第5話 お仕事のはじまり
次の日、私はスキップをしながらカフェに、おとずれた。
今日から私は、大人の仲間入り。働くことは、大人だ。と思っていた私は、初めてのお仕事に浮かれていた。
楽しいことが始まる。そう思っていたけど、考えが甘かったみたい。
だって
「まずは、庭と
「はーい」
「窓とテーブルを
「はぁーい」
「庭にあるバラを、10本ほど切ってきて、テーブルの
「はぁい」
「終わったら、トイレ掃除」
ぶちり。いい
聞いてないよ。こんなに体を使うなんて。
たしか、紅茶を入れるのが仕事じゃなかったっけ。
私は怒りながらも
「
「うううううう」
黒ぶち
そんなに
私は、
「それから、君の制服だ」
「へっ?」
私は、きょとんとした。
「今、着ているTシャツに半ズボンでは、この店に合わない」
「たしかに……。だったら来たときに、渡してくれば、いいのに」
「
このやろう。
今の言葉は、聞き
私の
言っておくけど、このTシャツの”ミニかわ”は人気キャラクターで、私のお気にいりなんだから。
私の心は真っ黒になり、
ふふふ、その、お
「かわいい。これメイド服だよね。着ていいの?」
「ああ。ちょっと、待って」
クスリと笑いながら椿君は、なぜか壁に向かい、ぼそぼそと話している様子だった。
えっと。壁と話してる。どうしよう。
ときどき、わけのわからないことは言ってたけど、わけのわからない行動は初めてかも。なんて思っていると
がたがたがた。
「えっ。なに。
「
「
どすん。ばったん。ずず。ずず。
本当に
少ししてから、しーんと部屋の中は静まり返った。椿君は
「さぁ、
いや、いや、いや。
今しがたロッカールームができました。みたいな言い方されてもさ、魔法じゃないんだから、ぱぱっと部屋が
そう思いつつも、私はビクビクとしながら隣の部屋のノブを回して、ガチャリと開けた。
なんだ、普通じゃん。
そこには黄色の
ロッカーは私の
私は、おデコに手をあてて、考えた。
ここ……絶対に普通じゃないよ。実は椿君は
でも、どう見てもイケメン小学生にしか見えないんだけど。
まぁ、小学生にしては言葉が大人びている気もするけど。
私はぶつぶつと
「いいじゃないか。
ロッカールームから出ると、椿君は、まじまじと私を見て、
つやつやの
私は調子に乗って、クルリと回って見せた。
「よし。思った通りだ」
「なんか
「ふふ。
これっと言って椿君は
そこには目がしぱしぱするほどの、美青年が立っていた。二十歳くらいだろうか。なんて言うか……こう椿君を大人にしたら、こうなりますっとゆう
「大人いるじゃん」
「あれは、AIだ」
「えーあい!」
「そう。人型ロボットだ」
「ロボット!」
そんなの置いてあるの。
「兄さん」
「にいさん!」
待って、AIじゃないの。兄弟なの。
「これは、兄さん
「なにそれ、二号がいるの」
「いや、いない」
まぎらわしい名前をつけないで欲しい。何だか知らないけど、兄さんと呼ばれたAIは、
やば。声まで美声。これ本当にAIなの。私を
どっからどう見ても椿君と、年の離れた美形兄弟にしか見えない。
「兄さん、ティーカップを持って来て」
「わかったよ」
(うわ。眩しい。眩しすぎるぜよ。兄さんの笑顔)
神がかった、その笑顔に、私は思わず、ひるんでしまった。兄さんは
「ね。AIだろう」
ねって。どこがAIなのかわからないんですけど。遊ばれてるの。絶対に信じられないんだけど。
私は不信な顔を向けた。
「えっ。見えない。それなら」
私がジト目を送ると、椿君は考える素振りをしてから
「兄さん。両手をあげて」
と言った。兄さん一号は両手をばんざいさせる。
「で、お
ん。
言うことを聞く兄さんに椿君は、にやりと、いたずらな笑みをした。
「はい。お
ふりふりふり。
「ぎゃぁぁぁ。やめい!」
そんな、お
「くっくっく」
「笑ってないでよ。本当に絶対にダメ。あの顔で変な
こっちを見ながら、兄さんは、まだ、
やーめーてー。
どうやら椿君の
「ははは。兄さん、もうやめていいよ」
兄さんは両手をあげて、お
いや、本当に、イメージが……。イケメン
「くっくっくっ。兄さん、普通にしていいよ」
椿君が言うと、なにごとも、なかったように兄さんは動いた。
「ねっ。あれはAIだよ。まだ信じられない、なら、他にも……」
「わかった。わかったから、なにもさせないで、そんな
「ふふふ。
やっぱり。私で
私は
「ふふふ。はははは」
椿君が大笑いすると、そこでどうしてか兄さんも
「なんで、わざわざAIを使うの?」
「決まっているだろう。小学生が
「…………」
ねー。聞いてもいいだろうか。やっぱり絶対、このカフェ変だよ。
「さて、時間だ」
なにはともあれ、ガーデンローズ
私は椿君の
そのとき、
さあ、どうなることやら。
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