『たがための年金術士』 27


 シャーベルト氏は、ずんぐりとはしていたが、背は高くなく、全体的には小柄である。


 いささか古風な眼鏡をはめていた。


 頭はグリグリな髪の毛だが、作者よりはましである。


 『ああ。ぜひ、おはなしあいとか、したくおもいましたあ。』


 『む。あやしい。あなたさまは、なぜ、‘’ヴォイニッチ語‘’だというのですか?』


 そもそも、ヴォイニッチ語など、知られる限りは、誰も知らないのである。


 未知の言語、というより、あるやらないやら解らないものだ。


 あるやらないやら解らない言語を認識する人類が、大都市ウィーンに、ちらほら、いるとは思いにくいのだ。


 『ああ。あなたの疑問はわかりまし。しかし、おいどんは、それを知っているとまではいえないものでありんすが、じつな、その言葉は、いささかの身に覚えがあるわけで、つまり、おいどんは、日本にもいました。また、ジラにもごく短期間いました。』


 『ジラにいた? (ますます。あやしい。)』


 青ジソかな子さんは、しかし、荒川博士たちが、短期間ジラにいたらしいという話しは聴いていた。


 つまり、まるきり、嘘っぱちとも、言いきれなかったのだ。


 『どうぞ。』


 シャーベルト氏は、しとやかに座った。


 『あ、おいどんは、作曲家でありまする。名前が怪しいといわれましましが、シューベルトさんとは、なんの脈絡もありますん。』


 『あ、脈絡は、ない?』


 『ナイン。ない。』


 『日本にいたとか? どこにいましたか?』


 『あは。蘇我音楽大学れし。ほんとは、げいだいにいきたかったが、落とされたね。でも、とうきょう、近辺にはいたかたねたかさんなすび。』


 『なるほど。専門は?』


 『作曲れすべな。』


 『はあ、代表作品は?』


 『フルートとちくわ笛のための協奏曲。』


 『はあ……………(まんざらうそではなさそうな。)で、なんで、ヴォイニッチ語を?』


 『あなたがた、にほんのジラ事件はしってますねか?』


 『む? あなた。なぜ、ジラ事件を知っているの?』


 青ジソかな子さんは、ちょっと、むっとした。いつもの傾向である。


 『おいどんは、あのとき、ジラに拉致されたね。』


 『なんとお!』




       👽️マイドオオキニ!







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『たがための年金術士』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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