こんな【鶴のおんがえし】はイヤだ。

レッドハーブ

こんな【鶴のおんがえし】はイヤだ。

むかしむかしのお話です。ある雪山におじいさんとおばあさんが住んでいました。


「うおお、寒いのう…冷える冷える…ん?」


買い物の帰り道に1羽の鶴がいました。

鶴は罠にかかって動けないようです。


「猟師には悪いが…逃がしてあげよう」


おじいさんは鶴を逃がしてあげました。

そうして帰路に就き、おばあさんと他愛のない話をして床に着きました。


そして次の日の夕暮れどき…


コン…コン、コン…


「ん?だれじゃ?」


おじいさんが戸を開けるとそこには…

美しい若い娘が1人立っておりました。


「この雪の中、道に迷ってしまいました。どうか一晩泊めてください」


と、おじいさんたちにお願いしました。

おじいさんは困惑しました。


(なにを言っておるんだ…?こんな美人で若い娘さんに泊めてと言われたら…断る男などおらんわ!もしかして…わし…モテ期か?)


「ああ、かまわんよ、どうぞ中へ。その…」

「お鶴、と言います」

「おお、そうか、かわいらしい名前じゃ」


おじいさんは動揺を隠しつつ、娘を家に招き入れました。次の日からおじいさんは口臭と身だしなみに気をつかうようになりました。


その次の日のことです。

お鶴さんは2人に言いました。


「わたしは機織はたおりが得意ですので、おふたりのために布を作りましょう。それを町で売ってきてください」


カタカタカタ…カタカタカタ…


町で売るとお鶴さんの布は、すぐに売り切れになってしまいました。2人はとても喜びました。


「ありがとう!お鶴さん!!」

「いえいえ…でも、わたしの部屋の中は開けないでくださいね?約束ですよ?」

「ああ!開けないよ!約束だ!」


味を占めたおばあさんは、お鶴さんに朝から晩まで機織りをするようにお願いしました。



ある日おじいさんが買い物から帰ると、お鶴さんの部屋から着物のれる音が聞こえました。


する…する…する…


(…まさか…着替え中か…)


辺りを見てもおばあさんの姿は見えません。


(こ、これは…せせせせせ、千載一遇せんざいいちぐうのちゃんすと言うヤツじゃ!)


お鶴さんの部屋の戸を開けようとしました。


(いやぁ〜長生きはするもんじゃのう、どれ…!)


戸を開けて見えたものは…

腕組みをしたおばあさんでした。


「…なにをしてるんですか?おじいさん?」


おばあさんは笑顔でした。

でも、目は笑っていませんでした。


「いや、わしは…その…原作どおりに戸を開けようと思ってのう…」

「あっはっは…ちょっとなに言ってるかわからないですね〜」


おばあさんはこん棒を手に取りました。


「どろぼう対策のこん棒がこんなかたちで役に立つとはねぇ〜」

「ひいい、ばあさん、後生ごしょうだぁ〜」

「あなたの考えることなんてね…お見通しなんです…よ!」

「や、やめ…ぎゃあぁ!!」


BAKOOOOOOON!!


おばあさんのふるすぃんぐが見事にきまり、おじいさんは山のてっぺんまで飛んでいきました。そしてそこから転げ落ち、雪だるまになり一夜を過ごしました。



あくる日の朝、2人が起きるとお鶴さんがいませんでした。お鶴さんの布団には手紙がありました。


【おじいさんとおばあさんへ】

ごめんなさい、少しの間でしたが

心身ともに疲れきってしまったので

風になります。探さないでください。

【お鶴より】


これを読んだ2人は互いにののしりはじめました。


「ばあさんが悪いんだぞ!お鶴さんを朝から晩まで働かせるから!」

「それじゃ、言わせてもらいますけどね!おじいさんだってあの娘をイヤらしい目で見てたでしょ?それでここがイヤになったんじゃないの!?」

「なんじゃと〜!!」

「なによ〜!!」


「「 ぬうううううぅ…ふん!! 」」


それからというもの…

2人は仲良くケンカして暮らしましたとさ。

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