第7話 epilogue

(MINATO)







走馬灯って、

死ぬ瞬間に見られるもんだと思ってた









記憶にもない自分の産声とか

俺しか覚えてない

生まれたばかりの弟をのぞき込む両親の笑顔とか



俺に憧れて入ったバスケ部の試合で、

3ポイントめがけてボールを投げる弟の姿とか



しっかりブザービート鳴らして、

真っ先に俺に向かってガッツポーズしてる弟の笑顔とか



一緒に祝ったお互いの誕生日に

俺の分のケーキからイチゴを横取りしたいたずらっ子な弟とか




弟がハタチになった時の酒が、人生で一番美味かったこととか





弟の初恋も、失恋も、


大好きなひーちゃんの為に選んだ、花束も。













俺と一緒に選んだ花束はもう少し子供っぽくて

叶わなくてもいい初恋を形にしたみたいな色をしてたけど










その水色のブーケは

花嫁のひーちゃんによく似合ってるね。











人の気持ちを聴くのが得意だったお前だけど



お前が大好きだったひーちゃんの初恋の相手はお前だったんだって、

それだけに気づけてなかったってことは





なんか悔しいから、

言わないまま逝かせてもらうわ。






俺たちはきっとお互い

言いたいことも聞きたいことも山ほどあって


そんなの自分の中だけに閉じ込めておけばいいって思ってたけど

少しだけ回り道しちゃったね。







俺が湊になれば自然と3人が集まって

弟が耳を澄ませればお互いの優しい心の声が聞こえて







彼女が瞳を細めて笑顔になれば

世界中で雨が降っても、

俺たちだけは晴れだった。











涙色の空が広がった朝












叶わなかった俺の初恋は、終わった。







                                       fin

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花束色の空 れんと @kkren

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