農夫の一生

真瀬洸

農夫の一生

稲を植え 待つが仕事と 父は酒

我はせがむが 手で払われる


黄金の地 人は踊りて 捧ぐ米

鬼は目敏く 実りは奪われ


米は糧 親は兵科へ 大江山

一つになりて 目には映らぬ


作法など 知らぬ吾は手を 仏へと

米は捧げて 今夜飢えても


官軍に 戻らぬ父の 姿さえ

勝利の将を 英雄と呼ぶ 


涙落つ 双葉は糧と 根を強く

我の不幸は 甘露のようか


人の死は 満月の夜に 忘らるる

次の命を 繋ぐのみなり


子は生まれ でんでん太鼓 鳴り止まず

眠れぬ夜も 絶えぬ微笑み


子を残し 我も旅立ち 一つへと

声も届かず 化生殺しへ


腕が落ち 体も動かぬ 土の上

濁る目には 子の姿無く

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農夫の一生 真瀬洸 @manosekou

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