もういない あなたへ

もういない あなたへ

お元気でしょうか。

突然の連絡で驚かれていることでしょう。

あの出来事以降はあなたを見る事も叶わなくなり、なんとかこうして連絡をしている次第です。何分（なにぶん）あなたは特別ですから、このような形で一方的にお伝えすることをお許しください。

実際、このようにして伝える機会が巡ってくると、何を申せば良いのか見つからないものです。しかし、ひとつだけ伝えるとするならば、あなたは決して無価値ではなかったということです。全ての事物は必ず繋がっていて、無関係というものは存在しないのだと。

あなたがいてくれたおかげで、私たちは今日も生きていけます。

あなた方の中には世界を憎んでいる方もいることと存じます。人間を恨んでいる方もいるでしょう。自分勝手なことも承知ですが、あなた方へ感謝を申し上げたい。

本当にありがとうございました。

私たちは賢明で愚かです。ありとあらゆる事を学ぶ生き物でありながら、過去からの学びは失われていくことでしょう。その度に、あなたを思い出し、悔やみ、そしてまた罪を犯し、果てしもない悲しみを生み出す。

それでも、忘れないで欲しい。そんな悲劇の中にも些細な幸せはあるのだと。それはあなたのおかげなのだと。

もし、これも消失の中にあるというのなら、ぜひ笑って欲しい。できるならあなたに届いて欲しいと願っています。