応募用あらすじ

応募用あらすじ

 大正9年。記憶喪失の少女・琴乃は、作家である英時景と「夫婦」として、女中のマサと共に帝都の外れで暮らしていた。一向に病院で目覚める以前の記憶を取り戻すことができず、時景との関係にも悩み、琴乃はやきもきする日々を送っていた。


 時景は琴乃のため「宮園家惨殺事件」について調べていた。それは琴乃が記憶を失うきっかけとなった事件だが、彼は琴乃を案じるあまり彼女にはその詳細を話さずにいた。時景は調査にあたり、友人であり新聞記者の史弥とその後輩であり宮園家の書生だった三郎の協力を得ていたが、史弥には「いい加減話した方がいい」と諭されていた。

「宮園家惨殺事件」とは、琴乃の両親や使用人たち6名が殺害された事件。事件現場にいた琴乃は唯一の生き残り。犯人像が具体的に浮かび上がらず、発生から半年以上経つのに犯人は捕まっていない。


 克治が営む喫茶ロマン堂で働く女給・テルが暴漢に絡まれていたところを助けた琴乃。それが縁で、琴乃もロマン堂で働き始めることに。二人に相談に乗ってもらいながら「自分の過去を知りたい」という気持ちが強くなっていくのを感じていた。時景に頼み、家に事件のことをよく知る史弥と三郎を家に招き、話を聞くことに。しかし琴乃はパニックを起こし倒れてしまう。目覚めた琴乃は不安を抱きつつも、見守り続けてくれる時景への恋心を自覚する。彼の「妻」になりたいを願うようになり、琴乃は「時景とは本当はどのような関係だったのか」を知りたいと思い始める。


 琴乃はテルと克治に話を聞いてもらい、時景に過去の話を聞く勇気を奮い立たせる。一方時景は、突如来訪した琴乃の元婚約者であり恋敵でもある鷹栖勇二郎と話すことで、かつて抱いた「琴乃の共に幸せになりたい」という自らの願いを思い出す。

 その晩、二人は思いを打ち明け合い、想いを通じ合わせ、身を重ねる。


 琴乃は時景から、二人が出会った頃の話を聞く。二人は女学校の「先生」と「生徒」として出会っていた。毎週のように時景の作品の感想を話にやってくる琴乃に、時景は癒しを感じ、恋心を抱くようになっていた。それは琴乃も同じだった。しかし、琴乃は女学校卒業を待たず、結婚のため退学することになってしまう。お互いに気持ちを通じ合わせていた二人は「共に幸せになる」ために、駆け落ちという手段を思いつく。しかし、駆け落ちの晩、宮園家惨殺事件が発生してしまう。病院に搬送された琴乃は記憶を失っていた。時景はそんな彼女に「自分はあなたの夫である」と告げ、たとえ記憶がなくても琴乃であることは変わりはしないと共に暮らすことを選ぶ。


 夜遅くにテルがやってくる。彼女がロマン堂の納戸で見つけたという缶箱の中には宮園家惨殺事件に関する切り抜きが大量に入っていた。おそらく克治のものだろうと話すテル。彼が事件の関係者かもしれない、そう考えた時景はロマン堂に向かうが、そこには何者かに襲われて頭部を怪我した克治が倒れていた。テルも克治を襲った犯人だと疑われ、警察に連れて行かれてしまう。


 時景は史弥と共に、ロマン堂事件と宮園家事件と絡めて情報収集に向かう。琴乃はその裏で元婚約者である鷹栖勇二郎に会っていた。勇二郎曰く、琴乃は事件の犯人であると疑われていた。しかし、彼女には事件発生時、勇二郎に会っていたというアリバイがあったらしい。勇二郎は、琴乃と時景には強い繋がりを感じたこと、勇二郎は琴乃に選ばれなかったのだと話し、去っていく。結局以前のことを思い出さずじまいだった琴乃。帰宅するが、その際何者かに襲われてしまう。


 時景が帰宅すると倒れているマサと脅迫状を見つける。多額の身代金を要求され、金策に走ろうとした時、病院にいるはずの克治がやってくる。彼は過去に琴乃に助けられたことがあり、彼女のために力を貸したいと話す。そして克治の話を聞いた時景と史弥は、一連の事件は三郎の犯行だったと確信する。


 身代金の受け渡しの際に三郎を捕まえようとするが失敗。逃走する三郎が向かったのは、琴乃が捕えられている宮園邸跡地。拳銃を向けられた琴乃は過去の記憶を全て思い出し、三郎を問い詰める。三郎は逃亡のため琴乃を殺害しようとするが、天井から時景と克治が落ちてくる。銃口が時景に向き、琴乃は咄嗟に彼を庇い撃たれてしまう。死を悟った琴乃は時景に想いを告げ、意識を失う。


 病院に搬送された琴乃は一命を取り留めるが、医師からはそう長くはないと告げられる。見舞いに来た勇二郎は時景を「琴乃は必ず目覚めると信じている」と勇気づける。時景もその奇跡が起きることを信じるように。彼の祈りが通じたのか、琴乃はようやっと目を覚ます。

 無事退院し、皆に退院祝いをされて、英家に帰ってきた琴乃と時景。二人は互いに「どちらかが欠けては生きていけない」ことを確かめ合う。


 その後、二人は穏やかに睦まじく、末長く共に暮らし続けた、とさ。

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大正比翼ノ夫婦譚 〜記憶喪失のお嫁さんと無愛想作家の旦那様〜 indi子 @indigochan

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