神の子
灰白
手の鳴る方へ
『七つまでは神の内』というのをご存知か。
七つの子供は神の内だということである。
信じられないとは思うが私は一度そうなのではないか、と実感した出来事が一つある。
今から語っていきますので是非とも、お聞きになってくださいな。
私は幼い頃よく近所にある神社へと友人と共に遊びに行っておりました。
友人はよく100円玉を持たされていて、賽銭をしてから私と遊んでいました。
だからなのでしょうか。
友人は気に入られてしまったのでしょう。
神は信仰をもって力を増します。
その神社は参拝者が少なく、訪れるのは私達くらいなものですから、
信仰してくれる存在を一等ありがたく思うのでしょう。
そんなことも露知らず、幼い私達は「今日なにする?」「鬼ごっこ?」「もう飽きたよ」「じゃあかくれんぼ?」と、いうように今日遊ぶものについて話し合っていました。
ふと、友人が今まで行ってなかったところまで行こうと言い始めました。
私は、いくら隠れる場所が少いからと大人から行くなと言われているところは行かない方がいいと引き留めようとしました。
しかし友人は頑なに主張を譲らず、私が折れる形でかくれんぼが始まりました。
じゃんけんをし、私が鬼に決まったので数秒数えていると音がなくなりました。
しん、と葉の擦れる音や風が吹く音、友人の足音が聞こえなくなり、唯一聞こえる男が自分の心音だけでした。
ドクン、ドクン、ドクン。
バクバクと鳴る心臓と震える手。
今すぐにでも泣き叫びたい気持ちをグッとこらえて私は拝殿へと駆け出しました。
なぜ急に?と思ったでしょう。
でもこのときの私にはこの方法でしか無理だと無我夢中でした。
そして私は拝殿の前につくと頭を垂れて母から聞いた言葉を必死に発しました。
「返しとうせ返しとうせ」
震えた言葉で祈るように呟くと風がサァ、と吹き葉が舞ってゆきました。
とさ、という音が聞こえ後ろを振り返ってみると、風に煽られた葉がはらはらと落ちる中に横たわった友人がいました。
友人の姿をとらえたとき私は堰を切ったようにわんわん泣き、安心して気を失ってしまいました。
子供たちの帰りが遅いと大人たちが神社で倒れていた私達を見つけ、保護されました。
後から聞いた話になりますが、友人は代々続く巫女の家系だったらしくそれも相まって連れていかれそうになったとのことでした。
そして「返しとうせ返しとうせ」という言葉は私達の地域に伝わる言葉らしいのです。
昔にも同じことが起こったらしく、当時その神社に勤めていた巫女が連れていかれそうななった時に神主が咄嗟に唱えた言葉だそうで、運良く巫女が返ってきたことにより、神主は参拝者に言葉を伝え、いざとなったときにその言葉を使うようにしたそうです。
友人はその巫女の末裔で、おそらく神は友人の奥底にある巫女の気配を感じとったのだろうということだ。
ただ、その話もはるか昔から口伝で伝わっているので嘘か真か、信憑性はあまりなく、半分信じられずにいます。
以上、私が七つの頃に体験した嘘のような出来事である。
今は地元を離れ友人と疎遠になっているが今も元気にしていると母から聞いているのでおそらく大丈夫なのだろう。
それでは皆様ごきげんよう。
神の子 灰白 @kaihaku_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます