第10話 ナインの危機

一瞬の出来事だった…

勝利を確信したウチの不意を突くようにグリフィンは尻尾を蛇に変化させ襲いかかってきた。


グリフィンがそんな変化をするなんて聞いたことがない…

毒のような液体を口から滴らせ蛇がウチに噛みつこうと迫る。


攻撃をしようとしていたウチはその攻撃に対応でき無かった。

…やられる!


しかしその攻撃がウチに届くことは無かった。

なぜなら…

「ナイン!?」


ウチの代わりに目の前に飛び出したナインが蛇の毒牙に肩を貫かれていた。


「っ!…がはっ…」


ナインは怪我と毒によって今にも倒れそうだ。

ウチは怒りのままにグリフィンの横っ腹にハンマーを当てるとそのまま奴の頭をハンマーで何度も打ち付けた。


そうしてグリフィンは動かなくなった。

「ナインさん!!」

顔を真っ青にしたフィアがこちらへ向かって来る。

その間も蛇の牙が刺さったナインは苦しそうに呻いている。


「フィア!ナインが毒にやられた!早く助けてや!」


ウチは泣きそうになりながらフィアにそう訴える。

ウチなんかを守ってこんなことになるなんて…

なんでそんなこと…


「大丈夫…私が必ず救います!」

フィアは真っ青な顔でしかし力強く告げる

「まずは牙を抜きます。ルーさん合図に合わせて一気に抜いてください」


フィアにそう言われウチは頷き毒牙に手をかける。

「いきますよ…3、2、1!」


合図と共に一気に牙を引き抜く。

あまりの痛みに悶えるナインを必死に抑えながらフィアは回復魔法をかけ続けた。


なんとかナインの傷が塞がった…

ウチは安堵しながらフィアに感謝を伝える。

しかしフィアの表情は硬い。


「まだです…毒を解毒しなければ彼は死んでしまいます…私が解毒魔法キュアをかけ続けるのでその内に蛇の毒から血清をつくってもらわないと…」


「そんな…すぐ作ってもらってくるから少しだけ辛抱してや!」


フィア曰くキュアだけでは治せず毒の血清を作ってもらう必要があるらしい。

それを聞いたウチは牙をへし折ると急いで町へ向かった。

彼を死なせてはならない!



逃げた馬車の馬を捕まえ町へとついたウチはすぐに錬金術師の店へ駆け込んだ。

並んでいる他の客を無視し、泣きながら錬金術師に牙を渡す。

「いくらでも払うからこの毒の血清を今すぐ作ってや!頼む!仲間が死んでまう!」


その言葉を聞いた錬金術師は大急ぎで血清ポーションを作ってくれた。


それを受け取るとウチは大急ぎでナインのもとへ戻る。

お願いだから間に合って…


二人のもとに着いた時にはナインもフィアも真っ青な顔をしていた。


「血清や!早くこれを飲め!」


ウチは苦しそうに呼吸するナインの口にポーションを当て少しずつ飲ませる。


するとすこしずつナインの呼吸が安定していった。

ほっと胸を撫で下ろすウチにフィアが労いと感謝の言葉を述べる。

彼女も魔力の使いすぎたのだろう。

その証拠に彼女は半ば意識を失いかけていた。


2人を馬車の荷台で休ませウチは町へ向けて馬車をゆっくりと走らせた。


この2人を仲間に誘ったのは自分だ…

自分なんかのせいでかなり危険な目に合わせてしまった…

もし、ナインが死んでいたら…


ウチは最悪の事態を考え、そうならなかった事を神に深く感謝した。

神様に感謝するなんていつぶりやろな…

ずっと恨んでばっかりやったけどこの出会いも今回のことももしかしたら神の思し召しなのかもしれない。


ウチは勇者失格やな…その点ナインは…

彼は自らの危険を顧みずウチを助けてくれた。

力は彼よりも強い自信はあるが心はきっと彼の方が何倍も強いのだろう。


自分のためだけに力を振るい自分の価値を証明する為だけに勇者になろうとした自分と彼との差を感じてしまう。

ウチは…勇者にはなれない…

でもナインなら彼ならきっと素晴らしい勇者になるはずだ。

なら自分にできることは…


新たな目標を手にしたルーシカは力強い瞳で町への道を進むのだった。




翌日、まだ本調子ではないもののナインは目を覚ました。


「えっと…噛まれた後フィアとルーが俺を救ってくれたんだよね?」


「せやでぇ~ウチもフィアも必死だったわぁ」


「あーそうなんだ…ありがとう…で、これはどういうことなのかな?」


そこにはナインの腕をしっかりと両手で抱いて離さないルーシカがいた。


「そりゃあ、あんたがまた無理しないよう抑えとるんや」


ルーシカは事も無げにそう言い放つ。


「えっと…大丈夫だからもう少し距離をあけてほしいというか…」


「なんでや?うちの心配な気持ちが伝わらんのか?!」


そう言いよりグイグイと身体を押し付けてくる。


…当たってるんだよなぁ、小さいながらも柔らかい膨らみが当たっていることについ意識が向いてしまう。


その光景を見たフィアは即座にナインの隣に座ると彼を自分の方に引き寄せながらルーシカに注意する。


「ルーさん!ナインさんはまだ本調子じゃないんですから無理させないでください!」


「だから無理させへんようくっついてるんやて!」


「彼は私が癒すので大丈夫です!」


「癒すってなんや?あんたも抱きつきたいだけやろ?!」


「なっ?!……違います!私のは治療です!」


朝から2人の女性に挟まれているナインを他の男性は恨めしそうに見ている。

…あぁ静かに休みたい…



「…お取り込み中のところ失礼しますよ」


そう言い1人の男性がやって来た。

確か彼はルーを王都まで運ぶ予定の商人だったか…


「グリフィンが倒されたことで王都へ行けるようになったという報告とこちらは討伐報酬です」


そう言い彼は袋いっぱいの金貨を渡す。

これはかなり額だろう。


「こんなにいいんですか?」

思わずそう口にする。


「ええ、我々としても今の時期に王都への交通が止まるのはかなりの痛手だったので」


そう言うと男性はその場を離れた


なんとありがたい分けてもそれなりの大金になるだろう。


「じゃあルー分け前を決めようか、といってもかなり助けてもらったし結局倒したのはルーだから俺達は少なめでいいよ」


「分けへんで?ウチもあんた達と一緒に旅することにしたわ!ま、勇者になるのはやめたけどな」


ルーはあっけからんとそう言う。

フィアもそれに頷いていた。


「ナインさんが寝てる間に話したのですが彼女も旅に同行することになりました。彼女はナインさんが勇者になる手伝いをしたいそうです」


どういう心変わりだ?!

旅に一緒に同行するだけならまだしも勇者になるのをやめるなんて…


「ルー…君は本当にそれでいいのかい?」


「もちろんや!勇者はあんたが相応しい!ウチはそれを支える良きパートナーになるんや」


その言葉にフィアはビクッとなる。

良きパートナー?!それは…


「というわけでこれからもよろしくたのむで!勇者様♡」


「な、何言ってるんですか!?ナインさんは勇者です!」


俺は思わず苦笑する。

賑やかな旅になりそうだ…














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勇者転生 女神の意向によりレベル1からスタート 根津マヨ @nab-ban

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