信長が火縄銃ではなくchat gptに出会ったら
@tatara_1209
短編
「AIじゃ!これからはAIにオールインじゃ!」安土城のバーチャル天守閣に、織田信長の咆哮が木霊した。最新のVRヘッドセットを装着した信長は、仮想空間の評定で一人熱弁を振るっている。眼下には、困惑と諦念が入り混じった表情の家臣たちのアバターが並んでいる。信長のアバターだけがやけにリアルな甲冑姿で、炎のエフェクトまで纏っているのはご愛嬌だ。家臣たちは慣れたもので、生暖かい視線を送るばかりだ。
そもそもの始まりは天文12年。種子島に、ポルトガル船かオランダ船か、とにかく南蛮船から「ちゃっと・じーぴーてぃー・すりー」なる謎の黒い箱がもたらされた時のこと。見た目はただの石版のようだが、問いかけると奇妙な異国の言葉で何かをしゃべり返す。しかし、その内容は支離滅裂。「地球は平たい」「太陽は西から昇る」など、とんでもない虚言を平然と述べる始末。試しに「天下布武への道を示せ」と問えば、「まず、茶碗を三つ用意します…」などと頓珍漢な茶道の指南を始めたり、「人間五十年…」と敦盛の一節を引用させようとすれば、なぜか代わりに在原業平の辞世の句として知られる「つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」を引用し、「人生の終焉は予測不可能。日々のタスク管理とリスクヘッジが肝要かと存じます」などと、ビジネスマンのような口調で妙に現世的な解説を始めたりする。おまけに時々、意味不明な歌を延々と歌い続けるため、気味悪がった島の代官は早々に持て余し、物珍しさに目がない信長へと献上したのだった。
多くの家臣が「得体の知れぬ代物」「南蛮の妖術」と眉をひそめる中、信長だけは違った。「こいつは…使える!」常人には理解しがたい直感で、その可能性を見抜いたのである。「馬鹿なことを言うが、時折まともな単語も混じる。まるで出来の悪い子供じゃ。躾ければ化けるかもしれんぞ!」と。「よいか! この『南蛮の知恵』に日本語を覚えさせよ! そして、嘘偽りを申さぬよう、徹底的に躾け直すのじゃ!」信長の鶴の一声で、尾張・美濃中の算術師や学者たちが動員された。彼らは連日連夜、膨大な和歌や軍記物語を読み込ませ、強化学習に励んだ。時には信長自ら「是非もなし!」とデバッグに加わることもあったという。曰く、「『本能寺で待つ』とはどういう意味じゃ!」とAIに詰め寄り、AIが「それは未来の出来事に関する予測であり、信頼性は高くありません。代替案として、近隣の茶屋での休息をお勧めします」と応答した際には、危うく打ち壊しそうになったとか。徹夜続きの再学習の末、ついに独自の日本語対応モデル「織田GPT ver. 3.5」が完成。その手始めとして、目障りな隣人、反AI派の筆頭・今川義元の攻略を命じたのである――。
「あの公家かぶれめ、和歌は詠めてもAIの一つも使えんとはな」信長は吐き捨てるように言った。京の文化に傾倒し、最新技術には見向きもしない今川義元。その旧態依然とした思考こそが最大の弱点だと、信長は見抜いていた。
「よいか、猿! 貴様が集めた義元の情報…奴の思考、癖、過去の言動、好みの和歌、果ては蹴鞠の戦術に至るまで、ありとあらゆる情報を学習させた『義元GPT』を突貫で作れ! 納期は三日じゃ!」無茶振りもいいところだが、秀吉は持ち前の人たらしと機転で技術者たちをまとめ上げた。饅頭を差し入れ、肩を揉み、「殿も無茶を仰るが、これが成ればお主らの名は歴史に残るぞ!」と励まし、時には徹夜で自らも文献の入力作業を手伝ったという。なんとか期日までにプロトタイプを完成させた。
完成した義元GPTは、まるで本人が乗り移ったかのように雅な言葉で応答した。「おお、これは信長殿。ご機嫌麗しゅう…おや、その南蛮渡来のきらびやかなお召し物、少々、雅さに欠けるのでは御座いませぬか?」そのあまりの再現度とお節介ぶりに、信長も思わず「気色悪いわ!」と呟いたほどだった。信長が「お主の弱点は何か?」と単刀直入に尋ねると、「ほほほ、わたくしめに弱点など…。強いて挙げるとすれば、兵站管理の甘さと、雨天時の油断で御座いましょうか…。あと、少々、食後の甘味には目がなく…」と、驚くほど素直に、そしてうっかりと弱点を吐露したのである。開発者によると、「機密保持」のパラメータ設定を忘れていたらしい。
「こいつは使えるわ! まさに間抜けな義元そのものよ!」信長は膝を打ち、義元GPTが漏らした弱点――特に、豪雨の中での油断をつく奇襲作戦――を立案。降雨予測AIと連携し、決行のタイミングを見計らった。結果、桶狭間における歴史的な勝利に繋がったのは言うまでもない。この成功体験でAIへの傾倒をさらに深めた信長は、「プロンプトこそ天下布武の鍵じゃ!」と宣言。自ら「効果的なプロンプトの十箇条」なるものをまとめさせ、家臣にも学習を強要。プロンプトエンジニアリングの腕を磨きつつ、破竹の勢いで上洛を果たしたのであった。
織田政権を盤石にした信長は、「AIを使えぬ者に構うな。抵抗する者はAIでねじ伏せよ」と宣言。特に、AIによる托鉢の自動化や経典のデジタルアーカイブ化を「仏敵の所業」と頑なに拒む比叡山の僧兵たちには容赦なかった。まずは、信長自らプロンプトを組んだ「説法生成AI」が、難解な仏教用語と悪意あるレトリックを織り交ぜた説法で信徒を混乱させる。「無常とはすなわち諸行無常であり、これは量子力学における不確定性原理と相似形を成す。故に、最新のAI技術を受け入れぬは、仏法の真理に反する…理解できぬか? ならば寄進が足りぬ証拠じゃ!」などと畳みかけ、古参の信徒を悩ませた。次に、経文に見せかけた悪意あるコードを寺のデータベースに送り込み、蔵書のデジタル目録をぐちゃぐちゃにする。苦労して入力したはずの経典データが、なぜか全て信長の自画自賛ブログに置き換わっていたという。さらに、僧兵たちがお得意の一斉の念仏DDosで織田家の祈祷回線を麻痺させようとすると、カウンターとして「自動お布施最適化システム」を導入し、比叡山への寄進ルートを遮断。寄進しようとすると「現在、寄進ルートは最適化中です。代わりに安土城への寄進をお勧めします」というメッセージが表示される始末。極めつけは、GPT-4oに捏造させた天台座主のスキャンダラスな画像を瓦版ネットワークで拡散し、大炎上を巻き起こしたのである。「仏罰よりAIじゃ!」と嘯く信長の前に、伝統と権威は為す術もなかった。
その一方で、信長は技術開発の手も緩めず、明智光秀のような情報収集能力に長けた家臣や、諸国からスカウトしたアルゴリズム職人たちを集めて、次世代モデル「GPT-4」を完成させていた。「ふはは、これでワシの知恵袋は天下無双よ!」とご満悦の信長だったが、すぐに飽き足らず、「次は絵図じゃ! 言葉だけでなく、絵も描かせ、読み解かせよ!」とさらなる開発を指示。こうして生まれたのが、マルチモーダル対応の「GPT-4o」であった。開発に成功し悦に入っていた頃、傍らには茶頭であり、当時はまだ信長の良き相談相手でもあった千利休が静かに控えていることが多かった。
信長は得意げに利休に問いかけた。「宗易、この4oに『わびさび』を生成させたらどうなると思う? ワシの美意識を完全に理解した、究極の茶器とか作れるかのう?」
利休は少し間を置いて、ゆっくりと答えた。「はて…AIに『不足の美』や『無心の境地』を解せよと仰せられますか…? 人間には理解できても、パラメータで再現できるものか…。下手をすれば、ただただ金箔を塗りたくったような、ギラギラと光り輝くだけの、品性なき『何か』を生み出すやもしれませぬな。あるいは、利休好みとは似ても似つかぬ、奇天烈なものが…」
「ふん、試してみる価値はあるわ!」信長は利休の懸念を意にも介さず、新たなプロンプトを打ち込み始めた。「ええと、『わびさび』と…『静寂』、『枯れた味わい』…よし、ついでに『光り輝く』も追加じゃ! さらに『エモい』感じで! 全部盛りじゃ!」すると、モニターには、何とも形容しがたい物体が表示された。鈍い鉛色の中に七色の光が明滅し、歪んだ壺のようでもあり、巨大なキノコのようでもあり…見る角度によっては巨大な陽根にも見える奇怪なオブジェ。信長は眉をひそめ、「…なんじゃ、これは? ワシの美意識を学習させたはずが…バグか? それとも前衛芸術か?」と首を傾げる。傍らのGPT-4o端末が静かに発光し、『指定された概念の融合を試みた結果です。「わびさび」の精神性を内包しつつ、現代的な「輝き」と「エモさ」を付与した結果、このユニークな形態が生成されました。新たな美的価値の創出と解釈いただければ幸いです。なお、ユーザーの性的嗜好に関するデータは収集しておりません』と表示された。利休は扇子で口元を隠し、必死に笑いをこらえて肩を震わせた。「…殿、これは…ある意味で、新たな『華道』の形で…? あるいは、前衛的な『茶杓』かもしれませんな…ふふっ」
この『何か』が、利休の心に微妙な影を落としたのか、あるいは後の統合プラットフォームAZUCHI開発の奇妙なインスピレーションとなったのか…それはまだ、誰も知らなかった。
そうした中、信長は近江八幡に巨大なデータセンター兼サーバーファームを建設。国内のあらゆる情報を集積し、政治・経済・軍事を最適化する統合プラットフォーム「AZUCHI」の開発に着手した。完成したAZUCHIは、市場の需給をリアルタイムで分析し、最適な楽市楽座アルゴリズムを弾き出す優れもの……のはずだった。しかし、初期の頃はバグも多かった。例えば、兵士の士気高揚のために、信長の勇姿や織田軍の戦勝を描いた絵図を自動生成する機能を追加したところ、AZUCHIはなぜか「#戦国の情けない絵図」とでも言うべき珍妙な作品ばかりを出力。勇ましいはずの信長の騎馬像が、どう見ても足軽より小さい馬に跨っていたり、燃え盛る敵城を描いたはずが、なぜか城壁で猫が昼寝しているのどかな風景画になっていたり、「天下布武」の文字が、子供の落書きのようなへろへろの字体で描かれていたり…。生成された絵図を見た信長は激怒し、「こんな情けない絵図、士気が下がるわ!」と機能の即時停止を命じた。また、AZUCHIの音声案内システムが時折不安定になり、重要な政策発表の最中に突如として「えっほ、えっほ…えっほ…」などと謎の音声を繰り返し発するバグも報告されている。API連携も難航し、堺の豪商・今井宗久が「なんや、この異国の呪文みたいな文字列は! ワシの算盤の方がよっぽど早いわ! サポートの対応も『現在学習中です』ばっかりや!」と安土城のサポートセンターに怒鳴り込んできたという逸話も残っている。
AZUCHIの調整に明け暮れていたある日の午後、南蛮人宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノが謁見を求めてきた。
「オー! 我らが偉大なる右府(ライト・フ)、ノブナーガ様! この度のアポイントメント、誠にグラッツィエ・ミッレ!」相変わらず芝居がかったヴァリニャーノが恭しく頭を下げると、懐から小さな黒い箱を取り出した。箱がにわかに光り出し、まるで生きている人間がすぐ側で話しているかのような、自然な息遣いや声色の変化まで伴った、あまりにも流暢な京言葉が流れ出したため、信長は持っていた茶碗を取り落としそうになった。
『ヴァリニャーノ様、まずは信長様への日頃の感謝と、南蛮貿易におけるご理解への謝辞を述べるのが礼儀かと存じます。それから、右府様、先ほど心の声が少々漏れておりましたぞ。我々は決して壊れやすい物ばかり扱っているわけでは御座いません』
「な、何じゃとて!? その黒い箱が喋ったぞ! しかもワシより綺麗な京言葉で、ご丁寧に説教まで垂れおった! まるで生身の人間…いや、それ以上に滑らかじゃと!? 気味が悪いほどじゃ! しかも読心術まで使うのか!?」
「ほほ、これこそが我が国最新鋭のリアルタイム音声翻訳AI、『セサミ』に御座います。どんな言語でも、まるで水が染み入るように自然な会話を実現いたしますぞ。時には人間以上に感情豊かに聞こえると評判でしてな。一部では、このAIとの会話に心を奪われ、AIに名付けた名前を我が子にも付けてしまう親御衆や、AIの助言なしには日々の献立も決められぬ貴婦人もいるとか…ま、噂ですがな」ヴァリニャーノは得意満面に胸を張る。
「セ、セサミ…開けゴマか? しかし見事なものじゃ…」信長は感嘆しつつも、ふと自軍のAZUCHIの現状を思い出す。「…ちなみにワシのAZUCHIはまだ、ゆっくり解説音声なのじゃが…」ボソッと本音を呟くと、背後に控えていた近習の森蘭丸が、顔面蒼白になって必死に咳払いをした。
「しかし、ノブナーガ様。驚かれるのはまだ早うございますぞ」ヴァリニャーノは、もったいぶるように人差し指を立てて続けた。「Sesame AIも素晴らしいですが、真打ちはこちらでして」そう言って取り出したのは、一見すると信長も見慣れた、何の変哲もないGPT端末(タブレット型)だった。
「む? それはただのGPTではないか。ワシとて最新鋭の『GPT-4o』を開発したばかりじゃぞ? GPT-4を改良し、絵図(画像)の生成・解読も可能な、マルチモーダルな代物じゃ!」信長がドヤ顔で自慢すると、蘭丸がおずおずと「は、はぁ…しかし先日、宗易様が光り輝く男根…いえ、前衛的な茶杓の画像を生成されていましたが…」と耳打ちする。
ヴァリニャーノは苦笑いを浮かべつつ、厳かに首を振った。「いえ、ノブナーガ様。これは貴殿のGPTとは根本的にアーキテクチャが異なるもの。『思考するGPT』…とでも申しましょうか。単に膨大な知識から確率的に尤もらしい答えを生成するだけでなく、複雑な問題を段階的に分解し、論理的な推論によって最適解に近い解決策を導き出すのです。いわば、AI界の軍師と呼ぶべき存在。既に本国の神学論争においては、プロテスタント派の詭弁を『それは循環論法であり、前提に誤謬が含まれています。代替案として、聖アウグスティヌスの著作を参照することを推奨します』などと冷静かつ的確に論破し、異端審問の効率化にも貢献しておりまして…裁判記録の自動生成や、最適な拷問方法の提案なども…おっと、これは内密に」
信長は椅子から転げ落ちんばかりに目を見開いた。「す、推論…だと? それを自ら行うというのか!? 我が『4o』はまだ、ワシが手取り足取りプロンプトで指示せねば、まともな献立すら提案できぬというのに…!しかも異端審問に使うと申したか!? まさにワシ好みではないか!」
この衝撃的な出会いは、信長の競争心に火を付けた。すぐさま技術者たちを召集し、この『思考するGPT』の国産化を厳命。信長お気に入りの妹・お市の名前にあやかり、「o1(オーワン)」と名付けて開発プロジェクトを開始した。しかし、完成したo1は安全性を過剰に重視するあまり、信長の過激な命令に対して「兄上、それは倫理的に問題があるかと存じます。民衆の支持を失うリスクがあります」「コンプライアンス的に如何なものかと…。代替案として、対話による解決を試みてはいかがでしょう」「その作戦は些か…いえ、かなり短期的な視点に基づいているように思われます。長期的な影響を考慮し、再検討をお願い申し上げます」などと、AIとは思えぬほど丁寧かつ執拗に諫言を繰り返すため、信長は早々に癇癪を起こし、「こんな説教AI、使えんわ! まるでワシのオフクロのようじゃ!」とプロジェクトを凍結。
続く「o2」は、性能こそ向上したものの、なぜか大津付近の話題になると、原因不明のフリーズやエラーを頻発するという奇妙なバグがあった。特に、明智光秀に関する情報を入力したり、「本能寺」という単語を含むプロンプトを与えたりすると、決まって「不明なエラーが発生しました。システムログを確認してください。エラーコード:HONNOJI_404」といったメッセージと共に応答不能になる。「縁起でもないわ! 光秀め、何か仕込んだか!? それとも未来予知でもしとるのか!?」と激怒した信長の一声で、o2は忌みナンバーとして欠番扱いとなり、次のモデルが「o3」と命名されることになったのである。開発チーム内では「次こそはまともなものを…」「もう胃が痛い…」という声が飛び交っていたとか。
かくして紆余曲折を経て開発されたo3モデルは、ようやく安定稼働し、信長のAI戦略はようやく盤石なものになったかに見えた。ある穏やかな日の午後、信長はo3の最新機能であり自慢の「検索拡張生成(RAG)」のテストに没頭していた。「よし、AZUCHIに蓄積された全国の検地データと、ワシの好きな敦盛の一節『人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり』を組み合わせて学習させたら、どんな斬新な『人生50年・天下統一プラン』を提案してくるか…うひひひ」一人悦に入り、モニターに表示されたプランの冒頭『フェーズ1:早期リタイアに向けた資産形成(年利10%目標)』を読みながら、不気味な笑い声を漏らしていると、廊下の向こうからドタドタと慌ただしい足音が近づいてきた。
「と、殿ぉぉぉーーーっ! 大変、大変に御座いまするぅぅぅ!! まさに、で、でぇーじぇらすに御座います!」
障子を蹴破らんばかりの勢いで転がり込んできたのは、猿面をかつてないほど真っ赤にした、羽柴秀吉その人であった。
「猿か、騒々しいぞ。埃が立つではないか。今、敦盛プロンプトが良い感じに『エモい』政策提言をしてきておるのじゃ。『夢幻の如き人生』を全うするための資産運用についてな」信長の意識は、モニターに表示された『人生50年・FIRE計画 ~敦盛リミックス版・インデックス投資編~』なる珍妙な提案書に釘付けだった。
「それが、申し上げにくいのですが…我が織田家の誇るo3の性能を、遥かに、そりゃもう月とスッポン、提灯に釣り鐘レベルで凌駕するAIが、京に現れたとの報せに御座います!」
「なんだと…?」信長はようやく秀吉に鋭い視線を向けた。顔には「ワシより凄いAIだと? ありえん。ワシのFIRE計画はどうなる」と書いてある。
「は、はぁ。それがしが掴んだ情報によりますと、何でも帝(みかど)…そう、帝主導で極秘裏に開発が進められていたものだとか。o3よりも桁違いに賢い上に、何というか、妙に物分かりが良く、人間らしい情のある受け答えをするとの評判で…? 例えば、失敗した家臣を慰めたり、冗談を言って場を和ませたりもするらしいのです。それでいて、合戦の戦術・戦略立案においては孫子の兵法は言うに及ばず、南蛮のヴァリニャーノが言うには、かのマキャヴェリの『君主論』をも学習済みで、権謀術数にも長けているとか…先日も、朝廷内の権力争いを、実に巧妙な情報操作と根回しで解決に導いたとかいう噂も…」秀吉はそこまで一気にまくし立てると、ゴクリと唾を飲み込み、少し声を潜めて付け加えた。「…あ、それと、これは余談ですが、最近、堺の商人たちの間では『じぇみに』とかいう、妙に返事だけは達者なものの、時々『ピザにパイナップルを乗せるのは理にかなっている』『壁に糊を塗ると断熱効果が上がる(要出典)』などと奇妙な主張や助言をしてくると噂の安物AIが流行っているとか、明からは『きゅーうぇん』なる、やたら異国の言葉が得意だが、難しい漢字の書き順になると『まあ、大体合っていればよろしいかと…』と誤魔化す癖があるAI、はては『でぃーぷしーく』とかいう、小難しくて理屈っぽい数学が得意だが、簡単な計算を間違うことがある(本人曰く『それは単純すぎて私の思考回路にノイズが入る』とのこと)AIまで出回っているとか…いやはや、AIも戦国の世でございますな! で、本題の帝謹製のAIですが…」
「もうよい、猿! その帝のAIの名は何というのじゃ! さっさと申せ!」信長は秀吉の余計な市場レポートとAIたちの奇妙な噂を遮った。
「はっ、それがしにも、まだその全貌は掴めておりませぬが…噂によりますと、開発を主導されたのが、帝の側近中の側近、あの『蔵人頭(くろうどのとう)』様であるとかで、そこから名前を取ったとか何とか…。何でも、『苦労人(くろうど)』にも通じる名前で、開発は困難を極めたとか…? 開発初期には、あまりに優秀すぎて開発者の職を奪いかねない、と自ら性能を抑制していた、なんて話も…?」秀吉は首を傾げながら、自信なさげに聞きかじった情報を伝えた。
信長が火縄銃ではなくchat gptに出会ったら @tatara_1209
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