ごがつのおくり

藤堂こゆ

五月

ばんざい、ばんざい。

まちのひとたちみんなが、おにいさんをかこんでわらっています。

ごがつのひざしが、おにいさんのぼうしをひからせています。

せかいいちかっこいいわたしのおにいさんは、どうどうとむねをはって、けいれいをしてこたえています。

まちのひとたちみんなが、ばんざいばんざいとさけんでいます。

わたしもまけじとこえをだして、ちいさなこっきをふります。

おかあさんはわたしのかたをつつむようにたっています。

おにいさんがおかあさんにかおをむけました。

おかあさんはないています。

どうしてないているの。

おにいさんはおくにのために、とくべつなにんむにつくそうです。

とってもよろこばしいことだそうです。

なのにどうしてないているの。

ばんざい、ばんざい。

みんなわらっています。わたしもわらっています。

ちよさんもここにいればよかったのに。

おにいさんのおくさんのちよさんは、まえのくうしゅうでいなくなってしまいました。

おにいさんはとってもさびしそうでした。

でもいまはわらっています。

おにいさんはわたしにめをあわせました。

わたしのあたまを、おおきなあたたかいてでなでてくれました。

わたしははたをふりました。

にこりとわらいました。

おにいさんはにこりとかえしてくれました。

なんだかさびしそうなきがしました。

しおさいのようなわたしたちのばんざい。おにいさんはせをむけて、むねをはってにんむにむかいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ごがつのおくり 藤堂こゆ @Koyu_tomato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説