第12話 ずっと、こうしていたい
夜の通話が終わる頃には、華乃の声も、いつもの優しい音に戻っていた。
「なんか今日、いっぱい泣いちゃった」
「たまには泣いていいよ。全部俺に見せて」
「うん……もうちょっと、わがまま言ってもいい?」
「もちろん」
少し間が空いて──
「ねぇ、今さ……ぎゅってして」
「……え?」
「画面越しでもいいから、“ぎゅー”って言って」
「……ぎゅー」
「……ふふっ。ちょっと恥ずかしかった?」
「正直、めっちゃ恥ずかしい」
「でも、うれしかった」
「なら良かった」
通話越しでも伝わる、彼女の微笑みの空気。
音がしないのに、ちゃんと温度がある。
「ねぇ、輝人」
「ん?」
「いつかさ、本当にぎゅーってしながら寝たいな」
「うん。絶対叶えよう」
「……うれしい」
「俺も、華乃がいてくれて、ほんとによかったって思ってる」
「……またずるいこと言う」
そう言いながら、華乃の声がまた、少しずつ小さくなる。
「ねぇ……寝るまで、つないでてくれる?」
「もちろん」
「ありがとう……だいすき……」
その言葉を最後に、スーッと寝息が通話に混ざる。
俺は静かにスマホを胸に当てて、目を閉じた。
何も特別じゃないけど、
こんな夜が、何よりも特別だと思った。
華乃の「好き」を、華乃の「不安」を、
全部受け止められる俺でありたいと、
そう心から思いながら──
明日もまた、君の“甘えた声”が聞けますように。
― 完 ―
好きって、言ってしまった夜 輝人 @nog1_love
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