第2話 橋の向こう
「こんなところまで来たの、初めて」
私は赤い橋の前で立ち止まった。
橋は思っていたよりも長く、その先は、わさわさの生い
緑色の葉が
ちょっと怖いかも……。
私は一歩、下がる。お化けがでそう。でも、こんな真っ昼間からでるわけないよね。
「こ、怖くないもん」
私は言い聞かせて、ドキドキしながらも、赤い橋を、ゆっくりと渡った。下をのぞくと、地上から橋まで、けっこう高さがあった。
おっと。あまり下を見ると、クラクラしちゃうぞ。
お父さんが言っていた通り、川が、ざーざーとして、流れが速い。
プールで泳ぎたいけど、ここではお
「
小さなころ、お化け屋敷に入ったときに、お母さんが、魔法の言葉を
私はビクビクしながらも、橋を渡りきる。
(なんだ。
へっちゃら。へっちゃら。へっへっへっ。
怖いことを、ひとつ乗り越えたら、レベルアップした気分。
私は軽い足取りでスキップすると、一本の道を登って行った。
「アゲハチョウだ」
見るものすべてが、キラキラしているみたい。
一匹の
私は
すると、どこからか息苦しくなるほどの、バラの匂いがしてきた。
「あれ、いい匂いがする」
香りの出どころを探して歩いていると、ひとつの、山荘があらわれた。
「うわぁ。
壁が茶色のレンガと白のお家。窓ガラスは丸い。玄関の横には、モミの木が生えてて、ドールハウス巨大版みたい。
いいなぁ。こんな家に住んでみたいな。
でも、花の香りがするのは、こっちじゃないみたい。
あっちからする。
どうやらバラは裏手にあるみたい。私は裏へと回った。
「あっ」
ひらりと花びらが
「きれい」
ほうっと見とれていると、太い
えんとつ、があって
うわぁ。バラに、かこまれた妖精の家のカフェみたい。
カフェの入り口で私は口をあけて、ぽかんっとして見上げた。
と書かれていた。
紅茶専門店だって。ステキ。
なにを隠そう、私は飲み物のなかで紅茶が、一番大好きなんだ。
とくにミルクティー。紅茶の香りとミルクの甘みが
ウズウズが私の体の中を動きまわった。
ちょっと、のぞくぐらい、いいよね。
私は、そっと中に入る。
うわ、どこから曲が流れてくるんだろう。
庭には1本の桜の木があって、その
これか。いろいろ、仕掛けがあって、面白いカフェだなぁ。
遊園地に来たみたいに、私は落ち着きがなく、きょろきょろとした。
このまま真っ直ぐ進めばカフェの入り口なんだけど、私は左側に目を
だって、大きな
これは、どうしてもバラのなかを、くぐりたい!
(あっ。立ち入り
「……」
いけないと思いつつも、すこしだけ。と、私は言い聞かせて、こっそりと中へと入った。
黄色のバラのトンネルを、くぐっていると、なんだか、不思議の国に来たみたいだった。毛虫と目が合い、頭をさげて、こんにちわ。
バラのトンネルを、どんどん、進むと
そこは、バラ、バラ、バラの花!
見わたすかぎりのバラの
うひゃあ。きれい。
お花のテーマパークみたい。小さいけど白色の
「あれ。この花、青いや」
私は花園のなかで目立っていた、青いバラが目にとまった。花びらが何枚にも折り
なんか”私ってきれいでしょう”って、どや顔しているみたい。
思わず、私は手を伸ばした。
(たしか、バラを青色にすることは、できないんじゃなかったっけ? できても、
なんで咲いているんだろう?
私は青く咲き
これ、お母さんに見せたら、ビックリするかな?
私は、そっと花に触れて、
「……。一本くらい、いいよね」
引き抜こうとしてたんだけど、私はそっと手を離した。
「やめよう」
人の家のものを、
きっと、お母さんも喜ばない。
それに、こんなところまで入ってきちゃった。
これはいけないことだよね。
(帰ろう)
私は来た道を戻ろうと、
あれ、なんだろう?
私は、目ざとく腰ぐらいの高さの、ポールみたいな、石の
なんで、こんなところに、あるんだろう。
それも石には”守る”って漢字が書いてある。
えっと。なにを守ってるんだろう?
私は首を、かしげる。
すごく
石の
どうやって水晶のなかに、バラの花を入れたんだろう。私は顔を近づけた。
「不思議な色。見たことないや」
青でしょ。赤でしょう。黄色に、白に、黒色。
花びら1枚、1枚に色が違ってて、不思議。
うーん。でき心だったんだよ。ちょんっと指で触ちゃって、そうしたら……ピシリと水晶にヒビが入っちゃった。その
パン。
って、水晶が割れた。それもなかに入っていた、五色のバラまでもが、
私はショックで言葉を失った。
「なっ……」
口をあんぐりして、立ち
ひゅんっと風が
「なんて日だ!」
私は頭を、かかえる。
(どどどどどどどどどどど、どうしよう。割っちゃった)
「君」
「ぎゃあああ」
私の肩がビクってなって、とっさに、亀のように、背を丸めて地面に
(きっと、ここの店の人だ。怒られる)
私は必死になって体を、
ヤバイ。大ピーーンチ!
勝手に入ったこと。
青いバラを取ろうとしたこと。
水晶を割っちゃったこと。
悪いことを、いっぱいしちゃった。
それか、今すぐ、透明人間にして。
私は頭のなかが、大パニックになってしまった。
お願い、私が見えませんように。
つい、必死にそんなことを思ったけれど、こんな大きな
それでも、頭をあげられない。
すると。
「ぷっ。
優しそうな声が、うえから聞こえて、私は涙目になりながら、そろそろと顔をあげた。
男の子だった。
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