ここは小学生カフェ・ガーデンローズ
甘月鈴音
第1話 夏休みは田舎で。
「
うーん。
ゆらりと天井に登っていく一本の
目の前には
あとは火の
古くさい
うげ、しびれちゃう。
外からは元気いっぱいな、セミの声。夏の
「スイカを切ったよ。
お
「食べる」
窓の外は細い道と田んぼ、緑に包まれた森林に川、お
私はそれを横目に、ツインテールの
しゃりしゃりと甘いスイカを食べながら
東京育ちの私は、毎年、夏休みになると、お
でも、今年は違うんだ。だって、弟が産まれたから。
私の家族は四人。お父さん、お母さん、私に弟。
弟の名前は
そのせいで、夏休みの計画が、全部ダメになっちゃった。
赤ちゃんって、お
お父さんはサラリーマンで、ちょっとの間だけ、ここから会社まで通うんだよ。
お母さんは
お
お父さんも、お母さんも、お
友達もいないし、
でもまぁ、イトコは全員、男だから。
お母さんが言ってた、男系なんだって。だから女は私だけ。いつも、のけ者にされちゃうんだよね。
ああ、ポテチが食べたい。じゃがバタじゃなくて。
嫌いじゃないけど、おやつじゃないんだよね。
ここにいると、おやつはスイカや桃。フルーツばっか。あと、じゃがバタ。お菓子がない。
こんなことなら、お家からもっと、お
それに、ひとりで食べてても楽しくないし。
本当なら今ごろ、お父さんとお母さんとキャンプに行っているはずだったのに。
それに花火大会も行くはずだったし、友達と流しそうめんをするはずだったけど、なくなっちゃった。
まぁ、流しそうめんって言っても、私の家はマンションだから、おもちゃを使うんだけど。
「ああああん。ああああん」
ああ、ほら、弟の大樹が、また泣き出した。いいかげん、頭が痛くなっちゃう。
ぜんっぜん、集中できない。
つい、
「ふえぇぇぇん」
さらに大樹の泣き声が
「ああ、うるさい。うるさい」
なんでこんなにも泣くんだろう。夜も
私は持っていた
もう、無理。
パタンと漢字ドリルをとじると、お母さんにバレないように家を、そっと飛び出した。
「大樹がいるから
べつに、いいわけじゃないよ。
私はぷんぷんさせながら、田んぼの間にある、細い道を、てくてくと歩いた。
長い枝を見つけて、手に持つと引きずる。うしろを見ると
それなのに、お
「お母さんも、お父さんも、お
私は道ばたの小さな石ころを見つけ、けっ、と
『
遠くに行かないように、お母さんが、そう言っていた。
橋の向こうは、ひとりだと危ないんだって。それに橋の下の川も、流れが早いから、近づいたらダメってお父さんが言ってた。
私は、うしろを振り返る。すると、お
「……」
大樹が生まれてから、お父さんもお母さんも、私のこと、どうでもいいみたい。
だって、すぐに『お姉ちゃんでしょ。
遊ぼうってお父さんに言うと『また今度な』って、なるんだよ。
なにさ。ずっと、私のお父さんとお母さんだったのに。そう思うと、ますます、大樹が
お父さんも、お母さんも、少しぐらい困ればいいんだ。私は知ったこっちゃない、と前を向いて、進んだ。
そりゃあ。はじめは大樹が産まれて嬉しかったけど。病院でジャンプして喜んだし。
友達にも
ふん。だ。弟なんていらないもん。
持っていた枝を投げる。
「ああ、ひま! なにか楽しいことないかな」
私はずんずんと赤い橋に向かった。
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