怒張憤ゲツ
.六条河原おにびんびn
第1話
「綺麗な風景を作り出すのに、汚く咲いたものとかをね、間引いていくの、見ちゃったんですよ。自然は美しいって絶対ウソです。ダニとかノミいて、ミミズがのたくって、色々な死骸の上を歩いているんですよね。それって自然っていうんですか?不自然っていうんじゃないんですか。もう分かりません。何が花鳥風月だ。ロイヤルミルクティーの名前にでもなってろよーって思ったんですよ」
「みなさんだって、美しいモノを作るとき、そこに強制参加させられていたら、間引かれる側なんですよ。自覚してください―というわけで、ボクが美しいモノを作ってやろうと思ったんです」
彼はまだ10代半ばといった年頃の少年で、この街に巨大な大樹を召喚し、大都会を森に変えようと画策していたところを捕縛された。月を撃ち落とした指名手配犯である。今は月のジェネレーターを使用して事なきを得ている。
「いいですか。人間は爪も牙もなくて、道具を作り出すように発達してるんです。そうしたらもう自然じゃいられないんですよ。ネコとかもう捕獲しきれないくらい繁殖させちゃって、かわいけりゃなんでもいいとばかりに自然界でいったら奇形としかいいようなくてカラダに負荷のかかる犬を作ったり、その辺のドブにはいるはずなかったものまで放流して増殖させたじゃないですが。そこまではいいです、人間至上主義最高!ですからね。クマさんを撃ち殺すことにもボクはそこまで反対じゃないです。人間至上主義最高!ですからね。だけど、中途半端なんですよ。それで何が自然は美しい!フォトグラ映え~!ですか。罪滅ぼしのつもりなんですか?コンクリートジャングルにしちまえよ。資源使いたい放題使っちまえよ。青玉がダメになる頃、お前等なんか生きてねぇだろ!」
少年は苛立ちを隠さず、貧乏揺すりをやめなかった。
「不自然で俗物大好きな人間も含めて自然とか言い出す気なんでしょ。いいですよ。それならこのまま自然になりましょう。みなさん、自然、大好きですもんね。共存ではなく共生しましょう」
少年はにたにた笑いはじめた。彼の左側の頭部が歪んでいく。頭を軋ませ、首が
こうして、この街の人々は全員、頭から角のように大樹を生やしている。ダニが跳び、蝶が舞い、鳥がフンを落とし、涼しい風が吹いて草花がそよぐ。月のジェネレーターは今日も煌々と夜を照らしていた。
<2021.7.19>
怒張憤ゲツ .六条河原おにびんびn @vivid-onibi
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