第7話 身代わり入内

翌日、霊能力しか取り柄のない一介の孤児の私は、華やかな装飾を纏い、華やかな行列が組まれ、無事身代わり入内を果たしました。


後宮に通されると、婚礼の儀のための身支度が進められた。


なんとも豪華で、重たい十二単を着させられてるこの状況…なんかどこかの国のお姫様になった気分だ……。


いや、姫どころか妃になったのか……偽物としてだけど。


まぁ、そんな感じだから思わず



「…お妃さまの部屋って、ピッカピカだなぁ…ゲームのスチルのまんま。」



なんて口走ってしまったのだけど、そのくらい感動的だった。


前世で修学旅行行ったときに、こういう古い建物に見学に行ったことはあったけど、こんなに新築ってわけじゃなかったからね。


なんてキョロキョロとあたりを見回していると…



「桜花様、こちらの耳飾りもお取替えを」



十二単の着付けを担当している女官にそう言われました。

私はあわてて兄からもらった琥珀が埋め込まれた耳飾りを取られないよう、手で耳をかばいました。



「あ、ごめんなさい…これだけはつけたままにしてもいいかしら?」



「しかし…こちらにお妃さまの物がご用意ございますし…」



もちろんその言い分を聞き入れるるわけにはいかないよね…


あぁ…やっぱり…これはちょっと取られちゃうかな…って不安だったんだよね。

一応お兄ちゃんにも無理だ…って言ったんだけど…



「妃として…帝の妻として…子の耳飾りがふさわしくないのは承知しております」



まぁ、一応奥の手で抵抗してみるか。



「しかし…これは母の形見なのです…もう会うことは叶いませんが、せめて婚礼の儀は母の形見とともに…と…」



もちろん、子の耳飾りが形見などというのは嘘だ。


でも、私たちの両親は前世も今世も良心的他界してるし、桜花様自身お母様はもうなくなってるから、間違ってはないんだよね。


それに何より…



「そんなご事情が…」



「申し訳ございません、そんな大事なものを奪おうとして…」



なんて、女官たちが感動したのか、おいおいと泣き始めます。


母の形見ワード、効果てきめん。


少し罪悪感があるけれども…これを取られるよりはましということにしておこう。


まぁ、それよりも、気にしなきゃいけないのは…

この後の主上の対応だよね…


婚礼の儀の前に、対面することになってるから、それに備えないと…。


でもほんとに大丈夫かな…

桜花様は何度もあってないから大丈夫だって言ってたけど…信じていいやらなんやら。


だからって、顔合わせないわけにもいかないし…


そんな感じで一人悶々としていると、いつの間にか身支度は終わったようで



「それでは桜花様、主上が起こしになるまで、ごゆっくりおくつろぎください。」



「私どもも下がらせていただきます」



女官たちは私にそう言いました。



「え、下がってしまうのですか!?」



「えぇ、主上が込み入ったお話をされたいとのことで、私どもが聞き耳を立てるわけには参りませんので。」



つまり女官達の配慮なのか、女官達は蜘蛛の子を散らすように、イソイソと母屋を出て行ってしまい、部屋に一人ぽつんと残される私。


困ったな…バレかけたりしたら助けてもらおうと思ったのに…


あ、ダメか。

下手に偽物とバレる人数が増えるよりは、主上と2人の方がいいのか。


とりあえず、婚礼の儀が終わるまでは何とかなるはず。

それにしばらくは几帳、簀を通しての会話だし、向こうにははっきり私の姿は見えないはず。


あとは、昨日一夜漬けで、桜花様に色々情報叩き込まれた情報を頼りに会話を成立させるだけよ。


大丈夫。


タテヨコナナメ、どこから見ても桜花様に似ても似つかない私だったけど、桜花様の顔を知らない女官たちにはバレなかったし、誰一人として私が本物の桜花様じゃないことに気づかなかったし。


帝とも数度しかお会いしたことないのなら、顔を見られても騙し切れるかもしれない…


そう、思っていると、遠くから足音が聞こえてきた。


それと同時に…昼間だと言うのに、なんかだんだん部屋が薄暗くなってきたのが分かった。



「変なの…雲で太陽が隠れたのかな」



なんて独り言をつぶやくけど、なんとなくということに気が付いた。


何か嫌な気配を感じ取ったからだ。



「あれ……これ……悪霊の気配に似てる…?」


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