幼馴染と再会したらNTRていたけど、それでも君を――愛している

藤本茂三

第1話 幼馴染との再会!


「あの元気な爺さんと婆さんが、まさか殺されるなんてなぁ……」


 生前住んでいた朝倉零士の祖父母が住んでいた家に、零士は一人暮らしをしていた。幼少のころは元気に駆け回っていた家の中もシーンとしており静かで寂しさを感じる。


「騒がしすぎて爺さんに怒られたりしていたっけなぁ……」


 数年顔見ていなかった祖父母の懐かしい思い出に浸りながら、朝食のパンを食べていた。アメリカ暮らしが長かったせいで、主食が米からパンに変わっていた。ニュース番組を見ながら、左上の時刻をチラリと見る。


「そろそろ時間か……行くとするか」


 本日は零士の転校初日であり、担任から早く学校へ来るようにと言われていたので早めに家を出ることになった。パジャマ姿から真新しい制服へ着替えて、鞄を持って玄関へ向かう。


「じゃあ……いってきます」


 返事のしないリビングに向かって言う。それは儀式のようなもので、誰もいないことは頭では分かっていても、心の中では誰かいるような気がしているから零士は家を出る度に言っていた。


****


「なんだか久しぶりだなぁ……色々と変わって……特別都会っていうわけでもないけど、商店街も潰れて大分寂れたような……」


 アメリカから帰国してきた朝倉零士は、小学生の頃まで住んでいた地元の周りをのんびりと散策していた。十年以上の時間が経過すれば人も変わるなら街並みも変わる。零士が祖父母と一緒に行っていた商店街も寂れてしまって数店舗しか経営していない状況だった。


「改めて、ここが俺が暫く通う高校か……」


 街並みと同様に特質のない高校であった。新校舎でもなく古さを感じさせる外観と大きくないグラウンドだ。公立高校でもあり特別学力に秀でているわけでもないのだから、致し方ないのかもしれない。一度来た事があるため、校内を迷うことなく職員室へと向かった。学生はまだ来ていないため校内も静かであった。


――コンコン


「は~い」


「失礼します」


「あ、君が朝倉零士君……よね?写真よりも凄く身長高いし……それにハンサムだね。一年間……もないが、よろしく」


「ありがとうございます。こちらこそ、こんな時期に転校して色々とご迷惑をお掛けしたかと思います。卒業までよろしくお願いします」


 零士の担任は、体育教師であり握手をしてお互い挨拶をする。そして少しの雑談をしてくるあたり、零士の緊張の糸を解こう気遣いなのだろうなと考えた。


「じゃあ、そろそろ時間だな…。自己紹介の内容を考えたか?」


「いえ、特には考えていませんね」


「おいおい、しっかりしてくれよ?」


 零士が教室のドアの前まで案内されて、先に担任が教室へと入る。零士は呼ばれるまで、ドアの前で待機である。一分ほど時間が経過すると「いいぞ」と教師に呼ばれたので、零士は教室へと入った。好奇心、品定め、様々な感情の籠った視線が零士へと向けられた。


「はじめまして、朝倉零士です、よろしく」


 大事な自己紹介が、とてもそっけないものになってしまっていた。それでも零士の容姿の高さから女子受けは、かなり良くキャーキャーという歓声が上がっており教室全体が少し騒がしいものになっていた。


「じゃあ、席は窓際のいちばん後ろだな」


「はい」


 零士は指定された座席の方を見ると隣には集団にいても一際目立つだろう女子生徒がいた。非常に整った顔立ち、芸術品のような綺麗な長い黒髪。制服の上からでもわかるモデル顔負けのスレンダーボディにも関わらず、ブレザーを着ていてもハッキリと分かる豊満な胸。男の理想を具現化した美少女であった。


(この人……どこかで……)


「よろしく……えっと……」


「私は青木美緒、こちらこそよろしくね」


――ドキッ


 まるで心臓を鷲掴みにでもされたような感覚だった。アメリカで心の支えになっていた幼馴染が目の前にいるのだから。小学生の低学年の時からも綺麗な女の子だとは思っていたが、零士の想像を遥かに超える美少女へと変貌していた。


「クスッ、どうしたのかしら?」


「あぁ……いや、何でもない」


 ジッと見つめる零士に、くすくすと笑ってくるのと周囲の視線からか少し恥ずかしくなり彼女の顔を見ることが出来なくなり、仕方なく外の景色を眺めることにした。

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