第4話
夕暮れの街を歩き、トレイナークが辿り着いたのは、小さな木製の看板が風に揺れる宿――《旅人の羽根》。この街に来るたび、ファングや団員たちと何度も泊まった、思い出深い宿だった。
扉を開けると、顔なじみの女将の声が迎えてくれる。
「トレイ坊じゃないの。フレイムガード、抜けたんですってね。昼に団員たちが寂しそうに出発していったわよ」
「女将さん、こんばんは。ええ、自分の成長のために、この街で冒険者をすることに決めました。それで、引き続きこの宿に泊まりたいんですけど……朝晩の食事付きで、銅貨6枚でしたよね?」
「ふふっ、団長の言う通りね。強さを求めるなら、ダンジョンが手っ取り早いって。だからトレイナークはここに残るだろうって言ってね、1月分の宿代を置いていったわよ」
「えっ……! そんな……。今まで育ててもらった恩もあるのに……」
「まあ、あの人にとって、あんたは子どもみたいなもんだから。遠慮なんてしないの。昨日まで使ってた二階の部屋、とってあるから、そのまま使いなさい。一時間くらいしたら晩ご飯できるから、降りてきなね」
「ありがとうございます、女将さん」
頭を下げて階段を上がる。開けた扉の向こうには、昨日までと変わらぬ部屋が整えられていた。ナイフを机の上に置き、防具を脱ぎ、ベッドに腰を下ろす。そして、静かにステータスを開いた。
【ステータス表示】
名前:トレイナーク
ジョブ:修練者(ユニークジョブ)
レベル:1
SP:35
初期ポイントはまだ15しか使っていない。今後もゲーム通りなら、1レベルごとに10SPを獲得できるはずだ。
スキルを取るべきか、能力値に振るべきか――ダンジョン探索を前に、トレイナークは真剣なまなざしで画面を見つめる。
この世界の能力値は六種。
体力(スタミナ補正/武術スキル使用回数)
力(筋力/武術の威力やスキル習得条件)
頑丈(防御力・回復補正/武術スキル習得条件)
俊敏(速度・回避能力/武術スキル習得条件)
知力(記憶力・処理能力/魔法スキル習得条件)
心力(精神耐性・集中力/魔法スキル使用回数)
各能力値にはG-からS+までの27段階があり、G-は未強化、Gから補正がかかるようになる。G→G+→F-……と進めていき、1段階ごとに必要なSPが増えていく仕組みだ。たとえば、ひとつの能力値をS+まで上げるには28レベル分が必要となる。すべての能力をS+にしようとすれば、なんと166レベルもの成長が必要となる。
もっとも、通常のジョブはレベル上限が99とされているため、全能力の極限到達は不可能だ。だが――修練者というユニークジョブには、レベル上限が存在しない。
元ゲーマーとしては、当然カンストを目指したくなる。とはいえ、レベルが上がれば必要経験値も跳ね上がる。何より、無計画なSP配分では後々詰んでしまう危険もある。
(昔のオレは、脳筋ビルドで武術系一辺倒だったっけな……)
武術系は、体力・力・頑丈・俊敏と、4つの能力値が関係するうえ、スキルの強化にも大量のSPが必要だ。確かに強い敵と戦うには、武術系の基本能力も必要になるが――それはもう少し先の話。
今はまず、生き残る力が必要だ。
そしてそれは、魔法による遠距離戦が鍵となる。
ということで、知力と心力に10ずつSPを振り、どちらもFまで成長させる。これで20SPを消費。
(よし……あとは、あのスキルを取れば、明日からのレベル上げもはかどるな)
最強を目指す者 和屋 @sss0222
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