伝説の男帰還

@KOHAKUCHAN

兄貴、再び立ち上がる

——そうる…それは俺の名。みんなからは兄貴と呼ばれている。

夜の街は喧騒に包まれていた。ネオンが踊り、若者たちが笑い、音楽が溢れている。だが、その光の裏にもうひとつの世界が息づいていた。静かで、冷たくて、そして時に熱い──そんな世界だ。


その夜、「兄貴」が帰ってきた。


「兄貴! 本当に帰ってきたんですか?」


ガロスキルの路地裏。古びた焼肉屋の裏手、金属製のドアが開いた。そこから現れたのは、黒のジャケットを羽織り、鋭い目をした男だった。背は高く、無精髭に隠れた顎は固く、言葉よりも眼差しで物を語るような男。


「せな、元気だったか」


その男が静かに言うと、若者──せなは思わず頭を下げた。かつて彼の道を外しかけた時、誰よりも怒り、誰よりも泣いてくれたのがこの「兄貴」だった。


「兄貴がいない間、いろいろありました。でも…あの連中、また動き出してます」


兄貴──そうる。かつては町の裏の顔として知られ、義理と人情を重んじる男だった。五年前、仲間の裏切りで全てを失い、自ら姿を消した。だが、古い絆が彼を再びこの街へと引き戻したのだ。


「誰が動いている?」


「株式会社ロ・ンです。あの野郎、兄貴がいなくなってから急に力をつけて……。今じゃ裏の半分を牛耳ってます」


ソウルは目を細めた。かつての仲間だったひなたは天の上の存在に。利に走り、義を切り捨てた男。その存在が、静かだった血を沸かせる。


「わかった。まずは、街を見て回る」


そう言うと、ソウルは静かに歩き出した。その背に、せなはかすかに震えを覚えた。それは、ただの帰還ではなかった。


──兄貴が帰ってきた。それは、ソウルの夜に火が灯ったことを意味する。


誰よりも熱く、誰よりも真っ直ぐな男の物語が、再び始まったのだ。

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