第1話 ふたたびの、黄金週間。
ここにことばを書き始めて
もう一年も経つのです。
わたしの大きらいな
金ぴかには全くもってなれもしない日々が
やっぱり、今年もなにかを急かすように
やってきてるじゃないか
そこらへんに人と車がわちゃわちゃしていて
家族とか恋人とか友達とかの
笑い声やら叫び声がクラクションに混ざって
わんわん反響しまくっていて
グルメと戦争が四角い箱の中で
パタパタ漫画みたく交互に入れ替わっていて
死ぬ前の走馬灯を見せられているような
重力がよくわからなくなるこの奇妙な嫌な
黄金の日々が
やってきてるじゃないか。
そうか。
還暦になる手前のわたしが
詩人を名乗りギリギリに息を吹き返してから
あれからもう一年という人間時間を
生き延びたことになる。
しみじみなような
他人事のような。
あれからの延長上の同じ時間軸に
いるようには思えないくらい
いろんなことが入れ替わったし
なにより、何十年も住んでいたところとは
違う場所に住んでいるし
なんだか
ひょっとしたらわたし自身がもう
全く別の人間に入れ替わったんちゃうん、みたいな
パラレル感があったりで
とりあえず時間の流れが
一定ではなくなっていて
のろのろしていると思うと
急にワープすることもあったりで
結局一年分が五年分くらいに
ストーリー的にも濃かったような気もするから
よせばいいのに血迷って鏡を見て
わああ誰だこれは
このしみとしわだらけの老婆は誰だって
毎度出川並みにおどろくわたしのリアクションを
辛抱強く見張っていた猫すら出川以上のリアクションで
どこかへすっ飛んで逃げてしまって
そうか。
ふむふむ。
わたしはあのとき、やっぱり一回
死んだのだな。
一年経って、こたえをみつけた。
一年前のこの最悪な週間に
あらたなとんでもない糞婆として
しみしわだらけになってもなお、
この妙ちくりんな時の狭間に揺さぶられながら
どんなふうに踊るのかを試されるべく
産み落とされてしまったのだな。
よりにもよって
このクズみたいな黄金週間に。
死にたい若い人たちは
この糞婆の奇妙奇天烈なダンスを見て!!
おなかがちぎれるくらい笑えるから
バカじゃないのって腹が立つから
可哀想すぎて涙が出るから
でもって
次のダンスがきっと、楽しみになるから
ねえ神様。
どうせ命をもらえるのなら
せめて40くらいの糞婆なら
まだいくらか、
格好よく踊れるんだけども。
ぼそ。
死にたくなったあなたへ。 御願崎冷夏 @uganzaki
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