大いなる力を持った生物が頂点に君臨する、人が自由に生きれない世界で
- ★★★ Excellent!!!
この話を映像で頭に思い浮かべた時青年と、魔狼と、少年なのですが。
魔狼の存在がとても効いています。
ラストシーンは青年と少年の別れで終わりますが、この二人だけの話だったら、このラストシーンに受ける印象が全く違ったと思います。
二人だけだったら、二人だけの閉ざされた話に感じたかも。
でも魔狼の存在が「三番目の存在感」を持つから、視覚的に広がりが出ています。
ラストも魔狼がいなかったら、傷を負った青年を見送るユールクの心はもっと心細くて不安だったのではないかと。でも「生きて欲しい」と願う青年の側に、もう一つ命が確かに寄り添っているから、ああいう気持ちで見送れたのかなと。
青年と魔狼の間にあるものも、緊張感のある契約ではありますが、それでも不自由な世界で共に行動してくれる者がいてくれる意味。私が一番いいなと思った部分はここでした。
物語はここで完結していますが、実際には彼らの人生は続いて行きます。
この先の彼らにどんな運命が待ち受けているのか。続き読みたいなあ。
全体を通してまるで曇り空のような雰囲気があるのですが、ラストシーンはユールクの絶望しない明るい魂と、「生きてください」という明るい言葉のおかげで初めて明るい情景が射し込むような印象になるのが良かったです。
暗い情景、暗い雰囲気に拘って書いてあるからこそ、ラストシーンで咲く花や射し込む光のような「色」がより明るく感じられるのかもしれません。