第37話

“That said, what is it you want?”

[それで、なんの用件ですか?]

即席射撃訓練場の片付けを山永が手伝っていると、ルリから尋ねられた。

"I want to maintain my heavy machinegun, but I don't have maintenance tools. So Please lent me them and help me maintain it."

[重機関銃整備したいんだが銃手入れ具がないんだわ。手入れ具借りられねぇかな、あと整備手伝ってくれない?]

ルリは薬室点検しつつ、

“I see. In that case, that’s fine.”

[そうですか。それなら構いませんよ]

“Sorry to bother you when you’re tired.”

[疲れてるのに悪いな]

“No need to worry.”

[お気づかいなく]

そう言うとルリはべちゃべちゃのアーマーを着ようとする。

"Hey, Luri, It's too wet to wear it. I'll carry your backpack. So carry the armor by hand."

[なあルリ、そいつはベチャベチャで着らんねえだろ。俺がリュック持つからアーマーは手で持ってけよ]

“If you’re offering, then I’ll ask you to carry the backpack.”

[そう言って貰えるなら、バッグはお願いします]

山永は人型的を小脇に抱えてルリのバックパックを左肩に背負う。

"Where should I take them?"

[どこ持ってきゃいい?]

“The target goes to Warehouse Five. Please follow me.”

[的は5番倉庫です。ついてきてください]

機関銃とアーマーを持ちながら、目の前の倉庫にある人通行用扉を開けるルリ。言うて彼女もフルリムなので重量のある装備を軽々運んでいる。

“Go ahead. There’re other targets of the same type in the back right. Line it up next to that.”

[どうぞ。入って右奥に同型の的が置いてあります。そこに並べてください]

"I got it."

[あいよ]

奥の方に雑然と的が立ててある。日本人からするともうちょっと綺麗に並べられないものかと思ってしまうが、まあいいや、とりあえず置いとけとポンと近くに置いておく。

"Next is the weapon and the equipments?"

[次は武器と装備か?]

“Yes.

The weapon is in Warehouse One, so let’s go back to the room and drop off the rest of the gear first.”

[ええ。

武器は1番倉庫なので先に荷物を置きに部屋に戻りましょう]

"Alright."

[あいよ]

二人で並んで宿舎倉庫に戻る。

"You'll take a shower, will you? So let's maintain them in afternoon."

[シャワー浴びるだろ?整備は昼からにしようぜ]

“Yes. I’d like to let the gear dry as well. That makes sense.”

[ええ。装備も乾かしたいので、その方が合理的ですね]

のんびり歩きながら山永が言った。

"...I like your grinding. Grinding never betrays you."

[……あんたの努力、俺は好きだな。努力はあんたを裏切らない]

“Thank you. ...But sometimes, effort isn’t rewarded.”

[ありがとうございます。……でも、報われないことも、ありますよ]

どこか暗い声で、俯きながら彼女が呟く。思わず山永は彼女に顔を向けてしまった。ルリにしては珍しく感情が乗っているようである。

"...I see. ...It will be future that you'll be rewarded. But I believe the day will come for you."

[……そうか。……あんたが報われるのは未来かもな。でも、俺はあんたにその日が来るって信じてるぜ]

そう言われ、彼女は山永を見上げた。

“...Why do you think so?”

[……なぜ、そう思うんです?]

"...Because you are honest and sincere."

[……正直で誠実だからさ]

“...That doesn’t answer my question.”

[……答えになってません]

どこか不満げなルリ。

"But, it'll be so."

[でもきっとそうなるさ]

笑いながら山永。彼女はなにか言い返そうとし、その笑顔を見せつけられてモヤモヤしながらも反論を諦めた。

“...You’re a strange person.”

[……不思議な人ですね、貴方は]

"Am I?"

[そうか?]

“Yes, you are.”

[ええ、そうです]

なぜか不満気だ。そう言われてもという顔になる山永。

"I want to be a cautious optimist.

It's meaningless that I think my life as a tragedy."

[俺は慎重な楽観主義者になりたいのさ。

自分の人生が悲劇だなんて思うとか、意味ねぇじゃん。]

ルリはそれを聞くと軽くうつむき、

“...I can’t be that clear-cut about it.”

[……私は、そこまで割り切れません]

"...I see."

[……そっか。]

色々彼女にもあったのだろう。車中で彼女の実家の話をしたときも暗い顔をしていた。自分には想像できない苦労があったんだろうなと山永は勝手に想像する。でも、勇気づけてやりたいとも思う。

"...But, at least I want you to be rewarded someday."

[……でも少なくとも俺は、あんたにいつか報われてほしいと思ってるよ]

ピクっと彼女の肩が震えた。

“That’s a difficult thing to say.”

[……そういう言い方、困ります]

うつむき地面を眺めながら歩くルリ。なんだか暗雲だ。山永はこういう雰囲気は嫌いだった。

"Hey, Luri!"

"...?"

ルリが山永を向くと、彼は拳をルリに突き出す。

"...What are you doing?"

[……何してるんです?]

また訳分からんことを始めたと渋い顔をするルリ。

"Touch my fist!"

[グータッチしろ!]

"...You are really childish."

[……ほんとに子供みたいですね、貴方]

機関銃を地面に置くと二人でグータッチ。

「うぇーい!」

なんか勝手に盛り上がる山永。

“...I don’t understand what you mean.”

[……意味が分かりません。]

"It's okay! Japanese saying, when there is nothing interesting, you live interestingly by your heart."

[いいんだよ!日本の言い回しにあるんだ。面白き、こともなき世に面白く、住みなすものは心なりけり、ってな]

にっこりしたまま行こうぜと山永。ルリは機関銃を拾い、なんとも言えない顔をする。

"At least, I feel your training is beautiful and worthy. So be proud of it!"

[少なくとも、俺はあんたのトレーニングが美しくて価値があるって思ったぜ。自信持てよ!]

山永が軽やかに歩く。ルリがそれに続く。

“...That’s not fair.”

[……そういうの、ずるいです]

そう小さく言いつつも、どこか晴れやかな顔になるルリだった。

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アルゴノームⅠ @Kdush

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