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稲川チーズ

第1話モーニングルーティーン

○モーニングルーティーン


 ブラインドの隙間から、小さく漏れる朝の光を頬に受け、シーツの中で気だるく横たわったまま彼女は、眩しげに細目を開ける。

 ゆっくりと半身を起こし、銀色のショートヘアーをかきあげながら、枕元の目覚まし時計を流し見る。アナログの針は7時と35分を指している。

 紐を引いてブラインドを上げると、レースカーテンの向こうに、まだ人の少ない朝の港町。通りの向こうに、光を白く反射して、どこまでも穏やかな海。

 港では、数隻の漁船が繋がれたまま揺れている。

 ベッドを降りて、しなやかな曲線の下着姿に薄いローブを纏い、キッチンの冷蔵庫から缶コーヒーを手に取ると、飲みながらデスクのパソコンを立ち上げる。

 メーラーをクリックすると、新着メールが続々と流れてくる。詐欺まがいの迷惑メールに紛れて、仕事に関するものが二つ。

ひとつはこちらが出した条件に納得できず、仕事の依頼をキャンセルしたメール。ひとつは先週送られてきた、仕事の仮依頼のメールに出した条件を飲んで、正式な依頼として送られてきたメールだ。

「まいどあり♪」

 彼女は鼻歌混じりに返信のキーボード叩く。


『下記の口座に前払金66,0000円(税込)のお振込をお願いします。お振り込みの確認を持ちまして、お仕事開始とさせていただきます』


送信ボタンをクリック。

缶コーヒーの残りを飲み干す。


 50年前、世界は、突如魔界からあらわれた謎の魔王による侵略、支配を受けようとしていた。しかし、人類はあらゆる軍事力を駆使し抵抗、激しい攻防の末、叡知の限りを尽くして開発した、非人道的とも言える最終兵器により、魔王の肉体を木っ端微塵に破壊する事に成功。しかしその際、飛び散った魔王の肉片から放たれた魔力の残滓が、地球全土に、まるで胞子のように広がり、残された。

そして、その残滓を始末する職業もほぼ同時に誕生した。

彼らの間で残滓は、その見た目からか、いつしか妖虫と呼ばれるようになっていた。


開けた窓から心地よい風が頬を撫でる。

土岐妖虫駆除サービス、土岐茜は、ラジオを付けた。


陽気なDjの声に乗せて、陽気なレゲエが流れ出した。


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