第5話 朝チュンからの

 朝だ。


 夢かと思った。でも、現実だった。

 俺のベッドの上には、体育座りをしてる女子――鈴野がいる。


 昨日の夜は、都市伝説の話で盛り上がったが――“いい夢”を見れた。

 「親に泊まりの許可取ったから平気」とか、軽く言ってたけど、俺の心臓には一切優しくなかった。


 隣に女の子が寝てる夜。寝れるわけがない。


 俺は鏡を見て、寝癖だらけの髪をぐしゃぐしゃに撫でながら、制服に袖を通した。


 ……と、背後から視線を感じて振り返ると――


「犬塚くん」


 鈴野が、ベッドの上からじっと俺を見ていた。

 桃色の髪が、朝日でやわらかく輝いている。


「ん? どうした?」

「ねぇ、犬塚くんは……わたしのこと、どう思ってるの?」


 その声は、小さくて、少し震えていた。


 冗談でも、キス魔でもない。

 素の、鈴野の声だった。


 俺は、何も考えずに、言葉を吐き出していた。


「……変な子だと思ってるよ。耳をハムってきたり、勝手に布団入ってきたり……」


 鈴野さんの肩が、ピクリと動いた。


 俺は続けた。


「……でも、嫌いじゃない。むしろ……好きかも」


 沈黙。


 そのあとで――


 彼女は笑った。ちょっと涙ぐんで、でもとても嬉しそうに。


「じゃあ、付き合ってください。都市伝説より、ずっと不思議な犬塚くんへ♡」


 俺は真っ赤になって、目をそらした。


 ……それでも、頷いた。


 そして、二人並んで歩く登校路。

 すれ違う同級生たちが、ざわざわと視線を向けてくる。


 でも、気にしない。


「……イヌッキーちゃんねる、まさかのリア充化。これ、都市伝説級だな」


 そう呟くと、鈴野さんがクスッと笑って、俺の手を握ってきた。


 その手は、ちょっとだけ、震えていた。



 - 完 -

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隣の席の不登校女子は俺の隠しチャンネルのガチ恋リスナーでした 桜井正宗 @hana6hana

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