Untitle-大学篇-

築嶋 霧花(ネーム移行中)

prologue

-ねぇ君さ、私のことどう思ってるの?-


三年前、僕は友達を拾った。死にかけの子猫のような、でも背中に確固たる決意を感じる華奢な女の子だった。それは僕が四年生のころ研究に忙しくしていたとある朝のことだった。


「ねぇスール、授業遅れるよ。ちゃんと携帯見てる?」

春休みが終わって先週ガイダンスが終わったばかりかと思えばもうその翌週には授業が始まる。大学生とは多忙だ。高校生の頃先輩に三年生になれば暇になるからと聞いていたのに僕の入った大学は四年生になっても授業ががっつり入っている。来年からは大学院生だからその糧になると、きっとそうなると信じながら僕は眠い目をこすり洗面所へと向かった。

「あー、またやっちゃった」

鏡に顔を映すと頬のあたりに赤く筋ができていた。どうやら昨日も配信をした後すぐ寝ていたらしい。最近は夜中まで配信をして、配信機材を枕元に持ってきて画面を見ながら満足したら配信を切って寝落ち。というパターンが多い。

「昨日はアツかったもんなぁ」

配信ではホラーゲームの配信をしていた。廃艦を歩き回るゲームで、機関室の周辺を歩いていて、すごく幻想的だったからついつい長時間プレイしてしまった。 オチとしては原子炉で防護服を着ていかなければならないのを知らなくて通り過ぎることができなくて、防護服をとるのに手間取って次の船尾のあたりで色々モノを拾ったところで疲れて配信を切ったのだった。そのあと振り返りの雑談配信をして満足したあと枕で動画を見ながら寝落ちしたのだった。

歯磨きをしてベッドに戻るとノートPCの横にインターフェースとLXRケーブルが枕を這っていた。

 大学に行く用意を整えて僕は部屋を出た。階段を下りて玄関へと向かう。高校生の当時普通の家に暮らすのはなんか嫌だったし、狭いところよりも広い空間で何か活動をしたいと思っていた。何より建築を志すのだから住む家がおしゃれでありたいと思った。色々物件を探し回っているうちに今の物件を発見した。十戸ぐらいの小さなアパートなのだけれどエントランスがあって共用の小さなロビーがあってちょっとした寮のようなイメージだった。とはいえ想像するような寮というほど殺風景ではなくて、おしゃれな電球がぶら下がっている暖色系の大きめの目地のタイルが敷き詰められている空間で、結構気に入っている。友人を呼んでくるとマンションみたいな空間にぽかんとしている目を見るのが楽しみだった。そうではない。急がなくては。

私は大学まで急いで行って、講義室へと駆け込んだ。

「スール君、遅刻」

「ごめん、昨日の配信が盛り上がっちゃって」

「あのホラゲでしょ?よく、夜やる気になるよね」

「やっぱホラーゲームって夜にやるから楽しいんじゃん?」

「うわ、出たホラゲ耐性」

「だからこそ面白いんだって」

 話をしていると教室の照明がついて

「二人とも、今のスライドにあった式について説明仕手みなさい」

教授に意地悪を言われた。すると

「この式は時間軸で展開されているのでこれをラプラス逆変換で求めることで数字が近似します」サクッと答えてしまうのがピトのすごいところだった。

先生は少し悔しそうな顔をしながら実際には難しい問題に理解がある生徒にうれしそうな中途半端な顔を見せた。

 授業が終わると

「スール君この後どうするの?」

「研究室行くけどピトは?」

「私も研究室かなぁ」

大学の端っこにある並木通りを通りながら

「今年は何かおきるかな?」

「なにも起きないといいよ」

桜並木の中を二人で歩いていた。

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Untitle-大学篇- 築嶋 霧花(ネーム移行中) @tomo_kunagisa

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