16話 灼火繚乱
「じゃあ、ダンジョンに行ってくる」
「なぁ、私もついていって力になりたいと思うんだが」
「シェリーはまだ万全じゃないだろ、それにダンジョンには冒険者登録しないと入れない。あと冒険者登録したとしてもランク差がありすぎて一緒に行けない。よって大人しくしておきなさい。そして部屋の掃除を任せる」
「くっ、殺せ」
がっくしと項垂れるシェリーを置いて家を出る。
シェリーは家事が苦手どころか一人では生きていけないほどに壊滅的だ。
幼い頃から騎士寮に入り、掃除や洗濯はルームメイトが渋々引き受け、食事は寮で出るため自炊の必要はない。
騎士になって地位が上がると見習い騎士や侍女が世話をするので、余計に自分では何もしなくなってしまう。
例えシェリーが騎士団長だろうが、ここは我が城我が領地である限りルールは我にあり。
ということで俺の家にいる間は厳しく行かせてもらっている。
まぁ、少しは上達しているから完治する頃にはもう少しましになっているはずだ。
俺が向かうダンジョンは例の如くエバーグリーンフォレストだ。
そろそろボスが攻略されそうだなんて噂もされている。
大体の冒険者は一つのダンジョンが攻略されるまで同じところに潜るもんなので、今エバーグリーンフォレストに潜ってくる冒険者の顔はほとんど覚えている。
ランクも近いし親近感が湧く。
ライバルでもあり、本当に危ないときは助け合いが必要なので自然と互いのことには詳しくなる。
もっともボスに近いのは灼火繚乱の三人組パーティだろう。
特徴は全員が攻撃特化で攻撃は最大の防御を信条に活動している。
ヒーラーもタンクもなしでは危険な気もするが、それで上手くいっているんだから誰が文句を言うというのだ。
それに彼らに比べればソロで活動している俺の方が珍しい。
大森林の中も慣れたもので割と奥まで進むことが容易になってきた。
それは地形に慣れてきたのもあるし、モンスターにも慣れてきたことが大きい。
フォレストウルフはもちろん、ワイルドボアも状況によっては倒すことができるようになってきた。
少しでも危ないと見れば逃げるのもお手のものだ。
この慣れこそが冒険者が同じダンジョンに潜り続ける理由でもある。
しかし、慣れとはいいものばかりでもない。
慣れは油断を招く。
一瞬の油断が命を散らす原因になってしまうのだ。
だからこそ最善の注意を払わなければいけない。
「んっ!?」
森の奥から激しい戦闘音が聞こえてくる。
音につられて様子を見に行くことにしてみた。
森の中ぽっかりとひらけた草地、三メートル弱の巨体に分厚く苔むした皮膚、ぼんやりと鈍そうな目が見据えていたのは三人の若者だった。
噂をすればなんとやら。
いや噂話などしていなく考えていただけなんだが、やはりエバーグリーンフォレストに潜っている一同の予想通りボスに挑むのは灼火繚乱だったか。
「ここで一気に決めるぞ!!」
どうやら戦闘も終盤に差し掛かっているようだ。
リーダーのリオネルが檄を飛ばすと共にスロウトロールに正面から突っ込んで行った。
スロウトロールは呻き声を上げて腕を振り下ろすがリオネルはそれを稲妻のように素早く動き躱して懐へと潜る。
「スパイラルトラスト!!」
リオネルのスピアの穂先が螺旋を描きスロウトロールの膝へと突き込まれる。
貫くまではいかなかったが、それと同時にパーティメンバーのルカスも反対側へと回り込み長い柄の先に片刃の刀身がついたグレイブを構える。
「ムーンリーパー」
グレイブの刃が大きな弧を描きスロウトロールの膝裏を薙ぎ払った。
両足の膝への攻撃でスロウトロールは体勢を崩す。
「任せろ、フォールンクラッシュ」
セドリックのハルバードが高く掲げられ、スロウトロールの頭部目掛けて力任せに振り下ろされた。
見事な連携でハルバードの刃がスロウトロールの頭の一部を抉ったのだが、スロウトロールはまだ立ち上がり足を地面に叩きつけた。
スロウトロールは動きこそ遅いが、体力も防御力もずば抜けており、さらに回復力まで高いときている。
生半可な攻撃では傷つかないし、多少傷を与えたところですぐに回復してしまう。
灼火繚乱はそこそこのダメージは与えたが、ここで悠長に構えていると傷が回復していくため追撃を仕掛けたいところだが、スロウトロールがクエイクスタンプで地面を揺らしたせいで動き辛そうにしている。
そして少しでも隙を見せると一撃が致命傷になりうる強大な攻撃が繰り出される。
灼火繚乱の面々もその行動パターンは頭に入っているのだろう、スロウトロールから距離をとった。
しかし、攻撃の手は決して緩める気はないらしい。
リオネルがスピアを宙に向かって連続で突くと刺突が飛びスロウトロールに襲いかかる。
地面の揺れがおさまると三人はまた距離を詰めて息も止まらぬ連続攻撃をスロウトロールに浴びせる。
クールタイムがあけると、スパイラルスラスト、ムーンリーパー、フォールンクラッシュの連携で大ダメージを取る。
それを何度か繰り返すとスロウトロールは回復できなくなり地面に倒れた。
俺がいうのもなんだが、完璧な攻略だったと思う。
その名に恥じぬ燃えるような攻撃の嵐だった。
見応えのある戦闘だったな。
俺は少しの興奮を覚えて帰路についた。
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異世界中立宣言-勇者を拒否したら神々の便利屋に!?- セフェル @sefel
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