第13話『速報!親善友好大使パンダ、緊急来日か!?「白黒つけようじゃないか!」のメッセージと共に、平和と正義の象



本編:黒の攻防、牛肉メス作戦の深淵 Ver.2 (続き3)


篠原正剛が「無責任」という新たな刃を手に、内藤尊への攻撃を激化させ、その効果にほくそ笑んでいた頃、彼のオフィスには奇妙な「贈り物」が世界各国から届き始めていた。それは、正剛の「黒の饗宴」に対する、国際社会からの予想だにしなかった、そして極めて皮肉な反応だった。


最初に届いたのは、イングランドからだという、やけに立派な木箱だった。中には、最高級とされるフォアグラが鎮座していた。添えられたカードには、ただ一言、「For the sophisticated palate.(洗練された味覚を持つあなたへ)」とだけ。正剛は眉をひそめた。一体何のつもりだ?


続いて、アメリカからは、まるで感謝祭の食卓から抜け出してきたかのような、巨大な七面鳥の丸焼きが、これまたご丁寧に保温された状態で届けられた。「We trust you know how to carve this up.(どう切り分けるか、ご存知でしょうな)」というメッセージは、どうとでも取れる含みを持っていた。


そして、最も正剛を不快にさせたのは、中華圏のどこかから送られてきた、複数の木箱だった。中には、丁寧にパックされた豚足、山と積まれた手羽先、そして…噂に聞く「珍味」、猿の脳みそを模したと思しき不気味な形状のゼリー菓子まで入っていた。添えられたカードには、達筆な漢字で「百聞は一見に如かず。美食の探求、共に励みましょうぞ。」とあった。


これらの「贈り物」は、非公式なルートで、しかし確実に正剛の元へと届けられた。彼は、これらが単なる悪ふざけではないことを直感した。内藤を巡る報道は、一部海外メディアでも小さく取り上げられ始めており、その中で篠原正剛という名前も、決して好意的ではない形で囁かれ始めていたのだ。これらの贈り物は、まるで「お前のやっていることは、こういうグロテスクで悪趣味なものだ」とでも言いたげな、痛烈な皮肉に満ちていた。


「くだらん…!誰の差し金だ!」


正剛は吐き捨てたが、内心の苛立ちは隠せない。彼の「無責任」キャンペーンは国内でこそ効果を上げつつあったが、国際社会からは、まるで道化師を見るような、あるいはもっと悪質な何かを見るような視線が注がれ始めているのかもしれない。


そして、その混乱に拍車をかけるように、あるニュースが世界を駆け巡った。


『速報!親善友好大使パンダ、緊急来日か!?「白黒つけようじゃないか!」のメッセージと共に、平和と正義の象徴が動く!』


それは、ある国際的な動物愛護団体と、いくつかの人権団体が共同で発表した声明だった。彼らは、篠原正剛の強引な手法と情報操作を暗に批判し、内藤尊のような若き理想家への不当な圧力を懸念していると表明。そして、そのキャンペーンのシンボルとして、白黒模様の愛らしいジャイアントパンダの写真を掲げ、「真実は常に一つ。白黒ハッキリさせましょう!」というスローガンを打ち出したのだ。一部の過激な活動家は、パンダの着ぐるみを着て「篠原に鉄槌を!パンダキック!」などと叫ぶパフォーマンスまで行い、SNSで拡散され、お祭り騒ぎのような様相を呈し始めていた。


もちろん、本物のパンダが政治的なメッセージを掲げて来日するわけではない。しかし、このユーモラスでありながら痛烈な「パンダ参戦」のニュースは、瞬く間に世界中のネットユーザーの心を掴んだ。「#PandaForNaito」「#ShinoharaIsOverParty」といったハッシュタグが飛び交い、篠原のネガティブキャンペーンは、思いがけない方向から茶化され、その権威を揺るがし始めた。


「パンダだと…?ふざけるのも大概にしろ!」


正剛は、モニターに映し出されたパンダの画像と、それに熱狂するコメントの数々を見て、珍しく声を荒らげた。彼の計算し尽くされた「黒の饗宴」に、突如として現れた、白と黒の、あまりにも場違いな闖入者。それは、彼が最も嫌う「予測不可能な要素」だった。


内藤尊は、この国際的な「篠原包囲網(笑)」の発生を、まだ知らない。彼はただ、自身の理想と現実の狭間で、正剛の巧妙な攻撃に苦悩し続けている。


しかし、世界は時に、思いもよらない形で、弱き者に手を差し伸べることがあるのかもしれない。そして、この「パンダ騒動」は、やがて「牛肉メス作戦」の深淵に、予想外の波紋を投げかけることになるのだった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノーライセンス、ヒーラー 志乃原七海 @09093495732p

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ