こんにちは喪女です

@159roman

こんにちは喪女です

 「こんにちは喪女です」


 いえ、ここは淑女らしく


 「ごきげんよう喪女です」


 由緒正しい喪女です。

 筋金入りの喪女です。

 前世から続くエリート喪女です。


 自分で言っててちょっと悲しくなってきましたが、

とにもかくにも喪女です。



 ウォード子爵家に生まれた私ことローザは、

物心ついた頃からじわじわと前世を思い出し大人の記憶と知識を持ちつつ、

子供の体に引っ張られてか子供心も持っているちょっと変わった女の子です。


 独り言が多いのは前世からの癖ですの「オホホホ」



 さて、異世界転生した喪女の私の最大の娯楽は

人様の恋愛模様を観察することだったりします。


 口に出さないだけで同じ趣味の人はたくさんいると思うのです。

 異論は認めます。

 

 両親、兄、姉、使用人などなど、

老いも若きもどの恋愛も美味しいです「もぐもぐ」


 お茶会で奥様達の噂話を遊んでいるふりをして聞き耳を立ててみたり、

使用人同士の恋愛事情にほっこりしたり。


 なかでも一番ドキドキするのがボーイミーツガールな年代の恋模様。

 甘酸っぱい!


 10代の青少年の場合、女子の方が精神年齢が高いのはこの世界でも必定。

 淑女教育のたまものかスンとした女子と比べて、

ちょっとした触れ合いや足首が見えたくらいで赤面したり挙動不審になる男子。

 

 ほっこりニヨニヨしながら現代日本の前世記憶持ちの私が、

この世界にはグラビアもないし貴族女性はあまり肌を見せない服装をするのがマナーだから、

ほんの少し見えただけでも刺激的なのねぇ、と完全他人事「うふふ」


 ミニスカートなんて見たら卒倒するんじゃないかしら?なんて

高みの見物で勝手な考察をしていた時期がありました。




 「ハゥア」 「ピ」 「ヒョエ」

 さてこれらは何の鳴き声でしょうか?

 正解は「私です」


 12歳になり、私に婚約者ができました。

 貴族ですからね。

 政略結婚もやむなしです。


 前世よりかーなーり美少女だけど貴族令嬢としてはほんのり地味なわたくし。

 ほんのり!ここ大事です!


 婚約者のハリー様は銀髪に碧の瞳が美しい輝くばかりの美少年「眩しい!」

 伯爵令息のハリー様は子爵令嬢でほんのり地味な私にも紳士的に接してくれます。

 非常に紳士的に……


 なんなのですか? 

 髪の毛にキス。エスコートの際に手の甲にキス。指先にキス。

 そのたびにワタワタしたりタジタジになったり喪女には刺激が強すぎますぅぅぅ


 喪女の私にとって恋愛は他人事のほうが楽しいようです。

 他人事が圧倒的に楽しい(小声)


 今日も婚約者様の美しすぎて発光する顔面と紳士の嗜みという猛攻に


 「ハゥアァァァ」 「ピィィィ」 「ヒョェェェ」


 と、赤面しながらワタワタタジタジするのでありました。



 ちょっと、そこのあなた!生温い視線を送らないでくださいませ。



 婚約者と友好を深めるお茶会を終え、人払いした自室で独り言ちる。

やり場のない羞恥心にベッドの上でひとしきりゴロンゴロンと転がり、気持ちを落ち着ける。

 

 深呼吸して、徐に立ち上がり渾身のカーテシーを決めた私の独り言の締めくくり。




 「喪女です。それでは、ごきげんよう」






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