私達はどこまでも寂しいまま。

孤独を介した自己探求は出口のない痛ましい営みだと思います。
殊、出自が元となる孤独は、同じ立場の人にしか分からないことも多いでしょうから、外のコミュニティから手を差し伸べるのも限界があって、きっと難しいことなのだと思います。

多くの人を内包する大都会・東京において、何気ない人のあたたかさ、本当の優しさ、深い愛に出会うのは、奇跡のようなものなのかもしれませんね。
主人公のような獣人だからこそ、人間の放つ冷たさを敏感に感じるのかもしれません。

私達が身近に感じる孤独の多くは自らの性格によるものだと思うのですが、出自に悩む今作の主人公の孤独とベクトルが違うだけで、この作品に描かれる孤独の考察は、私達が感じていることと何ら変わりのないものだと思います。

私もあなたも決して溶け合わない。混ざり合わない。
同じ世の中に生きる隣人として、他人として、必要な時にだけ手を取り合って、必要じゃなくなったらさようならをして、みんな寂しいまま、人生を生きていくものなのかもしれません。

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東京狐狼