第6話 身代わり入内打診

「え、わ、私がですか!?」



「そうだ」



「む、無理ですよ!バレますって!」



「大丈夫だ、それだけの霊力を持っていればバレはしない!」



「それが何の関係があるんですか!?」



霊力があれば姿を誤魔化せるって?霊力を魔法と何かと勘違いしてます?

変身とか記憶操作できると思ってます?無理ですから!!


それに桜花様は霊力ないですし!

それに何より……



「私は桜花様と見た目が全然違うのですよ!?一目でバレますって!!」



桜花様の髪の色は儚い感じの薄い茶色、一方私は漆黒の黒髪。

肌の色は私なんかじゃ比べ物にならないくらい白いし、体は華奢で、

桜花様が桜だとしたら、私は雑草。


勝てる要素がない……あ、でも胸だけはちょっとだけ私の方が大きいかな?


じゃなくて、こうも違う人物が目の前に現れたら、偽物だってバレますって!



「大丈夫よ、数度お会いしただけだもの。向こうは私の顔なんて覚えてないわ。」



「それに、基本簀子や扇子を挟んでしか会話はしないからな。」



それは他の殿方とお会いする場合ですよね?夫婦の場合は直で顔合わせしますって!何度も!!



「バレたらどうするんですか!平民の孤児は切り捨てても良いと!?」



「私と血が繋がっていないというだけで、うちの神社の後ろ盾があるのには変わらから大丈夫だ。それに、霊感ある少女なら、向こうも喜ぶだろう」



「どういう意味ですか?」



「実はこの縁談をまとめるにあたって、条件を出されてな。霊能力者を送らなければならなかったんだ。凰月こうがかささぎをつける予定だったんだが…お前が行くなら、送る人員は一人で事足りる」



なるほど思いつきで人選してるわけではないのですね。



「そういう意味でも、桜花が行かないなら美緒が適任だ。」



「しかし礼儀作法とか」



「すでに叩き込んどるわ。息子の嫁に迎えるつもりだったしな……まぁ、お前たちお互いがよく思ってないみたいだから、このままだと無駄に終わりそうだが」



うぐ……


育ててくれた恩みたいなところを突かれると、流石に罪悪感がすごい。




「まぁ、事前に言わなかったのは悪かったし、こうなってしまった以上無理強いはこれ以上しないが……いつまでも巫女でいるつもりか?凰月こうがと結婚しないで、このまま巫女でいるつもりなら、結婚一生無理だぞ」



その覚悟は党の昔に決めておりますけれども……

っていうか、そもそもそのつもりなら最初に言わない神主様の意地が悪い。


取り合う必要もない、そう心の中では結論づけたのですが……



「もし、美緒がこの話を受けてくれるなら、私はこの二人の結婚を受け入れる。かささぎは神社の跡継ぎだ。食事にも食いっぱぐれの心配は今後一切ない」



それを聞いた私はぴくりと体を動かしました。


私さえ入内すれば、お兄ちゃんは神社の跡継ぎ…?


そうだよね、凰月こうが様がああ言っている以上、結婚するつもりはなさそう…結婚しなきゃ、子供は生まれないから後継ぎにはなれないんだもの、そのまま後継ぎの席は桜花様の旦那様に回って来る。


お兄ちゃんが磁器神主になれば、今までよりは美味しいものを食べられるようになる上に、推しと結婚して、幸せになれる?


中世ヨーロッパ系に転生できず、貴族でゴージャスで楽な生活をさせてあげられなかった分、これからはいい思いができる?


いやいや、最悪神主になれなくても、私が身代わり結婚を最後までうまくやれば、お金や食事だって兄に仕送りとかもできるかもしれない。


あれ?


この話、受けない理由ある?


おいしすぎない?



「まぁ……そういうことでしたら。」



こうして、私は桜花様と入れ替わり受代を決めたのでした。





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