第7話
SF「朝」
朝日市というベッドタウンにある、朝日ヶ丘。そのひときわ高台にある、朝
自らの設計で建てた家は、隅々にまで太陽光による恩恵を120%享受するための、ハイテクで埋め尽くされている。
屋根はもとより、日光のさす部分には隈なく、最新タイプのソーラーパネルが完備していて、電気代はロハだし、売れる余剰電力はかなりの金額だった。
庭には、二羽、鶏を飼っていて、卵を産ませて、孵卵器で雛をたくさん飼い、拡大再生産をして、たんぱく源を賄っている。
光合成をする植物の、いろんな食用観賞用の品種を網羅して、それらの自動栽培システムも、電気仕掛けで24時間稼働していて、農協やらに卸していた。
いわば、ここはソーラーハウスのアクアリウム? だからパーフェクトに”自家製”の、天然無農薬のタマゴ肉野菜の供給が可能なのだ…ビタミンやミネラル、栄養満点の食卓が、よしんば朝鯔家だけが完全に孤立した状態になっても、だからある程度維持できるのだった。
妻の 朝子は、この家を気に入っていて、「パラダイス」と呼んだりしていた。 きわめて採光が良くて、が、マジックガラスなのでのぞかれる心配はない。 外から見ると、ガラスはホログラムのような虹色に輝いていて、夜には美しい電飾のライトアップさながらの幻想的な光景が浮かび上がるのだった。
主人の畢生のライフワーク?である、朝鯔家は、評判を呼んで、観光名所にすらなっていて、見物料の収入すらあった。
「ねえあなた、あたし、幸せだわ。 うふふ」
「テクノロジーの進歩というものに適応しようと努力した結果だ! 機械文明万歳!」
こちらを見て、にっこり微笑む妻。 絵に描いたような幸せなカップルのグッドモーニング。
が、その妻も実はソーラーパワーで動く、
最新科学技術の粋を尽くしたAIやハイテクの集積された永遠に”若”妻のままの朝子。新鮮な朝の光を吸収してリフレッシュした朝子はいつものように、若鮎のごとくにぴちぴちしているのだった。
<了>
朝 夢美瑠瑠 @joeyasushi
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