淡い青春だからこそ
名なし葉っぱ
淡い青春だからこそ
今日は高校の卒業式だった。
私は俗に言う陰キャで、陽キャな人達が苦手だった。でも、誰だって得意な事、苦手な事ってあるよね。そんな私達も高校生を卒業するんだな。
色々な思いをしながら体験した学校生活も終わってしまうのか。
私は小柄だか柔道部に入っていた。
練習はきつかったけど試合は楽しかったし、みんな仲がよかった。そういうのも全部卒業なんだ。
さみしいな。
「エミ!卒業してからもずっと友達だよ!」
と、私の名前を呼んで涙を浮かべながら抱きしめてきたマイコ。とてもいい友達で大好きだった。
「うん!そうだね!」
私も涙を浮かべながら、そう返した。
大好きといえば、私にはひそかに想いを寄せている男子がいた。ケイタ君だ。ケイタ君は 物静かで、休み時間になると読書をしていた。よく見ると顔が整っていて、私は「隠れイケメン」と思っていたところもある。でも、ケイタ君とは、まともに話をした事がない陰キャな私。まぁ、ケイタ君も陽キャではなかったけど、相手は男子だし、話しかけるなんて事はなかったし、もちろんケイタ君から私に話しかてくれる なんて事もなかった。
でも、私は ケイタ君 の事が好きだった。
卒業式が終わり、最後のHRも終わって時間が経つにつれ、教室にいた人達は減っていく。
私はまだ教室に残っていた。そして、
ケイタ君も、まだ教室に残って読書をしていた。
私は最後まで話す勇気がなかった。話したかったけれど..。
ケイタ君が友達とトイレに行ったところを見て、
私は、すかさず、自分の名前が書いてある教科書をケイタ君のバッグに さっと入れた。
誰も気づいてはいなかった。
その後、私は、教室を後にした。
マイコにも、その事は言っていない。
話をかけられなかった私のケイタ君への想いの行動だった。
今、思うと恥ずかしい。ケイタ君気づいたかな。
私の想い、気づいてほしいな。そんなことを思いながら卒業した。
――――――――――――――――
今日は成人式だ。私も二十歳だ。
私は高校を卒業してすぐ就職した。
成人式も終わり、高校の同窓会があるとマイコに聞き、行こうよ という話になったので、同窓会に足を運んだ。
ケイタ君は来るかな.....。なんで密かに思いながら。
全員お酒も呑めるということもあり、
場所は 居酒屋さん だった。
マイコは実は酒豪らしく、日本酒を水のように呑んでいた。
「マイコ、そんなに呑んで大丈夫?」
と私が聞いても、大丈夫大丈夫!と笑いながら、どんどん呑んでいた。
私は、飲酒はしないと決めているので、ウーロン茶や水などを飲んでいた。その時、
「ちぃーーっす!みんな呑んでるー?」
と、なんだか聞き覚えのあるような声がした。
同級生達は、来た来た!と盛り上がっていた。
私は、誰だろう?と思っていた。
私も振り返って見ると、金髪にピアス、高そうな腕時計やアクセサリーを付けた男子がスーツを着て、笑顔でみんなと話していた。
私は、(こんな陽キャ男子いたっけかな?)と思いながら、ちらちらとその男子を見ていた。そしたら、ふと、その男子と目が合った。
その陽キャ男子は、私の隣りに座って、
「エミちゃんだよね?久しぶり!元気だった?」
その陽キャ男子は話かけてきた。
私は、(....誰だっけ?)
おどおどしている私に、その陽キャ男子は、今自分はホストクラブで働いているという事などを話しながら名刺を出してきた。そして、私の耳元で囁いた。
「卒業ん時さ、俺のカバンにエミちゃんの教科書が交ってたよ、そんなに俺と交りたかったの?」
私は、ピンっときたと同時に、私の淡い青春と何かが崩れていくような気がした。
そして、とっさに私は笑顔で、
「 うん.. 」
と、囁き返してみた。
すると、その陽キャホストは、また私の耳元で、
「じゃぁさ、今から抜け出してホテルでも行く?」
と、私の肩に腕を置き、言った。
私は、その腕を優しく振り払い、
「ここで いいよ。」
と、返した。
それを聞いた陽キャホストは、(?)になっていた。
私はすかさず、陽キャホストを押し倒し、、
すかさず、十字固め をかけた。
陽キャホストは、喋ることができず、手でパンパンとする事しかできなかった。
マイコはゲラゲラと笑いながら日本酒を呑んでいる。
他の同級生達は、それぞれ盛り上がっていて、気づいていない。
しかも、ここは座敷、畳みの上、畳みの上は陰キャの私の試合場だ。
私は、陽キャホストに囁く、
「交じり合ってるけど、どうかな?」
陽キャホストは、私の腕の中で 口をパクパク動かすことしかできずにいた。
私は、中学生の柔道の先生の仕事もしている。
そして、家は代々と続く道場だ。
私は、耳元でまた囁いてみた。
「ケイタくん、読書はもう、やめたのかなぁ..」
そして、陽キャホストを しめ落とした。ケイタ君は泡を吹いて転がった。
私は、つぶれかけたマイコを担いで家まで送って、
充血した目で、振り返らず自分の家まで帰った。
淡い青春だからこそ 名なし葉っぱ @happananasi
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