心音の共鳴
小田虹里
雨音
雨の日は憂鬱だ
そう思っていたのに
いつの日からか
雨の日こそ
心が安らぐように
はじまりはどこか
人は
いや、生命は
海から生まれたものだ
母の羊水の中で揺れた記憶が
身体に染み付いているのか
キミに振られたのも雨の日だった
だから雨は嫌いだ
苦い過去を思い出す
友達が泣きながら電話をくれた日も
雨だった
深夜すぎて駆けつけられず
友達のもとには行けなかった
卒業式も入学式も雨
雨、雨、雨
ひたすらに雨ばかり
あれほどうんざりしていたはずなのに
人は水がなければ生きてはいけない
当たり前のように水を求め
当たり前のように雨を受け入れはじめた
今ではすっかり雨の虜
雨音を聞けば心が安らぐ
人の身体のほとんどの成分が水だ
共鳴するように、心音が鳴る
ゆっくりと
ゆっくりと
いつからでもいい
今の僕には雨が必要だ
雨の日は憂鬱だけど
それほど悪くもないものだ
心音の共鳴 小田虹里 @oda-kouri
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