大人の傲慢と怯懦、少年の青さと勇気
- ★★★ Excellent!!!
AI が人間の中に紛れ込めるのかテストする際に青少年が通う高校を舞台にする、そのことは大人が青少年を実験動物扱いしていることを意味します。きわどい用語を使いましたが、否めないことなのです。
そこに本作の狙いがあります。青少年が楽しく日常を過ごす様子が述べられれば平和な小説だと言い切れません。何のためにテストを実施するのか? そのテストに青少年を巻き込む理由は?
ただし巻き込まれた青少年も人であり意思があります。大人が青少年を巻き込んだことで青少年の間に波紋が広がります。
傲慢なのに怯懦な大人がテストを設定した結果、青い少年が勇気を持って立ち向かうことになります。
そして AI が加わって三者関係となります。
AI は、傲慢で怯懦な大人をどう見るか。
AI は、青くて勇気ある少年をどう見るか。
本作はシミュレーションつまり思考実験であり現実がそのように進む確約はありません。事実ではなく一つの意見です。
この意見に対して納得する読者が多いと評者は想像します。
本作が示す結果には人として納得できます。