第1章 異世界召喚!三人のクリエイター、王都で即追放!?

 ――目の前に広がるのは、金と白の大理石でできた壮麗な大広間だった。

天井は高く、色とりどりのステンドグラスから光が降り注いでいる。

どこかゲームのオープニングのような非現実感。

けれど、足元の冷たい感触や、鼻をくすぐる香木の匂いが、ここが現実であることを否応なく突きつけてくる。


「ここ、どこ……?」

 思わず口にしたのは、nHaruka。

VRギミック職人、年齢は二十代半ば。

普段はラボで黙々と作業しているが、今は見慣れぬ異世界の王宮の真ん中に立っている。


「え、もしかして、異世界転生……?」

 隣で目を丸くしているのは、だみんちゃん。

小柄でふわふわした雰囲気の(自称)イラストレーターだ。

今日も青のツインテールがかわいい。

手にはなぜか、愛用のペン型タブレットが握られている。


「うわー、すごい場所……。でも、音響が良さそうだね」

 もう一人、にゃんにゃん。

ゆるふわ系猫の作曲家。

肩には小さな電子キーボードがぶら下がっている。


 その時、壇上にいた王様らしき人物が、威厳たっぷりに声を張り上げた。


「よくぞ参った、異世界の勇者たちよ! そなたらの力で、まもなく復活する魔王を討伐してもらう!」


 ……勇者? 討伐? なんだか話が急展開すぎる。


「そなたらの能力は何だ?」

 王様の問いに、三人は顔を見合わせる。


「えっと……リアルな影が作れます! あと、全身Grabシステムも……」

 nHarukaが、いつものノリで答えると、王宮の空気が一瞬凍りついた。


王「……?」

姫「……?」

兵士「……?」


 王様、姫、兵士、みんながポカンとした顔。


「リアル影システムはリアルタイムに高解像度な影を比較的低負荷で落とすアバターギミックです!」

nHarukaが自信満々に説明する。

「リアルな影だぞ!」

だみんちゃんがフォローする。

「そうだぞ!(笑)」にゃんにゃんも続く。


王「リアルな影……?そこからなにか召喚したりとか...」

「前髪や、顎、胸といった様々な部位の影がつくことで、圧倒的な立体感・存在感が表現できます。」

nHarukaが詳細に説明する。


「BOOTHの検索結果ではVRChat総合7位、アバターギミックでは1位なんだぞ!」

だみんちゃんがフォローする。

「そうだぞ!(笑)」にゃんにゃんも続く。


だみんちゃん「常用してると人数が多いところだと重くなるけどね。」

nHaruka「それはマテリアル数が多いのでは?確かにSetPassCall(処理負荷の一部)は約2倍になりますが、メッシュ数・マテリアル数を減らせばその分負荷は下がります。暴論ですが、半分以下にすれば元より軽くなる可能性も。」

だみんちゃん「...」にゃんにゃん「...」

王「……?」

姫「……?」

兵士「……?」



「わたし、絵が描けます! 依頼掲示板とか、看板とか、可愛くデザインできます!」

 だみんちゃんが元気よく手を挙げるが、王様は眉をひそめる。

「いや、直属の絵描きがおるし……」


「ぼく、曲作れるよ! ギルドのテーマ曲とか、盛り上がるやつ!」

 にゃんにゃんも負けじとアピールするが、王様はさらに困惑した様子。

「どうやって魔王を倒すのだ?」


王「……」

姫「……」

兵士「……」


 王宮に流れる、絶望的な沈黙。

「役に立ちそうにない。追放だ。」


 その一言で、三人はあっけなく王宮を追い出されてしまった。


---


 王都アルセリアの石畳を、三人はとぼとぼと歩く。

背後には、さっきまでいた豪華な王宮。

目の前には、活気ある市場と、遠くにそびえる冒険者ギルドの看板が見える。


「……とほほ、召喚された瞬間に追放されるとは」

 nHarukaがため息をつく。

「多分乳揺れのがよかったんだよ」にゃんにゃんが呟く。


「でも、ギルドとかあるし、なんとかなるよ! 依頼掲示板、可愛く描き直したいな」

 だみんちゃんは前向きだ。


「ぼく、ギルドのテーマ曲でも作ろうかな。なんか、ワクワクしてきた」

 にゃんにゃんも、どこか楽しそう。


 異世界の空気は、ほんのり甘い花の香りが混じっている。

通りすがりの人々は、奇抜な服装の三人をちらちら見ているが、誰も気に留めない。ここでは、冒険者や旅人が珍しくないらしい。


 nHarukaは、自分の持ち物を確認する。

なぜか、愛用のノートPCと工具セットがそのまま異世界に持ち込まれていた。

画面を開くと、見慣れた「ギミック設計アプリ」が起動する。

どうやら、現代の技術がそのまま使えるらしい。


「これ、もしかして……異世界で“現代の技術”がチートになるパターンじゃ?」

 内心、nHarukaは胸が高鳴る。


 だが、現実は甘くない。

まずは、今晩の寝床と食事を確保しなければならない。


「ギルド、行ってみようか」

 三人は顔を見合わせ、意を決して冒険者ギルドの扉を開けた。


---


 ギルドの中は、賑やかな酒場のようだった。

木のテーブルと椅子が並び、冒険者たちが談笑している。

壁には依頼掲示板があり、色とりどりの紙が貼られている。


「お前たち、何ができるんだ?」

 カウンターの奥から、ギルドマスターらしき屈強な男が声をかけてきた。


「BPPP物理演算胸揺れギミックがあります!」

 nHarukaは、少し誇らしげに答える。

「胸が揺れるんだぞ!」

だみんちゃんがフォローする。

「つかんだり触ったりすることができるんだぞ!(笑)」にゃんにゃんも続く。


「?……それ、役立つのか?」


「わたしは依頼の看板、可愛く描きます!」

「ぼくはギルドのテーマ曲、作るよ!」

 ギルドマスターは少しだけ考え込み――やがて、にやりと笑った。


「まあ、目立つのはいい。盛り上がるのも悪くない。とりあえずギルドへようこそ」


 三人は、異世界ギルドでの新たな生活を始めることになった。


---


 だが、彼らの「異世界ギミック」が、やがて王都や魔王軍にまで波紋を広げることになるとは、この時はまだ誰も知らなかった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アバターギミック職人が異世界転生!クリエイターたちのほんわかギルドライフ だみんちゃん @daminchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ