優しくてあたたかくて、どこか懐かしい物語
- ★★★ Excellent!!!
昔々、背丈が今の半分以下しかなく、世界がずっと広く大きく見えていた頃、もしかしたら『誰か』がいるかもしれないと、花壇のチューリップの中をそっと覗いてみたりしたことはなかったでしょうか。
この物語は、そんな在りし日のことを思い出させてくれました。
打算もなく見栄もなく、その日その日の出来事や一緒に居る時間を大切にして、明るく楽しく生きている、マーリとチャチャと森の仲間たち。素朴な日常の風景の中にさりげなく散りばめられているのは、『楽しいことは友達と一緒だともっと楽しい』とか『自分は自分のままでいいんだ』とか、誰もが大事なことだとわかっていて、でも普段は忙しさに紛れて忘れてしまっていたりする――それに気付いたら、ありきたりの日常もいつもよりずっと明るく輝いて見える――そんな『生きる』ことの本質ともいうべきメッセージです。
ライトノベルというより児童文学と申し上げたくなる良作だと思います。現代社会の雑踏に疲れて、ふと立ち止まってみたくなった時などに、是非。