第42話 エピローグ2
昏く、人跡稀なダンジョン奥地。今日も、今日とて、ぼくは剣を振るう。
「――ヤッタカ!」
「ミギュアアアアアッッ!!?」
『存在、アンディ・ウォーカーの経験値が一定に達しました』
『存在アンディ・ウォーカーのレベルが上がりました』
『アイテム『エリクサー』がドロップしました』
「お! 久しぶりにレベルが上がったな。ついに、ぼくも“レベル100越え”か」
ぼくは、ゴールデンミミックを
超高難易度なことで知られる、パウラ・ダンジョンの最深部で、エリクサー集めをするようになってから、今日で3日目。
目標としていた数は入手出来たので、あとは王都に帰還すれば、怪我や病気で苦しんでいる人達を、大勢助けられるだろう。
カール達に、引導を渡したその後、ぼくはルイズの協力のもと、王都で解呪ハイポーションを手に入れ、見事【黒死紋】を治すことに成功していた。
念願だった、健康体を手に入れたぼくは狂喜乱舞し、その勢いで、冒険者を辞めてしまった。
仲間達からは、引き留められはしたけれど、その時のぼくは、新しい道が拓けたのに、つまらないことで死にたくない、という思いが強かった。
そして――途方に暮れた。
生き延びるのに必死で、コレと言って、趣味も、やりたいことも持ち合わせてなかったアホにとって、転がり込んで来た自由の量は、あまりにも膨大すぎたのだ。
数年、ダラダラして過ごしたあげく、結局、ぼくは冒険者の世界にカムバックすることとなった。
「アンディさん。仕事はやりたいことより、得意なことで選んだ方がいいですよ」
ルイズに、そう言われたというのもある。
ちなみに、彼女は冒険者活動を引退して実家に戻り、かつての仲間逹と共に所領の運営に努めているようだ。風の噂では、誠実な人柄と、優れた治政で多くの領民に慕われているのだとか。
一方、ぼくはというと、無限にアイテムを手に入れられるスキルを活かして、貴重な回復系アイテムを集めては、各地で健康的な理由で困っている人達を助けてまわる……といった毎日を送っていた。
人助けなんてガラではないけれど、暇に押しつぶされていた頃よりは、はるかに毎日が充実しているのも事実だ。
そんなある日のことだった。
「ママを助けてくれてありがとう。これ、お兄ちゃんにあげるね」
とある山中の寒村。
ぼくは、エリクサーの大盤振る舞いで、病で床に伏せていた村民を何人か助けていたら、幼い子どもが、お礼にと一冊の古びた本を、ぼくにくれた。
逗留していた宿に帰ってから、読んでみて、おどろいた。
それは、ぼくが昔夢中になって読んでいた本だった。
(――あれ? けどこれ、運も才能もない人は、どうしたらいいんだろう?)
ページをめくっていると、不意に過去、考えていたことが脳裡に蘇ってくる。
あぁ……いつから、忘れちゃっていたんだろうな……、
物語のなかで、主人公は、何度も打ちのめされ、失敗していた。
だが決して、卑屈になることも、諦めることもしなかった。
運と才能の担保? そんなものはない。皆無だ。
そして、ぼくはハッとする。
運も才能もない人は、どうしたらいいんだろうって?
どうしたって、いいじゃないか。
だって、そんなものに頼らずとも人間は、前に進む機能が、備わっているのだから。
================================================================
「ヤッタカ!」その荷物持ち、いらんこと言ったら倒した敵が復活することに気づいて成り上がる~を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!
ここまで読み支えてくれた、皆様のおかげで、完結までこぎ着けることが出来ました。
本当に本当に感謝します!
またどこかで、お会いしましょう。
「ヤッタカ!」その荷物持ち、いらんこと言ったら倒した敵が復活することに気づいて成り上がる 社畜攻撃 @shachiku-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます