第二話 ハジマルヴァンプ

…。

ここは…?確か私は…殺されて

薄っすらと目を開ける。

「…え…。いっ…イヤァァァァァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!」

「んだよ…どうした?そんな大声だして」

そう言うアンタレスは下半身がない。胴体から下が見当たらない。おかげで大きすぎる傷口からはダラダラと血が流れ、椅子が朱殷の一色へと染まる。

「だだだだって…あ…足…が…」

「…ん?嗚呼…銀の剣で斬られたからな…暫くは再生できないなぁ…」

再生できない!?

想夜は慌てて首元を押さえる。ナイフで刺されたハズの傷がないのだ。

「あ…れ…」

冷や汗が出てきた。だってあの時、確かに死を覚悟したんだ。首元を鏡で見て確認した。

やはり首元に違和感、髪をどかし手を当て、鏡を念入りに確認すると、二つの小さい穴。明らかにナイフの傷ではない。

「…」

「アンタレスさん…?私に何かしましたか?」


「…私が…貴方の…眷属に…?」

「そう、眷属だっぴ〜。やったね〜これで中々死なないし、ずーーっと若いままだしぃ〜?最高じゃ~ない?」

「ッ…本気で言ってます?」

「…んだよ…女子には嬉しい情報だろ?」

「ははっ…そんな…そんな事…ありえ…」

彼は人間じゃないと説明が付かないほどの偉業を成し遂げて…あり得ないなんてあり得ないでしょう?

「え…とぉ…い…イェーイ」

「…簡単には死ねない。他の人間は簡単に死んでいく。日元を迂闊にあるけない。命を狙われる

人間の血が欲しくなる」

「ッ…え?」

「俺だってさっき襲ってきた奴らの血を吸った。これが俺らぁヴァンパイアだ」

人の血を…吸っちゃうの?

「そんな吸血鬼に…なっちゃったの…?」

震えた様な声を聞き取り、アンタレスの顔が引きつる。

「…ッ…恨んでるか?それとも憎いか?俺の都合で…これからお前の未来は…」

「命の恩人に恨みを抱くことなんて無いです。ただ…なんで…私を…?眷属に」

アンタレスは大きく欠伸をした後、鏡を見て髪型を整えて、再びこちらを見つめた。

「カッコつけると…目の前で死なれても夢見悪くて寝覚めも悪そうだし〜、女の子を助けないと男としてどうよ?…マジで言うと…。ニテタンッスヨ…」

「え?」

「だからニテンッスヨ…」

最後の方が声が小さくなって中々聞き取れない…。アンタレスは顔を赤くして言った。

「似てたんだよ、お前…俺の妻に…」

照れてる…。

「似てた?私が?」

「ま、妻のほうがもうちょい美人だったけど…」

「おい、失礼だろう…」

「まぁ…似ては…居なかったかも…妻は想夜ちゃんみたいに小鳥ちゃんみたいな体型では無かったし…想夜ちゃんと比べていたけど…俺の中で美化していただけかもしれない…」

「そっちかい…自分から言うのもなんか違うけど…余計に私に失礼だよ」

「…想夜ちゃん。ってさっき読んだけど、想夜ちゃん呼びでオッケー?」

「うーん…なんか嫌だな…。じゃあさじゃあさ…アンタレスだっけ?名前長いから…アンってどう?」

「アン…」

「ほら、髪赤いし…」

「…赤毛のアンって言いたいのか?…まぁいいよ、アンね、アン。アンアン」

「連呼しないでよね」

「いやらしく聴こえるから?」

「うるさい!あっ!…私が折角買った服が…」

アンタレスの服はボロボロで買った時の見る影もない。

「…なんか…ごめん」

「いいよ…ってああっ!!私も汚れてる!!探偵っぽい服選んだのに…早くお風呂入り……」

「…?」

「ここ…何処?」

アンの下半身が生えてくる。

「わっ…キモ…あっ」

慌てて失言を口の中に戻す。

「戻しきれてないよね…吐いたよね」

この子…意外とお口が悪いわ。

「あはははっ…あの〜ここって結局…何処なんでしょうか?」

「ん?嗚呼…茨城の…」

立ち上がったアンと、私の視界に入ったのは…下半身が生え、男だからまぁ、生えてる…あれと…。

「イヤァァァァァァッ!!下!下!履いて!ズボン!」

「仕方ないだろ…再生で服は治んないんだから…フルチンじゃん…いやん、見ないでよ」

「見たくない!早く隠して!」

「隠すものがないんだって!!あ、そのコート貸してよ」

「いや!絶対にいや!下半身隠すために使う気でしょ!嫌よ!」

「…でも…これじゃあ安心してください、って言えないよ…履いてませんよ。だもん、ほら、ほら」


ー地下鉄道。

人混みを歩き、切符を改札に通す。

「うう…私のお気にだったのに…」

「…飛んで行こうとしたけど、昼まで曇ってたのにまた晴れやがったからな。戦ってた時までは、曇ってた」

電車に乗り、席につく。まさか茨城まで下半身の無いアンに、運んで貰っていたなんて…なんてお礼をしたらいいのか…。

家に帰って、体勢を整えたら再び。アンの奥さんを探さなきゃ…。

でも良かった。アンが茨城のように下半身を取り戻すとか言わなくて…吸血鬼も鬼だし。あ、茨木だ。

「…ねぇ…アン。ヴァンパイアハンターって何者?私…これからそいつらに命を狙われるんだよね?それに…奥さんを隠されたって…」

「…ヴァンパイアハンター。なんと言うべきか…一種の宗教というか…一種の仕事というか…奴らは別に…ヴァンパイアを標的としてはいないんだ。奴らの討伐対象にヴァンパイアが含まれている」

「えへぇ…私そんなのに狙われるの?」

「さっき会った奴らはヴァンパイアハンター達の中でも研修生とその先生ってところかな。日本はヴァンパイアハンターが、かなりいるし…」

日本に…?ヴァンパイアハンター…?

「日本では霊媒師…や祓い屋…っと言ったところかな、ほら、言っただろ。ヴァンパイアハンターの殆どは別にヴァンパイアを目の敵にしてないんだ。奴らは邪悪な魔の存在の一人として俺らぁ狙ってるんだよ」

「悪魔的な…?だとしても…あれは…」

「少し派手にやり過ぎたね。反省してまーす。まあまあ…俺も必死だったし?」

「そう言えば何で、私の事務所に?」

「そうそう!今さ今さ!かなりやべーハンターが日本に一人いてさ!そいつに会いに行ったら!!メッチャクチャボコボコにされたから逃げてたのよ」

「いや会いに行くんかい!会いに行ったらそりゃあやられちゃいますよ!!」

「さっき言ったろ?妻が人質…俺を呼び寄せる為に利用されてんだ」

「そうでした…奥さんを探す旅路になるんですよね」

「…妻は、数十年前に死んでる。死因は知らん」

!?

「ただただ綺麗な死体でさ…多分俺がこれから数千年生きても見られない程の美しい死体だった。血を吸いたくなる欲を抑えて…ひたすら妻の遺体を眺めた。不思議だよね、妻の死体何年も腐らなかったんだ」

「それって…」

「なんか不思議な事の立て続けで俺もどうしたらいいのか分かんなくて、美しい死体を見つめては生前の思い出や死因を考えるうちに疲れて…寝てしまったんだ」

「そしたら…消えてた。いつの間にか。人類史上最も美しく、人類史上最も儚いであろう死体が消えた。パニックになったよ」

焦ったよ。色んな思考が巡った。

妻が生き返って、歩き回って、自分の好きな…パイを焼いてくれてたり…そんな期待に胸を膨らませたり。

「でもそんな希望は、奴らによって打ち砕かれた。彼奴等だったんだよ、妻が、消えた原因」

…。

「アン…貴方って…いつから人間じゃないの?」

「…?生まれてからずっとだよ」

電車がガタンゴトンと揺れながらトンネルへと入った。トンネル内は暗く、定期的に光がチカチカしては車窓から暗くなった車内を照らす。

「…どうしたの?想夜ちゃん」

「奥さん…って…死んでたの?」

「そうだよ、死んでたの。死体泥棒とは日本人が聞いて呆れる、いただけないぜ。…俺の妻の死体はバラバラにされ、世界に散らばっている。日本にもそのうちの一つがある。だから日本にいる」

「…つまり…依頼内容は死体集めってこと?」

「そうだな、見習い探偵想夜ちゃんの初依頼はバラバラにされた死体探し!良いだろう?」

「奥さんを…死体って」

「………人間、死んだらおしまいでしょう。それが良いところ」

「…やっぱり、アンは吸血鬼…なんだね」

「なんだよ、急に…」

「いや、なんか見た目が人間だから不思議だなぁって…」

「お前も人間じゃないじゃん」

「・・・あっ」

まもなく〜止まります。お立ちの方は手すりにつかまりください。

列車は勢いを落とし、ドアを開く。

ようやく帰ってきたのだ。東京に、1日でここまで疲れたのは何時ぶりだろうか?

「で…ここからあの、空の見晴らしのいい事務所行くのか?」

「お前が天井壊したんだけどな私のマンション近いからそこ行く」

「ねぇねぇ…想夜ちゃんってたまに口悪いよね…」

嗚、昔からの癖です。

街を歩き、マンションへ着く。大した情報じゃないが、このマンションは、私とおじいちゃんが一緒に見つけた格安マンションだ。家賃が安く、駅からも近い…。ただし、幽霊がでたり…コンロが無かったり…。しかし、東京都内でここまで素晴らしい物件もないだろう。幽霊出るけど。

「へぇ〜ここが想夜ちゃんの家…か…」

「…」

「…」

「…」

「…なんか言えよ」

「なんか言うか…ボロっちいね」

確かに…階段は錆びてて所々手すりが壊れている。お世辞にも良い見た目ではない。

「ほ…ほら果物でも大事なの中身だから…」

ガチャっと下の階の住民が扉を開く。

中から、ひげが生えた中年男性が出てきて一言。

「ガキがいちゃついてんじゃね〜ぞカーーーッッペッ!!」

絡まったタンを地面に吐き、明日のゴミ袋をゴミ捨て場に投げ捨て、再びこちらを向いたかと思ったら

「カーーーッッペッ!!」

タンを吐き、勢いよく扉を閉めた。

「……大事なのは…中身…」

「いや…十分腐ってて食べれないよね…外も中も」

「…うん」

今にも崩れそうな階段を登り、マンションの鍵を開け、部屋に入る。

「おー…意外と内装は良いな」

「でしょ!でしょ!これで奥の部屋とか畳9畳分だから良い物件じゃない?」

ガラッと扉を、開けると、お札がびっしりと部屋の隅へ貼っている。

「……おっ…」

「…」

「まぁ、うん。いい物件だな」

「あ…はい」

テレビを付けた後、何やら色々とタンスを漁っている。

「はい!これ!ハーフパンツ。いつまで下半身裸で私の大切なコートを着るつもりなの」

「あ…ありがとう。…なんか…服の貸し借りだったり…部屋に上げてもらったり…俺等、カップルみたいだね」

すると想夜の顔はみるみる赤くなる。

「貴方には奥さんが居るから分かんないでしょうけど!!こんな大胆な女性、中々居ませんからね!!」

「何の忠告だよ」

想夜は頬を膨らませ、プンプンと怒ったままお風呂へと向かう。

暫くしてシャワーの音が、聞こえてくる。

「…暇だな、覗きに行こうか…やめとくか………やることね〜な」

アンがグダグタと横たわっていると、不意に一本の電話がかかる。

今時にはありえない…黒電話だ。

人のお家で勝手に取るのはマナー違反だがこのタイプは言葉を残せもしない。あらかじめ要件を聞いて、再度かけ直しを願うのが吉だ。

「はいはい〜い」

静かだ…。黙ってるのか?

電話相手は暫く沈黙している。

「貴方…誰?」

…誰とは…、電話をかけてきたくせに失礼なやつだ。

「俺の名前は、アンタレス・ララネアグラ・ツェペ…」

プープーっと電話が切れた申し訳程度の電子音が耳元で木霊する。

「…」

プルルっとまた電話が鳴り、やれやれと思いつつもアンは、電話を取った。

「はい、どなたでしょうか」 

「…」

ぷつんと電話が切られてしまい、イライラしながら受話器を本体に戻す。 

するとまた短いスパンで

チャリリリリッ!チャリリリリッ!

「…はい、どなたでしょう」

「さっきから貴方!誰なの!!」

「・・・さっきからおめぇは!!なんなんだよ!しつけーな!間違い電話なら1回で終わらせろ!」

「私はただ女の子の家に電話かけているだけなのに、知らない男の声で何回も取るから…」

「…察してくださいー!!彼女ももう大学生なんですよ!!男の2人や3人、部屋に上げてますぅ!!」

お風呂場から声が響いてくる。

「上げてません!!」

どうやら想夜にも聞こえているらしい。

「まぁ…!!もう!想夜てば!やるじゃない……ってことは…貴方は…」

「…想夜の彼氏です。今度ご挨拶に行きます」

「んな理由わけあるかぁぁぁぁぁ!!」

想夜はタオルターバンを揺らし、バスタオルを1枚羽織りながら慌てて出てきて電話を奪い取り、代わる。

「はい!もしもし!」

「その声は…想夜?想夜ね!貴方やるじゃなーいのもう~」

「おばあちゃん!!そんな訳無いから!!大学の…サークルの友達だから!うん!気にしないで!」

「あら、そうなの?でも想夜ちゃん、そんなに遊び盛りだといつか危険な目に遭うから関わる相手は慎重にね」

・・・。

もう、手遅れです。とも言えるわけもなく、軽い苦笑いで誤魔化す。

「嗚呼…うん、とりあえず、彼氏は居ないから、うん、ちゃんと食べてるよ、うん、彼氏居ない、うん、それじゃあ、うん、彼氏居ない」

「…」

「…うん、じゃあね」

受話器をゆっくりと電話機に下ろし、目を瞑る。すると、カッ!と見開いて

「いやしつけぇぇぇ!!」

「今のは…?おばあちゃん?年頃の娘をよく見るいいおばあさんだな」

「本当に…?そう思ってる?」

「いや、別に」

「……ハッ!イヤァァァァ!!見ないでっ!!」

バスタオルで肌を隠しながらそそくさと風呂場へ戻っていく。

「…騒がしいな」

暫くし、服を着替えて部屋に戻るとアンの姿が、見当たらない。

「…あれ?アン?」

部屋を見渡すと…目立つ赤毛で…小柄な男の姿が見当たらない…。

ふと、顔をあげ、前を向くと…。

「……」

ベランダには夜の暗い暗い色合いに負けないほどの…深く濃い…美しい髪を靡かせた…

「……んっ?嗚呼…風呂上がった?想夜ちゃん」

「……はっ…嗚呼…!うん!終わった終わった!…どうしたの?その髪の毛」

アンの髪はいつもの3倍ほど伸びていて、一本一本が綺麗で、まるで小さい頃に見たラプンツェルのようだ…。

「…綺麗っしょ?」

「うん…すごく…どうなってるの!?その髪」

「髪の毛一本一本をセンサーみたいに、飛ばしてる索敵だ」

「わ!髪の毛が抜けてきてる!!」

アンの美しい髪の毛は、次々と抜けていって、夜風に流され飛んでいく。

「え!?ハゲるの!?」

「なわけあるか!?この髪の毛は、索敵のために生やしたからすぐ抜けるんだよ」

「えぇ…抜けちゃうのー??」

「…索敵な索敵。想夜ちゃんは危機感ないなー本当に…。想夜ちゃんだってできるんだぜ?これ」アンの髪の毛がゆっくりと元の毛量へ戻っていく。

「え!?できるの!?私も!!?」

「よーーしお前、1回鏡見てこい、そしてまた1から説明してやる。………お前はもう人間じゃないのよ」

「…でも…急に貴方はもう人を辞めました…なんて言われて信じろって言われて…そう納得するしか無いから認めているだけで…心がまだ追いつかないよ…」

そうか…俺は生まれつきダンピールで…妻のおかげで人間をわかった気になってた…。でも想夜は、生まれてからずっと人間で、途中からそのレールから脱輪したんだ。妻はただただ…俺に優しかったんだな。

「それもそうだよね…想夜ちゃん…全てがいきなりで…」

「でも…心の何処かで期待しちゃってたかも…こういう非現実」

七五三掛想夜は、そういう女の子でした。小さい頃に何も習い事せず…親も居ない子でした。高校に上がれば、毎日の様にバイトをして、おじいちゃんやおじいちゃんにプレゼントを渡していました。

いつしかおじいちゃんもおばあちゃんも私を置いていくのではないかと…。

不確で不安で怖くなっちゃうような女の子。

大学生に上がってからというもの、いつもの日常に退屈し、大学生中退も考えた。

こんな日常は嫌だ。このまま普通の女の子のまま終わっていたくない。私は…私は…。

そう…いつまでもいついつまでも考え続け、等々巡り巡ってきたのだ。探偵になる可能性が。

無計画。探偵という二つ名に憧れただけなんだ。

…実は事務所に退学届を置いていたのだ。

私は非日常へ羽ばたく、そう決めたのだ。

そして…まさか…まさかまさかの…。

「非現実ね…俺にとったぁ…ただの日常だが」

「…そう言えば…布団1枚しか無いんだよね…」

「……ふん!」

アンは真っ先に布団へ転がり毛布をかぶる。

「あ!ちょっ!!そこ私の!!」

毛布を引っ張るも向こうも、対向して力が入る。

「ぐぬぬ!じゃあ俺のは何処だ!!」

アンは想夜から力任せに思いっきり奪い取るが、想夜はバランスを崩して、寝ているアンに、倒れかかる。

「…アっ…いやその!!///」 

アンの体は小柄ながらも筋肉質でガッチリしている…これが…ヴァンパイアなの?

気がつくとかなりの時間彼に乗っかっていることに気づき慌てて立ち上がり顔を隠す。

「…」アンは無言でこちらを見つめてくる…。正直やめてほしかった…恥ずか死ぬ。

「あ…あはははっ」

「…想夜ちゃん…どうだった?俺の体は」

・・・ ?

うん?

「あ…いや…意外とガッチリしているなぁって」

何故急に体のことを…?

「女の子から見て…この体型…どう?」

「えっとー…いいんじゃない…?細マッチョ的な感じでさ」

「…」

アンはそのまま静かに目を閉じて瞼を開けなかった…。

「…いやどけぇ!!」


翌日…。午後18時半ほどである。


私は時計を確認し外へ出る…アンはまだ眠っている…。もしかしてヴァンパイアに

とっての午後18時って人間にとっての午前6時の感覚なのかしら…私もこの場に及んで眠たい…。

今思うと少し出る時間を間違えた。

今から電車に乗って大学に行くが帰宅ラッシュと被ってしまった。

まぁ、席に座れるはずもなく…つり革につかまりながらもなんとか大学へ到着した。

目的地についたのは19時後半少し走りながらも約束の時間にこれた。

「…愛遅いな…」

その後20分経った頃だろうか。

「…」

コツコツとピンヒールを履いたショートヘアで、身なりやそのルックスから初対面の人が思うことは…(カッコイイ、イケメンが変なファッション着てる!!)

「お股〜…待った?」

ピンヒールにダボダボの黒い長ズボン。耳元はジャラジャラと沢山のピアスをつけ、tシャツは白で真ん中に黒い文字でにはDEATHっと書かれた中学生も付けなさそうなほどの服を着ている。

「も〜遅刻癖どうにかしてよ!!」

「いや!帰宅ラッシュに引っかかっちまったの!!許してちょっ!」

投げキッスをされ、少し顔が引きつる。

「てかバイト終わりの服だからちょっと臭いかも…スンスン…」

腕を上げ、脇の臭いを嗅いでいる…。

イケメンボーイッシュにはとってほしくない言動が度々見られる。

この子が…私の高校時代からの親友、哀川愛だ。

「そういや…今日は別に授業入れてるわけでもないんでしょ?私も入れてないんだけど…。てか想夜ちゃんもこの日入れてたっけ?」

「嗚呼…今日はちょっと相談があって…」

「ほほう…男についてかな…?」

愛の目が光る、愛は恋バナが大好きだからなぁ。

「うん…」

「なーんてね…・・・え?は?」

愛は顔を赤くし、少し興奮気味に聞いてくる。

「え?誰?誰?前イケメンって言ってた前田先輩?それとも前ハンカチ拾ってもらった、後藤さん!?」

止まらない愛の機関銃恋バナマシンガン…。

「…てか相談だったらハチ公前でよくない?わざわざ大学まで来たけど…」

「あっ……確かに…あっ、でも下北広いし…ね…愛、あなた方向音痴でしょう?」

「…だからハチ公前の方がいいんだろ?」

「…うん」

「ま、乗ってやんよ!その相談、クロイノってカフェが近くにあるからそこでおしゃべりしましょ」


クロイノカフェ…。静かな店内に赤と黒を中心とした落ち着いたお店。

「私アイスティー!ストレートで、シロップも付けて。あっ…この…メンチカツサンドってのもお願い」

「えっと…じゃあ私カフェラテで…」

店員が注文を受け、カウンターへと戻る。

「それで…それで…彼氏さんはどんな人?」

「いや!彼氏じゃねぇ!」

「お…おっけい…」

「男って…いうか…別に恋愛とかの話じゃないのよ!全然タイプじゃないし…」

「どんな?」

「えっと…身長が…そこまで高くなくて…愛より小さいし…あ!意外と喧嘩が強い…後スケベ…」

「・・・赤髪で…肌が白くて…」

「そうそう!……なんで知ってるの?」


第二話 ハジマルヴァンプ







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七五三掛想夜の人望論〜プライベートヴァンプ〜 TATAさんだっよ @tata3dayo

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