覚だけを軸にして、誰かの期待なんかろくに見てなかったくせに、なぜか傷つく準備だけはしてる。
だから、「足りないよ」「信頼失うよ」って言われる。
そりゃそうだよな、って思う。ちゃんと返してないし、動いてないし、返せるほどの余裕も作ってない。相手が求めてるのは、私が「やれる範囲」じゃなくて、ちゃんと「やってくれるかどうか」なのに。
でも、頭ではそれ全部わかってるのに、体も思考も沈んだまま。
「ごめんね」って誰かに言うための気力も、「じゃあやるか」って立ち上がる力も、今はどこにも見つからない。
それでも時間だけは、黙って進む。
ぐるぐるしてる。考えごとの断片が、脈絡もなく頭の中を走って、また最初の場所に戻ってくる。次に何をしなきゃいけないのか、どれからやればいいのか、どうしてやらなきゃいけないのか、また最初から考え直してる。
まだ何も終わらせてないのに、
あの紙一枚がまだそこにあるのが、ただ怖い。
13時47分 @hat_yumm
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