第5話 兄、棚ぼたにより、推しと結婚に王手がかかる。


そういえば……帝ルートクリアするとシークレットキャラが攻略できて、それだと選択肢出てくるんだっけ…


私、帝ルート攻略する前に死んじゃったから、シークレットキャラの全貌やシナリオ内容とかよく知らないんだよね…ネタバレ嫌いで攻略サイトも掲示板もSNSも公式サイトすらシャットアウトしてたし…


でも確か、発売前の情報でチラッと霊能力者とか書かれてたような……霊能力者?


そうか…今の今まで、全く気が付かなかったけど……

お兄ちゃんが転生したのって、ただのモブ神職じゃなくて……ゲームのシークレットキャラだったんだ…!!


そして、正規の帝ルートかと思われていたけれど、どうやらシークレットキャラルート


レアキャラ引き当てて、棚ぼたで、推しとの結婚というオタクの願望を叶えようとしてるお兄ちゃんすごい。


桜花様の大胆告白を受け、まんざらでもなさそうな兄こと……というかもうデレデレな顔しちゃってる兄。


そんな兄ことかささぎに神主様は憤慨します。



かささぎ、貴様!育てた恩も忘れて娘に出しよったか!それも未来の皇后が約束されている我が娘に!!」



至極もっともな主張。


兄もその怒号に我に帰り、顔を青ざめさせると必死に否定を始めます。



「誤解です神主様!私は桜花様とは滅多に口も聞いたことはなく、手を出しようが……」



しかしそんな必死に否定するのは、桜花様に逆に失礼のような気もしますし、理由はわからないけど入内を拒否したい桜花様にとってはとても都合が悪いハズ…。


なので桜花様は瞳を潤ませて、下から兄の顔を覗き込み、さらに体を密着させて、こう訴えました。




「私と……結婚してくださいませんの……?」




兄、固まる。


桜花様、普段の様子から打って変わって意外に大胆。


本当に兄が好きなのか、はたまた帝との婚姻がそんなに嫌なのか、自分の魅力を最大限に利用して落としにかかってます。



「幸せにします!!」



そして兄はコロッと落ちました。

激怒した父親こと神主様に刺されそうになってるのにこうなるとは、割とマジみたいです。


推ししか勝たん。



「バカをいえ、そんな勝手は許さんぞ!!お前は帝と結婚し皇后になるんだ!!」



当然神主様からしたら、たまったものじゃありません。

帝との繋がりを得て、権力と神社の地位向上の目的が達成される目前まで来ていたのに、霊能力だけが取り柄の、何処の馬の骨とも知れない兄と結婚させるわけにはいかないのだ。



「だいたい後継ぎは凰月こうがだ!凰月こうがはあの巫女とこの神社を継ぐんだ!」



しかしこの神主が私をビシッと指さして爆弾発言したことで、理解は追いつけなくなりました。


え!?そうなの!?初耳なんですけど!!


まさかの流れ弾のダメージはかなりでかい。



「私が引き取られてた目的って……、そういうことですか??」



いつの間にから兄に変わって凰月こうが様から破壊締めをされている神主様に、控えめに聞きました。



「当然だろう!そうでなければ2人もうちの神社で面倒見るか!」



考え方がエグいって、百歩譲ってそれを実行するつもりなら、引き取った時に言ってよ!今言われても気持ちの整理が追いつかない!!


なんかショック。



「美緒、大出世じゃん。」



「うるさいお兄ちゃん。私、そんな結婚望んでない。」



この時代で好きな人と……とはいかないだろうけど、勝手に決められるのはいい気しないし、最悪巫女として生涯未婚を貫き通してもいいと思ってる私には苦痛の計画。


それに凰月こうが様になんか嫌われてるし。


どうにかして断れないものかと思っていると



「あ、僕も。そもそも結婚願望ありませんよ。」



「はぁ!?」



「結婚して子を成すと霊力が落ちるそうなので」



「何それひどーい!お兄ちゃん見た今の!振る前に振られて傷ついた!」



「何とも言い難い複雑な気分だね。」



何はともあれ、現場はカオスと化した。


そんな様子を見て頭を抱えてしまった神主様に桜花様は諭します。



「ほら、お父様、無理ですわよ。美緒と結婚させてより能力が強い子を……と思われていたようですが、凰月こうがは神主にはなっても子を成す気がないのですもの、これなら私が継いだほうが良くありませんこと?」



「しかし……」



神主様は、これまで通り反論しようと一瞬したのですが……急に黙ってしまいました。

そして桜花様、兄、凰月こうが様、私を、さまざまな順番で何度も指を指し何か考えると、神主様の表情は怒りから、腹をくくったような真剣な表情に変わりました。



「……状況が状況だ、仕方ない。…まぁ桜花に霊力が少ないが、まぁ、そこが無理ならこの組み合わせの方がマシか。かささぎ、さっき言った言葉に偽りは?」



「え……あ、ありません」



「桜花、本気だな。」



「もちろんですわ。」



まるで結婚の最終確認をするかのようにその問いを2人に問うと、満足したのか、凰月こうが様に腕を解くように頼みその場を離れる。



「よし、ならば美緒」



そして、私の方に歩いてきて、両肩にポンッと手をのっけた神主様は、こう言いました。



「お前が、桜花として、身代わりで入内せよ」



トリッキーな命令が下されました。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る