ダンジョンで死にまくっても、“かわいい”って言ってくれるなら、ボクは大丈夫♡

白名ぽっぽ

第1話#今日もボクと一緒に、ドキドキしよっか?


僕には、名前が二つある。

ひとつは「白木優希」。

制服の襟を正して、声の高さも、仕草も、少しだけ気をつけながら過ごす日々。

「男なのに可愛いって」なんて、笑われてしまいそうだから。

本当はスカートを穿いてみたい。リップも引いたり化粧もしてみたい。

でも、男子高校生の僕がそれをするのは――今は、まだ無理だとわかってる。


だから僕は、できるだけ「中性的」でいようとする。

人目を気にして、居場所を守るために。

その代わりに、自分の中の「好き」は、そっと胸の奥にしまってきた。



そして、もうひとつの名前――「黒夢リン」。


配信の準備をして、立ち絵を出して、声も仕草も本当の成りたい自分に戻す。

僕の中の「可愛くなりたい」が、一気に息を吹き返す。

“ボク”って呼んでも、“♡”をいっぱいつけても、誰にも責められない。

そこは、自由な世界。

むしろ「かわいいね」「惚れる」って、僕の夢に、みんなが愛をくれる場所。



――そして、今日も配信を始める。



「やっほ~♡ 今日もボクのこと見に来てくれてありがとっ♪ 

ネコライブ三期生の黒夢リンだよ~! 

今日はね~、待ちに待った『STA5』の配信っ! 一緒にドキドキしよっか?

コメントもどんどんしてねっ♡ ボク、ぜーんぶ見てるからね!」


【今日もかわいすぎる…語尾が尊い…】

【こんなん惚れるでしょ、罪深すぎるぞ黒夢リン】

【リンちゃんの声聞くだけで癒されるー!】

【ぜーんぶ見てるからねって言われたら…がんばってコメントしちゃうじゃん///】

【声だけで脳とろける…このあと仕事なのに…】

【男の娘なリンちゃん最高】


ふと、コメント欄に目をやる。

「かわいすぎる」「惚れそう」「罪深い」――あぁ、またみんなそんなこと言ってさぁ。

画面いっぱいに並ぶ言葉が、胸の奥でじんわりと熱を灯す。


……僕、本当にそんなふうに映ってるんだ。


配信だからちょっと大げさに笑ってみせるし、甘い言葉もたっぷり使うけど、

それでも、こうして誰かの心を動かせてるって思える瞬間は、なんだかくすぐったくて、でもすごく、嬉しいし楽しい。


性別とか、枠とか、そんなものを超えて、

「かわいい」って、「癒される」って、僕という存在をまるごと肯定してもらえてるのがたまらない。



『STA5』を起動して、いつもみたいに「さぁ、はじまるよ~♡」って言おうとした、その瞬間――


――頭の奥に、声が響いた。


ゲームの音でも、配信のトラブルでもない。

それは、僕だけじゃなかったみたい。

コメント欄も一斉にざわつき始めてて、みんな同じ声が聞こえてる。


『やぁVtuberオタクの神だよ。

――ついに来たね、「世界にダンジョンが現れる時が」ってやつ。これはもう確定事項。避けられない運命ってやつさ。


でね? 僕らVtuberオタクにとっては、まさに神企画が始まるんだよ。

何かって? それは――人気Vtuberたちを箱ごとに分けて、専用の島に配置。リアルなダンジョンを先行体験してもらうんだ。


もちろん、常時全世界に配信中。

あたりまえの話だけど、中の人の姿が見えたら、それはもう「Vtuber」じゃないんだよね。


だからこそ、このリアルダンジョン先行配信でも、配信に映るのはあくまでVtuberのアバターだけ。

スリルも涙も絶望も、全部が3Dモデルを通して届けられる。

3Dモデルがない人はサービスだよ。


ちなみに、ダンジョン内は――無制限リスポーン制!

何度死んでも、復活できる! ただし……「痛み」はリアル準拠。

骨が折れれば折れる痛み、斬られれば斬られる痛み、焼かれれば焼かれる痛み。

命は戻るけど、精神には確実にダメージが残る。

だけどそれでこそ、「推しの本気」が見えるでしょ?


この徹底ぶり、わかる? これぞ暇を持て余した神の配信設計。


でも安心して? 推しにもちゃんと人権というか、一日8時間分だけは配信を中断できる権利があるんだ。

お風呂、トイレ、睡眠、ちょっとしたメンタル回復タイムとか、見られたくないところは隠せるんだ。


だけどね、“目標クリア”しない限りは、その島から出られないし、配信も続く。

――そう、これは「Vtuber×ダンジョン×サバイバル配信」っていう、

もっと推しを深く知れて、深く応援できる最高のエンタメなんだよ。


さあ、キミはどの箱の誰の配信を選ぶ?

それとも、複数見る? ボクはもちろん、全部視聴するけどね』



気が付いたら僕は外にいた。

「……え、今の声って、これ、現実なの……?」

目の前に広がるのは、CGでもステージセットでもない、本物の森と川、石でできた遺跡。

目の前にはふわふわ浮かぶ画面があって、画面に映っているのは――白木優希じゃなくて、黒夢リン。

デビューして一か月、3Dモデルなんてまだ用意されてないはずなのに……。

映ってる「ボク」は、服や髪もふわって揺れて、表情まで完璧にリンクしてた。


しかも、いつもの衣装じゃなくて、ゲームの初期装備みたいな服。


「ボク……これから目標クリアまで、ここでずっと配信するの……?」


パソコンなんてどこにも見当たらない。

でも、目の前に浮かぶ画面のコメント欄はどんどん流れてて、ちょっと声を出せばみんなに届いてた。


心臓がトクン、と鳴る。

この配信が終わるまで、ずっとボクでいられる。

黒夢リンとして、可愛くて、自由なボクで。


そういえば、あの謎の声は――「リアルダンジョン」って言ってた。

ゴブリン、オーク、ドラゴン。ゲームの中でしか見たことない敵が、本当にいるかもしれない。

――つまり、死ぬ可能性だってあるってこと。


死んでも生き返ると言っていたけど、それでも痛みはあるまま。


怖い。

怖いけど。

黒夢リン(本当のボク)でいられるならボクはいいと思った。


「……みんな大丈夫だよ♡ よくわかってないけど強制箱企画『Vtuber×ダンジョン×サバイバル配信』はじめよっか♡ 今日もボクと一緒に、ドキドキしよっか?」


そういって画面の向こうにいる、みんなに向かって

ボクは、いつものように笑った。





□■□お願い■□■


読んで戴きありがとうございました。


もし黒夢リンみたいな小悪魔系男の娘いいね!


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ダンジョンで死にまくっても、“かわいい”って言ってくれるなら、ボクは大丈夫♡ 白名ぽっぽ @siranapo

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