日曜日と月曜日の狭間で
八坂卯野 (旧鈴ノ木 鈴ノ子)
チリンと鳴る、そのぬくもり
目の前にふと猫が現れた。
白黒の混ざり合った色合いの、ふさふさとした毛並みを宿す、可愛らしい猫である。
四肢の足先は特に白靴下でも履いたかのように見えるのは、チャームポイントと例える他はないかもしれぬ。
可愛らしくニャァと鳴き、足元に擦り寄って、スリスリと身を擦りゆく。抱き上げてみたのなら、我が腕のうちに収まるとグルグルグルと喉鳴らす。
それは時の秒針だ。
グルグルグルと鳴らすたび、コチコチコチと刻みゆく。心地よさに身を委ね、しばらくゆっくり撫でながら、甘露の時を享受する。
やがてボォーンボォーンと鐘がなる、幻想の中で鐘がなる。古時計の針の位置、重なり合って天辺に槍のように聳り立つ。
猛々しき鳴き声にふっと我に戻りなば、猫はさっさと飛び降りて、我が顔を黒き眼で見つめれば、やがては寝床へ走り去る。
消失感に苛まれ、名前を三度呼んだとて、寝床へ潜りし猫の目は布団の中で光たる。
誘いの瞳はサキュバスか、はたまた、天使の眼差しか、誘われるまま寝床に入り、その体温に誘われ、深い眠りへ落ちてゆく。
小鳥のざわめきが朝の到来を告げる頃、温もりの尾がペシペシと頬を打っては起こしたる。
目覚めて姿を見つめれば、スッと寝床より消え去って、私は寝ぼけ眼を擦りては、朝の身支度すませゆく。
玄関先にて靴を履き、振り返りては猫見つめ、ゆっくり手を伸ばすれば、玄関キーへと早替わり、カチンと閉めた鍵の音、行ってらっしゃいと告げている。
私の猫は日曜日、どこからともなく現れて、月曜日の朝に消えてゆく。
チリンとなる鈴の音、私の背中を押してゆく。
日曜日の猫に癒されて、月曜日の猫に励まされ、ぬくもりを力の糧にして、私は今日も暮らしてる。
猫と共に暮らしゆく、猫と、共に、暮らしゆく。
日曜日と月曜日の狭間で 八坂卯野 (旧鈴ノ木 鈴ノ子) @suzunokisuzunoki
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