第3話

【第3章:初陣】


 冒険者ギルドを出ると街のなかでひときわ高い塔を目指す。


この街のシンボルにもなっていてさらに魔物の巣窟でもあるダンジョンだ。


塔の形をしているが階層ごとに内部構造は異なる

一階の内部構造は単純な洞窟型で、出現する魔物も弱い個体が多い。しかし、油断すれば命を落とす危険は十分にある。


 トレイナークはダンジョン入口に立ち、防具の留め具を締め直し、高品質のナイフを抜いた。傭兵団から受け継いだ証。手に持つだけで、不思議と落ち着く。


「よし……行こう」



 内部は薄暗く、冷たい湿気が漂っていた。だが、トレイナークは臆することなく進む。足音を殺し、気配を消すように。


(……これなら、先輩たちと山狩りに出た時と変わらない)


 そう思った直後だった。


 ――ガサッ。


 足元の岩影から、小さな魔物が姿を現した。


《スライム》


 青白いゲル状の魔物が、ぬるりと近寄ってくる。弱いが、初心者をなめてかかると不意を突かれてやられることもある相手だ。


 だが、トレイナークは動じない。


 ナイフを逆手に構え、間合いを詰め――一閃。


 斜めに切り裂かれたスライムは、ぷしゅっと音を立てて蒸発した。


 そして――。


《ドロップ:なし》

《スキル効果発動:銅貨×1獲得》


 目の前に、ひときらり光る“銅貨”が地面に転がった。


「……本当に、出た」


 トレイナークはそれを拾い上げ、思わずほっと息をつく。


(たとえドロップがなくても、確実に“金”が手に入る――)


 それは冒険者にとって、どれほど心強いか。


ゲームのようだが、ゲームではないこの世界において、金があれば衣食住を揃えられ武具が手に入り、薬が買える。そうすることで生き延びる確率が上がる。


 ただの安心材料ではない。命に直結する力だ。


 その後も彼は慎重に探索を進め、合計で6体のスライムを撃破。ドロップ品は一つも出なかったが、確実に銅貨を6枚得た。


(スキルがなければ、今日は“ゼロ”だった)


 革袋の中で鳴る、たった6枚の小さな金属音。だが、それは確かな一歩だった。


 初めての戦い。初めての稼ぎ。

 この世界に、自分の力だけで立った証。


 ギルドに戻る頃には日が傾き始めていたが、トレイナークの眼差しは以前よりも少しだけ、強く、まっすぐだった。

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