今世の私と前世の俺
電車に乗った後、自分の事について考える。前世の名前は山咲和輝。
あれは2009年、就職して半年ほどたった夏。突然の背中の痛みで意識を失った。
今が2025年で今年16歳だから亡くなってすぐ生まれ変わったようだ。命日と誕生日を計算すると辻褄が合う。
「おそらく大動脈乖離だろうな」
遺伝で循環器系の病気が多く短命な家系である事は知っていた。その順番が来たってだけだ。
両親とは仲が悪かったからどうでも良いが、妹の事が心配だった。
名前は有紗。兄妹仲はとても良かった。それこそ友達以上恋人未満のような。
友達からは恋仲かと疑われた事もあった。終ぞ告白は出来なかったが、妹も同じ気持ちだったと思う。
「生活が落ち着いたら連絡してみようか...」
いや、迷惑だろうか...後日考えておこう。と思っていると、お尻に手の感触がある。
おいおい、おっさんの尻を触るやつがあるかと思ったが今は美少女だった...
満員電車で動けないし、初めての体験にどうしようか思案していたところ後ろから声が上がる
「おいおっさん!痴漢してんじゃねーよ!」
「お前、俺に濡れ衣を着せる着かっ!」
何とか振り向くと、男子高校生がスーツ姿のおじさんの手を捻り上げていた。
成り行きを見守っていると隣にいたOLから声を掛けられた。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
そう返事をする。私が黙って左手を顎に、右手を腕を庇うようにして俯いていたからだろう。実際は考え事をしていただけだが。
「とりあえず、立川駅で降りましょう」
二人に声を掛ける。誰かが連絡してくれていたのだろう駅には鉄道警察隊の警官が待っていた。
別室で手短に事情聴取を受ける。私はどちらに痴漢をされたかわからないと答えたが、良い手ある事を思いついた。
おそらく、おじさんが触ってきたのだろうが、おじさんにも人権はある。前世おじさんの身としては平等に扱いたいのだ。
「少々失礼しますね。」
そう言っておじさんと男子高校生、片方ずつ手をつかんで自分のお尻を触らせた。
おじさんも男子高校生も驚きの表情をしている。男子高校生は顔が真っ赤だ。
ハハッおじさん、思春期の性癖を蝶々結びにしちゃったカナ?
などとゲスの思考をしつつ声を上げる。
「私を触ったのはおじさんです」
触られた感触を頼りにそう言った。女性警察官に其処までする必要は無いと怒られたが、確かにそうだ。
これじゃ痴女じゃなないか...
大事にはしたくないので被害届は出さない旨を告げ、男子高校生にはお礼を伝えた。上目遣い美少女JKのはにかみ笑顔を添えてな。
見事にしどろもどろになっている男子高校生を内心してやったりと思いつつ、多摩モノレールに乗り換える。
痴漢で思考停止してしまったが、今世の私の人生は誰かの人生を奪ったのではなく、転生だと考えられる。ただ、両親からしてみたら奪われているのと同義なので真っ当な娘を演じたい。
弟には今まで結構きついことしてしまったと思っている(世間一般の姉弟としては普通らしい)ので優しくしてあげようと思う。
正直言って、前世でTS願望があったので願いが叶った形だ。今世は前世で描いていた美少女ムーブをしつつ思春期男子の性癖をぐるんぐるしたり、蝶々結びにしたりやりがいがありそうだ。
ある朝、姉の様子がおかしい。 芳乃 @izureayameka_kakitsubata
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